グループ首位争い、日本VSヨルダン
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「タツさんの彼女美人さんっスね!?」
「ミスなんとか辺り取ってそうだなぁ」
「ま、出たら取るだろうなとは思うよ俺も」
ヨルダン戦を前日に控えた午後の自由時間。宿泊部屋で集まる中、メンバー初招集の冬夜と影山は辰羅川から彼女と共に写る、スマホの待ち受け画面を見せられていた。
ツーショットの2人。辰羅川の横にいる清楚なお嬢様育ちの印象ある、黒髪ロングヘアーの女性が噂の彼女だ。
「この人とUー20終わった後にゴールインの予定なんて、ドラマ1本書けそうじゃないスか?良いなー」
まだ彼女がおらず、独り身な冬夜にとっては心底羨ましい話である。
「なんだ、2人まだ良い相手に巡り会えてないのか?モテそうなのに。早い方が良いぞ、弥一の奴も何時の間にか付き合っているからな」
「え、あいつ彼女いるんですか!?」
「うん、いるね」
弥一に彼女が居る事は初耳な冬夜。同じ立見で、輝咲と付き合っている事を知っている影山は教えておく。
影山だけでなく、代表に選ばれている他の立見メンバーも既に存じている事だ。
「見かけによらず手が早いんだなぁ……あ、まさか優也の奴も彼女作ってます!?」
「え?さあ……それは聞いたこと無いけど、幼馴染の君になら報告とかするんじゃないかな?出来たら」
「いえ、何も聞いてないっス!あいつひょっとして隠れて付き合ってるとか!?」
もしかしたら自分より先に付き合っているかもしれない。そう思うと冬夜は優也に追求したくなる気持ちが、どんどんと湧き上がって来る。
「騒がしい奴だなぁ、っと」
スマホに彼女からのメッセージが届けば、辰羅川はすぐに返信。影山から見ればその姿は幸せそうに映っていた。
「ヨルダン戦見てるから頑張ってねってさ、スタメン選ばれるかどうか分かんないけどなぁ」
「そこは選ばれるように頑張ってこうよ。彼女さんに格好良い姿見せないと」
「へへ、だよな」
選ばれるつもりで辰羅川は影山と笑い合った後、彼女へと返信メッセージを送る。
「以上がヨルダン戦のスタメンとなります」
練習フィールドでマッテオから告げられた3戦目のメンバー。
GK藤堂
DF神明寺 仙道(佐) 青山
MF三津谷 広西 辰羅川 仙道(政) 影山
FW照皇 室
「(っし、呼ばれた!)」
辰羅川はスタメン。競争が激しいサイドのポジションで出場するのは中々難しい。
彼女が見ている時に選ばれたのは、何時ものスタメン入りよりも嬉しく思えた。
「勝つ為にヨルダンは荒々しく来る事が予想されます。そこは皆充分に気をつけてください」
大事な決勝トーナメントの進出が関わる大一番。2位の位置に居るヨルダンは何が何でも首位を取りに来るだろうと、マッテオは代表メンバーへと語る。
此処までマレーシア、ベトナムといった国はいずれも荒々しいプレーを仕掛けて来なかった。此処からがアジアを戦う中で難しくなってくる事だろう。
試合当日を迎え、カタールのスタジアムは組の首位を争う重要な試合となるせいか、2戦の時よりも多くの観客で埋まっている。
開始前のアップで日本とヨルダンは互いに顔を合わせた。
「……」
弥一が見つめる先にはヨルダンの面々。それぞれが日本の選手達の方を見つつ、アップをしている姿。
「室、照さん」
「どうした?」
弥一は今日出る2トップの2人へと駆け寄って話しかける。
「今日のヨルダン戦、本当に気をつけた方が良いと思うよ」
「分かってるって、監督も言っていたしな。ラフプレーとか来るなら弾き返すさ」
気をつけるよう弥一から言われると室は監督からの言葉を思い出し、ラフプレーに警戒する。
「相手がどう来ようが自分達のサッカー、それを冷静に何時も通り行えば必ず勝てる。向こうのプレーに心惑わされるなよ」
「はい」
どんなサッカーで来ても堂々と自分達のプレーをして勝つ。照皇は正攻法で挑むつもりのようで、彼の言葉に室も頷く。
「大丈夫?舐められたりとかしないでよー」
「余計な心配するな、お前はまず守備に専念してくれ。ハサとカッシム達の攻撃陣もそれを仕掛けて来る可能性がある」
念を押すように言う弥一。その彼に照皇はそっちもラフプレー気をつけろと言って、室と共にアップへと戻る。
「(分かって無さそうだなぁ……相手が殺しに来ているって事を)」
ヨルダンの選手達の心、それを覗いていた弥一。日本を潰してやろうという心が強く感じられていた。
照皇は相手がどう来ても、冷静に自分達のサッカーをすると言っていたが、弥一はこの連中に対して、それは正解ではないと思っている。
むしろつけ込んで来て逆効果、そんな可能性があるからだ。
様々な思惑が渦巻く中、試合開始の時は迎えられる。
『Uー20アジアカップ、グループリーグ最終戦!勝ち点6で並び得失点差により首位に立つ日本。引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる有利な状況で迎える相手は日本と同じ勝ち点6で並ぶ2位のヨルダン!最終戦で直接対決となります!』
『ヨルダンが確実に決勝トーナメントを勝ち上がるには勝利が絶対条件ですからね。ガンガン攻めてくると思いますよ』
フィールドへと姿を見せた両チームに大歓声が迎え、互いの国歌斉唱を終えた後に両者のキャプテンが審判団へと進み出る。
日本からは藤堂、ヨルダンからはハサ。コイントスの結果は日本ボールからのスタート。
「相手のラフプレーにビビるなよ、強気で行くぞ強気で!」
「あまりにムカついたらこっそりやり返していいからねー」
「神明寺、こんな時に冗談を入れてくるな。報復行為が見つかれば一発レッドで退場だぞ」
藤堂の言葉に弥一が反応してくると、その言葉に照皇は注意する。
相手のラフプレーにやり返しなどもってのほかだと。
「(冗談じゃないんだけどなぁ……)」
それを言う事もなく弥一はポジションにつき、前線の照皇と離れていく。
「(何か、今日は色々荒れそうだな)」
ベンチスタートの光明。フィールド全体を見ていて、今日は荒れ模様の試合になるかもしれない。
なんとなく予感がしていた。
ピィーーー
『日本対ヨルダンの試合、今キックオフ!どちらが首位に立って決勝トーナメントを確実に進めるのか!?日本は何時も通り立ち上がり、パスを回していきます』
中盤でパスを回してまずは試合やボールに馴染んでいく日本。それに対してヨルダンは引き気味で守っている。
「(最初は守備重視か)こっちに!』
照皇がボールを持つ冬夜へと手を上げ、パスを要求する。
その瞬間に背後のヨルダンDFの目が鋭さを増していた。
「!?」
来たパスに対してトラップに行く照皇。その瞬間に構わず、後ろから滑り込んで来るヨルダンDF。
これに照皇は倒され、転倒してしまう。
すぐに審判はファールで笛を吹きヨルダンDFへと注意する。
「照皇さん!なんだよ、今のカードじゃないのか!?」
「落ち着け!俺は平気だ!」
今のは最低でもイエローだろうと室は文句を言おうとしたが、倒れていた照皇が立ち上がり止める。
「(挨拶代わりだ、サムライボーイ)」
これを見ていたハサ、カッシムの兄弟2人はニヤリと笑う。
立ち上がり、いきなり中東の洗礼が照皇へと襲いかかっていた。
優也「何か知らないが……冬夜の奴、俺に彼女いるんだろ!?とやたらしつこく聞かれた」
大門「そ、そうなんだ?大変だったね」
優也「いないというのに、あいつはまったく」
大門「それよりフィールドの方は大変だ……大丈夫か皆」
宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。
サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。