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強過ぎる現王者

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 対峙した相手は一見して普通の少年達。だが彼らはすぐに思い知らされる事になる。




 勝てないと。




「(何で……何でこんな……!)」



 相手が強い事は分かっていた。1点や2点を取られる事は試合前から覚悟していたはずだ。



 しかし実際はその程度では済まされない。



 両サイドを男性アイドルのような容姿を思わせる双子の兄弟が支配。



 体格ではこちらが上回るのに対して、彼らはすばしっこさや小回りで翻弄し、こちらを混乱へと陥れていく。



 右へ左へと揺さぶられ、DFラインが乱れた所にゴール前へ高いクロスが上がると、190cmを超える長身ストライカーのヘディングが炸裂。DFとの空中戦を制し、ゴールに向かって放たれたボールは勢いよく地面をバウンドさせて、GKの手を掻い潜りゴールネットに吸い込まれた。



 前半だけで6失点。それに対して攻撃の方はまだ1本のシュートも撃てていない、許してもらえない。



「そこ、取り囲んじゃってー!」



 後ろで声がすると共にあっという間に複数の選手が包囲し、ボールを奪われるとすぐに相手の速攻が始まる。



 背番号10を背負う少年がドリブルでボールを運び、奪い返そうと迫るが瞬きする一瞬の間に抜き去られ、奪う事が出来ない。



 左足のスルーパスが右へと目掛け放り込まれると、桃色のポニーテールを風で揺らしながら、DFラインの裏へと抜け出してきた双子の片割れ。



 ゴール前へと一気に詰め寄り右足のシュートが放たれる。ゴール左下隅へ飛んだ取りづらいコースに、GKはこれに触れることが出来ず今日7度目のゴールが決まった。





 ようやく此処で前半が終われば、大差でのビハインドを背負ったチームは絶望的に重苦しい雰囲気。



「一体どうした!1回戦を突破したあの勢いを何処へ置いてきたんだ!?」



 1回戦を4ー0で勝ち上がった山俵(やまたわら)高校。大差で初戦を突破して士気が上がった状態でこの大一番に臨んでいた。



 蓋を開けてみれば相手にそれ以上の勢いで飲まれ、思うようなサッカーが出来ていない事に監督は選手達へと檄を飛ばしている。



「いえ、あの……何か……こっちのやる事が全部読まれてる気がして……」



「全部読まれてる?そんな見透かせるような反則的な読みが出来る訳ないだろう。大量リードで弱気になっているだけだ!」



 全部読まれてるなどあり得ない。監督からそう言われたが、実際フィールドに立つ選手達はそう感じてしまっていた。



「まずは1点だ1点!相手は結構前へと出て来てる。隙を突いてサイドからカウンターで狙え!」



 監督からの言葉に山俵の選手達は返事し、後半戦のフィールドへと歩き出すが、そこに逆転の希望が見えないまま向かわされる。



 7ー0と既に勝敗が決まっていてもおかしくない点差。此処から8点を取り返そうにも、前半シュート1本すら無かった自分達にそれが出来るのだろうか。




「どうしろってんだよ……」



 思わず1人がそう呟いていた。



 まずは1点と言われて送り出されるが、このチーム相手にその1点が果てしなく遠かった。



 相手はギネス記録級の無失点記録を誇る高校サッカー界の現王者。立見高校なのだから。





「三笠ー!もっと右行け!」



 チームの闘将である間宮の大きな声が響き渡り、大量リードを奪っても守備で手抜きはしない。山俵の攻撃陣を止め続け、反撃の隙を与えなかった。




「相手さんもうバテてるよー、左空いてるー!」



 後から弥一のコーチングによる声が飛ぶと共に、左サイドの玲音が動き出せば先程右サイドから詩音が切り崩した時を再現するような形で、明から送られた左へのスルーパスに抜けた玲音がしっかりとそのボールを足元へと収め、そのままドリブルで突き進む。



 また中央へのクロスが来ると見て、ゴール前の半蔵へとマークが集中するが玲音はそのままエリア内に切れ込んで侵入。



 止めに来た相手の股下を左スパイクの爪先でちょん、と軽くボールを蹴ってトンネルのように通れば、自らも相手を抜き去り球へと追い付く。



 飛び出して来たGKの動きを冷静に見て躱し、右足で軽く流し込みゴールを決めてみせた。




「やったー、ハットトリックじゃーん♪」



「詩音だけに良い格好させないもんねー!」



 この試合既に前半で3点を決めている詩音。それに続き玲音もこのゴールによってハットトリックを達成。



 双子揃っての達成となって詩音と玲音が共に喜び合う側で、山俵の守備陣はもうボールをセンターサークルに戻す気力も無かった。




「(同じ高校生なのに、何でこんなに歯が立たないんだよ……!一体何が違うってんだよ!?)」



 答えの見えないまま山俵の選手はボールを持って走る。1点でも返そうと、試合はまだ終わってはいない。



 せめて立見の無失点記録を破る。それがこのチームに対して一矢報いる事になるだろうと、残された原動力はそれぐらいだった。



「1点返すぞ1点!」



 センターサークルへとボールをセット。なんとか奮い立たせようと声を出していく。




 立見から1点を、此処に来て山俵のチームそれを目標に1つとなり立見ゴールへと迫る。



 最後の力を振り絞りパスを繋ぎ、各自が動き攻撃のリズムを奏でていく。



 良い攻めの組み立てが出来てきた。



 右サイドにスペースが空いているのを発見し、左SDFの翔馬が迫り追い付く前にスルーパスが出された。



 そこに山俵の選手が走り出し、通ればチャンスだ。




「ナイスパース♪」



 言葉と共にボールを受け取った選手、それは山俵の選手ではない。




 弥一が山俵の決死の反撃、その狙いを読んでボールを掻っ攫ってしまったのだ。




「(そんな!?此処まで来て……何でスルーパスがバレたんだ!?)」



 悪い組み立てではなかったはず、それなのに見透かされてしまった。



 対戦相手は知らないまま苦悩していく。見透かされているようではなくて本当に心の中を読んで、見透かされているという真実に気付く事は無い。




「カウンター!」



 弥一の高い声と共に立見の反撃が素早く行われる。間を通す速いパスが弥一から出されれば明へ通り、彼は鮮やかなドリブルで一気に2人を突破して行けば、ゴール前へ中央から迫る。



 彼からパスが多く出され、山俵の守備陣はパスに警戒。だが明が選択したのは違う。




 ペナルティエリア外から右足のミドルシュート。



 インステップで正確に打ち抜かれたボールは弾丸と化し、DFもGKも反応出来ず気付けばゴールネットは大きく揺らされていた。




 山俵は意地の1点を取ろうとそれでも迫る。



 だが誰よりも守備に妥協をせず、誰よりも強く無失点に拘る弥一が意地の1点を許さない。



「大門ー!ボール来ないからって気が抜けてないー?大丈夫ー!?」



「大丈夫だって!皆集中切らさないようになー!」



 この試合で一度もボールに触れていない大門。そこにも弥一は忘れず声をかけて気を引き締めさせていた。





「(監督を務めて多くのチームを見てきたが……なんてチームだ立見高校……!)」



 もはや勝ち目は僅かも無い。山俵の監督は目の前の対戦校が見せつける強さに脱帽するしかない。



「止められんのかよ、このチーム……?」



「八重葉ですら無理だったんだろ……?ひょっとして高校サッカーの歴史で1番強いんじゃあ……!?」



 観客も立見の強さに呆然となり、自分達は今歴史の証人となっているのではという感覚に陥っていた。




 そして長いホイッスルが吹かれ、試合終了を告げられると山俵の選手達は一斉にフィールドへと倒れる。



 悔しさ、それよりもやっと彼らから解放されたという気持ちの方が強く、結果は2桁もの大差を付けられての敗退だ。




「(はは……何でこいつらと同じ時代に生まれちまったんだろうなぁ……)」



 もう何もかも通り越して笑うしかない。



 倒れ込んだまま彼は今日の試合を噛み締めていた。




 SNSでも立見関連はトレンド入りを果たしており、「マジで強過ぎ!誰も勝てねぇ!」と圧倒的強さに驚愕する意見があれば「俺から見れば結構隙があるよ」と根拠の無い事でマウントを取りに行ったりと、ネット界隈もちょっとした騒ぎとなっている。



 高校サッカー界で最も注目される存在となった立見。選手権連覇へと向けて今動き出していた。




 立見13ー0山俵



 詩音4


 玲音3


 石田2


 緑山2


 川田1


 歳児1

詩音「うーん、久々に暴れ回ったって感じー!」


玲音「僕ら結構ターン回って無かった気がするねー」


弥一「おーい2人とも引き上げるよー」


詩音&玲音「はーい♪」


半蔵「相変わらず神明寺先輩にはよく懐いているというかなんというか……」


明「(猫2匹……)」


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