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狼との日課

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「選手権まで時間無いから皆しっかりやってくぞー!」



 牙裏サッカー部のキャプテンを務める佐竹丈。もうすぐ開幕する高校サッカー選手権の岐阜予選に向けて、練習に力を入れていた。



 スタミナをより付けるインターバルトレーニングをこの日に行っていて、急走と緩走を繰り返し行う。




「よ、あれ何やってんだ?」



 愛奈から見れば速く走ったかと思えば急に遅めに走る。変わったランニングだなぁと見ていてどんなトレーニングか分からず、隣で見学していた眼鏡をかける男子学生へと気軽に聞いていた。



「インターバルトレーニングだよ。サッカーの場合はただ走るわけじゃない、単純に走るより体に強弱の負荷をかけて体に慣れさせた方がスムーズに試合で動けるようになるんだよ」



「ほお〜、詳しいなぁ」



 トレーニングについてかなり知っていたようで、教えてもらうと愛奈から感心の声が上がり、眼鏡をかけた男子学生も女子からそう言われるのは悪い気がしない。



 得意気にくいっと眼鏡を上へと上げる仕草を見せて、頭脳をアピールしていた。



「あー、こいつさっきまでスマホであのトレーニングについて調べて今知った知識言っただけなんで」



「ば、バカ野郎!お前言うなっつーの!」



 友人らしきもう一人の男子学生から付け焼き刃の知識だった。その事を言われてしまい眼鏡の男子は慌ててしまう。



 だが愛奈の関心は既に目の前のトレーニングへと移って、男子学生の方は見ていなかった。





「ふー……」



 練習の合間。小休憩へと入り配られたドリンクを飲んで喉を潤しつつ、春樹は今のチームメイト達となる牙裏サッカー部の面々を、改めて全体で見ていく。



 このチームを率いる佐竹は大柄な中盤の選手で、攻守共に頼もしい存在感ある男だ。


 1年から春樹は佐竹と付き合いあるが実力、人格とキャプテンに相応しいと思っている。



 更に最終ラインも3年生で固めており、4バックの津川、但馬、丸岡、渡辺の4人は夏に行われた総体に出て更に経験値を重ねた。


 中でも守備の要となるCDFの但馬夏彦(たじま なつひこ)は成長著しく、彼の居る守備は県内でも屈指に入るだろう。



 肩まで伸びた長い黒髪で185cmと体格の良い人物が但馬で、彼は今休憩時間で仲間の同級生と談笑を楽しんでいる所だ。



 春樹も3年であり、牙裏の一軍がほとんど3年となっている。積み重ねた経験値が高く狼騎という絶対エースの強みもあるが、春樹はこれではまだ足りないと考えていた。



「(狼騎以外の走れるサイドの選手でも欲しい所だよな)」



 今牙裏に足りていないのはサイドで力を発揮する選手。狼騎も走力があって走れるのだが、彼一人では流石に限界がある。



 誰かサイドで使えそうなのはいないか、春樹は目を閉じ考えた。






「なあなあ、お前結構噂になってるぞ。転校してきた2年の美人先輩と付き合ってるのかってさ、ゴロちゃんよー♪」



「もうー、ショウもからかわないでよー!」



 休憩時間に同級生からニヤニヤと笑われ、肘で突かれてからかわれている五郎は顔を赤くさせていた。



 からかっている同級生は五郎と同じ1年でサッカー部に所属する、風見正二(かざみ しょうじ)という名だ。


 170cm付近の身長で桃色の短髪、五郎とは同じ時期に入部した仲で一緒に昼食をよく共にする時が多い。



「まあ俺としてはユキちゃんの方が好みだけどな、あーどっかに見に来てねーかなー?」



 ユキは1年の女子で、学年内のマドンナ的存在の美少女として知られている。正二は彼女が思いっきり好みのタイプで射止めたい、お付き合いしたいという事を日々五郎に聞かせていた。



 この日も例外ではなく五郎は苦笑しながらも彼の話を聞いている。



「サッカー部も注目されてきてるし彼女も見に来てるかもしれないからね」



「そうなんだよな、ただ総体の時は俺スタメンどころかベンチにも入れなかったし。五郎は入れて良いよなぁ」



「入ったって言っても僕ベンチで1試合も出てないよ」



 総体の時、正二はメンバーに選ばれず全国の舞台に立つ事は出来なかった。五郎の方もメンバーに選ばれはしたものの結局試合には出られず、ベンチをずっと温めただけで夏の大会は終わる。



 牙裏が有名になった事は間違い無いが、正二と五郎は共に試合に出られなくて全国から見れば2人を知る者はほぼいないだろう。



「あーあ、1年だけど俺らも出てぇよなぁ。選手権とか出番無いかねー?」



「ショウなら頑張れば出番あるんじゃないかな?ほら、走力結構高いし」



「んー、まあ走る事は自信あるけどさ、長くは無理だぞ。そこはもうちょいスタミナ付けたりしなきゃな」



 控えGKである五郎が試合に出る事は難しい。彼の場合はスタメンの正GKで190cmを超える3年の先輩の加納が居る。



 160cmにも満たない五郎より長い腕のリーチと大きな掌を持つ。試合に出るにはこの頼れる守護神からその座を奪わなければならない。



 ちなみに加納は正GKの証である背番号1を付けず17の方を選んでおり、彼曰く幸運の数字を背負いたかったそうだ。



 その五郎よりもフィールドプレーヤーである正二の方がメンバー入りすれば、何処かで試合に出られる可能性はあるはず。



「休憩時間終わりだー!練習再開するぞー!」



 佐竹から練習再開の声が上がれば五郎と正二は共に動き出し、選手権の出場に向けて練習へと打ち込む。




「ん?……ほう、なるほどー……」



 そこに春樹が走る正二の姿に気付き、目が止まるとその姿を観察して後に自身もすぐ練習へと戻って行った。







 やがて部活の練習時間は終わり、佐竹は今日の練習を此処までと告げた後に皆が解散し、片付けや帰り支度へと入っていた。



「おーい、ゴロちゃーん。一緒に帰ろうぜー」



 練習終わりの五郎へと愛奈は声をかけ、共に帰ろうと誘う。



「あ、ごめんなさい。僕もうちょっとやる事あるので向坂さん先に帰ってて良いですよ」



 五郎の方はまだやる事が残ってるようで、着替えずにフィールドへと向かって走って行った。





 フィールドでは狼騎が無人のゴールマウスへと向けて、次々とシュートを放っている。



 右足、左足と当てる足を変えたり蹴り方を変えたりと様々な形で撃っており、これが狼騎によるシュート練習だ。



「狼騎先輩、今日もお願いしますー!」



 五郎は狼騎の前まで来ると彼に対して頭を下げていた。



「さっさと立て」



 顎で五郎へとゴール前に立つように伝え、五郎がゴールマウスの前で構える。



 そこに狼騎は左足で右上隅へと厳しいコース、それに加えて速いボールを蹴っていく。



「っ!」



 狼騎のシュートに対して五郎は反応し、両腕を伸ばすが掠りもさせてもらえず狼騎のシュートが五郎の守るゴール。そのネットを揺らせていった。



 そして休む暇なく2本目、再び狼騎のシュート。今度は右足で正面のゴール上へとホップして上がっていき、ボールが五郎の方へと向かう。



 それを五郎は両手でバシッとしっかりキャッチして、今度はゴールを阻止する。




「へぇ〜、あいつら練習終わったってのによくやる……あー、そこの人ー」



「え?俺?」



 狼騎と五郎の練習を見ていた愛奈。練習後にも関わらず更に練習を重ねていて彼らは何本も続けている。



 狼騎が際どいコースへと容赦無く蹴ってシュートを決めれば、五郎の方も良い反応を見せてボールに飛び付きシュートストップに成功する。



「あの2人何時もあんな感じで練習してんの?」



「まあなぁ、うちのサッカー部じゃお馴染みの光景だよ。他のGKが酒井に関わらない中で三好の奴だけ恐れもせず言ってあいつの相手を務めてんだからな」



「へぇ〜……」



「ところで君、この後暇?良ければ一緒に帰って途中で飯とか……」



「あ、先約あるんで却下」



 男子部員のナンパを躱し、愛奈は2人の練習する姿を見ていた。



 狼騎が決めては五郎が止め返す、その攻防が暗闇に包まれるまで続く。

五郎「(流石に狼騎先輩からゴロちゃんとかそういうの言われなくて良かったー……)」


狼騎「おら、ぼさっとすんな五郎!次行くぞ!」


五郎「あ、はいー!」


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