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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
第15章 2度目の選手権

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来年に向けての野望

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「高校サッカー選手権は2回戦へ突入。前回王者の東京A代表、立見高校が登場した今日は神奈川の東豪大学附属高校と試合が行われました」



「前半は固さもあったのか、東豪の守備が光り健闘した所が目立ちましたね。ただその流れを変えたのが1つのセットプレーでしたよ」



 夕方のニュース内で流れるスポーツコーナー。そこで高校サッカー選手権の特集が組まれていた。


 今回はUー19の国際大会で初優勝もあったせいか、専門家も招き解説と結構本格的になってきている。



「何でもないように神明寺君が右コーナーから送って緑山君が合わせていますが、このパスはかなりスピードが出ていて難しいボールなんです。相手にはカットするのが困難ですが味方も本来は合わせにくい」



「それをトラップせず合わせてるんですよ。、Jリーグの試合でもたまにしか見かけないくらいレアでしょうか」



「国内どころか海外の高レベルなプレーだと思います。このスピードボールをダイレクトで合わせてのゴールは」



 アナウンサーや専門家が立見の1点目、弥一から明へと合わせたCKからの得点を絶賛。



 その中で騙し合いやら心理戦といった背景があったのだが、外から見た者ではそれに気付く訳が無かった。



「緑山明君は元女子日本代表、緑山薫さんの弟で自身もドイツ留学を経験しているんですよね。神明寺君はイタリア留学していましたから、これはある意味イタリアとドイツの共演といった所でしょうか?」



「はは、まあそうなりますかね。そこへ氷神兄弟や石田君といった中学最強を争った彼らも加わりますから、今年の立見は守備だけでなく攻撃も相当厚みがありますよ」



 弥一、明に続き画面に映し出される氷神兄弟や半蔵の姿。



 予選で派手な活躍を見せて、今回も勝利に貢献した彼らについても語られていく。



「192cmの長身ストライカーが中央に居て、両サイドにスピードとテクニックを兼ね備えたハーフ。そこにスーパーサブの歳児君も控えていますからね」



「強力な攻撃陣、そして無失点。チームの総合力は今大会随一ですよね」



 そこに女子アナウンサーへと画面は切り替わり、立見以外の試合について伝えていた。



「立見と同じく2回戦から登場の静岡代表、八重葉学園はエースの照皇君が活躍。2得点を決めて怪我の不安を感じさせないプレーを見せました」



 画面では照皇が相手DFと並走している所を、サイドから出されたスルーパスに反応し走り出して相手を引き離し、受けたパスから強烈な右足のシュートを決めているシーンが映し出される。



 この試合は4ー0で八重葉の完勝。立見と同じく3回戦進出を決めた。



「最神第一は三津谷君が躍動、この試合3アシストを決めてこちらも全国初制覇に向けて好発進しています」



 最神は光輝が3点の全てに絡みチームを勝利に導いている。


 守備でも想真を中心としたDF陣が相手の攻撃をシャットアウト。3ー0と相手に付け入る隙を与えなかった。




「その他の結果です。開幕戦で琴峯を大差で下し勢いに乗る牙裏学園が2回戦も6ー0と大勝、エースの酒井君が2得点と得点ランキング首位に立っています。また……」






「あんだよー。多く得点取ってんのに2回戦注目のシード校についてばっかで、うちの方へは全然スポットライト当たらないでやんの!」



 宿泊する東京ホテルのロビーにて、テレビで流れるスポーツニュースを、座り心地の良い椅子で見ていた正二は不満そうな顔だ。



「うーん、向こうが取り上げたいチームまだまだ数多く居るからそっち優先したとか……かな?」



「そこは派手な勝ち優先とかじゃないのかよー、俺今日初ゴール決めたってのにさぁ」



 牙裏の2回戦。正二と共に居る五郎はスタメンGKで守り、正二は後半途中からの出場。



 狼騎が2点と佐竹が2点。高柳も1点を決めた後に正二が最後にダメ押しとなるゴールを左足で決め、大会初ゴールが出来て浮かれていたが、そこまで注目はされなかった。



 目立って注目されたい正二としてはガッカリである。




「まーまー、まだまだ先は長いんだから拗ねるなよ青少年」



「あ……天宮先輩お疲れっす!」



「お疲れ様です!」



 先輩である春樹が正二が座る椅子の後ろに立っていて、それに気付いた正二と五郎は揃って立ち上がり頭を下げていた。



「んな固くならんでいいって、軍隊じゃあるまいし。そんなんじゃ体休まらないぞ君達ー」



 後輩2人へと気さくに話す春樹。彼は後輩に対して高圧的というタイプではない。



 春樹の言葉に甘えて、五郎と正二の2人は改めて椅子へと座る。



「このまま勝ち続ければ嫌でも注目する、その為には君ら1年の力も滅茶苦茶大事になってくるんだ。しっかり休まずヘロヘロのまま決戦を迎える方がよっぽど迷惑だからな」



 2人には出来る限り、万全に近いコンディションでいてもらいたい。その事を春樹はしっかりと伝えた。



「っと、説教みたいな感じになったか。ま、それだけ1年にも期待してるって事だからさ」



「う、うっす!次の試合も活躍して勝利に貢献します!」



「 僕も同じく!」



「あまり声大きくするなー、他のお客さんに迷惑だから」



「「あ」」



 期待してると春樹の言葉を嬉しく感じ、五郎と正二の1年2人は揃って次に向けて意気込んだ。


 それについ声が大きくなり、やんわりと注意を揃って受ける。



「今年は家でコタツじゃなく選手権に備えてホテルで年越し、何時もと違う正月にはなるだろうけどしっかり調整して次に備えるんだぞー。これ先輩との約束な」



 ははは、と陽気に笑って春樹はその場から立ち去って行った。




「俺らと同じ選手権初挑戦なのに、何か伸び伸びしてんなぁー」



「うん……やっぱ全国大会とかそういうの場慣れしてるのかな?」



「そうじゃね?だって小中に加えて違うジャンルでも全国だぜ?そりゃ慣れるわ」







「(戦力として君達も使えないと困るんだよ、立見を……弥一を粉々に叩き潰す為にはね……)」



 一人となった春樹は二人の前で被っていた気さくな先輩の仮面を剥ぎ取り、怪しげに笑っていた。



 五郎や正二は今や牙裏の立派な戦力。その彼らには、この先も存分に働いてもらう必要がある。



 全ては立見と弥一を倒す為、その為なら出来る手は全て打つ。


 自らの抱く野望の為ならどうという事は無い。




 大晦日の夜は静かに更けていった。

弥一「とりあえず僕らは年越し蕎麦ー♪あ、去年みたいに年越しラーメンを飛翔龍で食べるのでもー……」


大門「今年はちょっと……じいちゃんぎっくり腰やっちゃったんだ」


弥一「えー!?重三さん大丈夫ー?」


優也「それは安静にした方が良い」


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