フランスとのお別れ、帰国へ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「おー、皆帰り支度で忙しそうだね」
フランスでの大会で優勝を決めてから一夜が明ければ、日本の合宿所では帰り支度の為にそれぞれ荷物の用意で忙しく動く。唯一フランスを拠点にしている白羽だけは身軽であり、他と比べて多くの荷物を準備してはいなかった。
そのおかげで皆が忙しく動く中、白羽だけ1人で優雅に朝からのコーヒータイムをゆっくり楽しめる。若干の砂糖やミルクで飲みやすくし、味わいつつスマホをチェックとパリで贅沢な寛ぎ方だ。
「うお!?スマホにめっちゃおめでとうのメッセージ来とった!」
荷物の準備を一通り終えた光輝がスマホを見れば、部活の仲間達や家族に親戚と、多くの者達から昨日の優勝を祝して、祝いの言葉が次々と届いていた。
「あ、こっちもじいちゃんやばあちゃんに……!」
大門のスマホにも応援してくれる祖父母、父に母に弟。更に桜見の子供達からも祝福のメッセージが来ている。
「そりゃ世界の舞台で初優勝だから皆大盛り上がりだろ、日本帰ったら取材とかで忙しくなりそうだよなぁ。テレビ出演とかあるかもしれないしよ」
忙しいなと言いつつもスター気分でまんざらでもなさそうな様子の月城。
「おい、帰ったら俺達はインターハイが待ってるぞ。あまり浮かれすぎるな」
「あ……そういやそうでした。またあのクソ暑い中での厳しい日程による戦い始まるんスね」
照皇から言われて月城は忘れかけていた事を思い出す。高校生達は帰国すればそれぞれの高校へと戻り、インターハイに備える。
去年の覇者である八重葉は当然出場が決まっていた。
「準備出来たー、じゃあ僕らお先に日本帰りますねー♪」
「え?お前ら俺らと同じ飛行機で帰るとちゃうんか?」
弥一は帰り支度を済ませると、先に準備完了していた大門や優也と共に合宿所を後にしようとして、そこに想真が呼び止める。
「あ、僕ら帰りもファーストクラスだから♪」
そう言うといつものマイペースな笑みと共に、ファーストクラスのチケットを見せる弥一。これを見て想真だけでなく、室や月城といった同級生のライバル勢は呆然。
「じゃあお先、インターハイでまた……な」
「白羽と藤堂さんまた代表でねー!」
「え、と。またこのチームで集まりたいね、それじゃ!」
弥一、優也、大門はそれぞれ声をかけてから3人揃って、先に合宿所を後にして去って行くのだった。
「最後の最後まで自由な感じだったな、あいつら」
「あれが立見なんですねー……」
辰羅川と番は合宿所を後にする立見組を見送りながら、自由な感じの彼らを見て羨ましいなと感じる。
自身が所属する学校やクラブチームはそこまで自由は許されていないせいか、余計にそう思えてしまう。
「打倒立見や……」
そこに想真がぽつりと呟いた後、俯かせた顔を上げる。
「ファーストクラスで豪勢な旅するセレブな奴らは敵や敵!エコノミーの底力見せたるわー!」
フランスの空に想真の叫びが響く。
彼らは行きと同じく帰りもエコノミーだ。
多くの人々で行き交うパリの空港へと辿り着いた弥一達。飛行機までまだ時間があるので、空港内をとりあえず歩こうと3人は移動。
「グレゴリーにアドリーヌさん太っ腹だねー、カヌレとかフランスの焼き菓子をお土産で沢山貰っちゃった♪」
「何か悪いけど、焼き菓子は立見の皆へのお土産にしようか」
空港に行く前、弥一達は以前知り合ったパン屋を夫婦で経営するグレゴリー、アドリーヌ夫妻の店を訪れていた。
そこでベルギーを破ってフランスの敵討ちをしてくれた事に感謝され、土産に焼き菓子を沢山頂いたのだ。
「!……おい」
貰った土産の話で弥一と大門が話していると、優也が前方に居る人物達に気付き2人へ声を掛ける。それに2人も同じく視線を向けると、昨日激闘を繰り広げた者達がそこに居た。
「ん?あれ……日本チームじゃないか?」
空港で飛行機を待っているベルギーチーム。その1人のアキレスが3人組の姿に気付く。
「お、ヤイチだ!」
小さいその姿をいち早く見つけたアドルフは真っ先に3人へと駆け寄って行く。
「おい!」
ルイがそれを呼び止めるが彼の足は止まらない。これにルイは呆れるようにため息をついたのだった。
「よ、日本もこれから帰りかい?」
「僕らだけ飛行機の都合上先にね、アドルフ達ベルギーと帰る時間帯被ってたかー」
昨日の試合で争って来た元チームメイトの弥一とアドルフ。そこにあるのはライバル同士でなく友人同士の姿だ。
「にしても弥一がやるのは分かってたけど、そこのクールガイも思ったよりやるじゃないか。まさかルイをあそこまで抑えてくるとはな」
「俺は与えられた仕事をこなしたまでだ」
アドルフの関心は優也へと向けられていた。弥一と比べて優也の事はあまり知らなかったが、ルイを抑える程の実力者と認識を改めたようだ。
「おい、お前」
そこに優也へ声をかけてきたのは昨日彼のマークに遭っていたルイ。
「次やる時はお前のマークなんか蹴散らしてやる、忘れんなよ!」
言いたいことだけ言うと、ルイはさっさとその場から離れていった。
「悪いなあいつ、昨日お前に自由にあまりさせてもらえなかった事を相当気にしてたみたいでなぁ」
「優也ライバルにされちゃったねー、ベルギーの司令塔に」
弥一とアドルフの言葉を聞きつつも、優也の視線は離れていくルイの背中を見ていた。世界の優秀な司令塔に目を付けられるというのは中々レアかもしれない。
「(いいな皆、俺も試合出たかった……)」
試合を通じ交流が生まれる様子に大門は羨ましく思っていた。結局このフランスは彼の出番は無く全試合藤堂が出場。
フィールドプレーヤーと違ってGKは中々出番に恵まれないので、仕方ない事ではあった。
「ヤイチ、日本には今回の優勝持ってかれて負けたけどな。来年のUー20ワールドカップは貰うぞ」
「来年かぁ、皆その大会の時は滅茶苦茶マジになって手強そうだねー」
「そりゃそうだろ、世代別とはいえワールドカップと聞いて……心躍らないサッカープレイヤーはいねぇよ」
サッカープレーヤーなら誰しも、1度は憧れを抱くであろう世界最高峰の国際大会。それがワールドカップ。
世界の各国が栄光ある舞台を目指し戦い、優勝すれば正真正銘世界の頂点に君臨する。
弥一はその中でディーンの顔を思い出す。以前に車の中で話していた彼は、イタリアを再び世界の頂点に立たせる事に人生を捧げている。
その大会を目指すとなればイタリアともいずれ当たるかもしれない。
「弥一、大門、そろそろ俺達の飛行機が出る時間来てるぞ」
時計を確認した優也は2人へと呼びかけ、そろそろ向かったほうが良いと伝えておく。
「じゃ、アドルフにベルギーの皆さん。来年のUー20でまた会おうねー♪」
弥一が明るく手を振れば、アドルフや他のベルギーの皆も手を振り返して応える。その中でルイだけはそっぽを向いたままだ。
3人を乗せた飛行機は空高く上空を飛び、日本へ向けての長い空の旅を開始。
フランスでの戦いを終えた弥一達は皆の待つ日本へと戻って行ったのだった。
優也「今回でフランスの戦い終わりか、長いようで短かったかもな……」
大門「俺の出番結局無かったなぁ」
弥一「スマホを空中でキャッチして技術の高さは見せられたね♪」
大門「あれで技術高いって思われるかな……?というかあれに関してはホント2度と遭遇したくないトラブルだったからな!」
優也「トラブルに遭遇とまあ色々あったな、フランスの様々な飯を食ったりお前と出かけると主に飯を食う事が多い気がするぞ」
弥一「そう?結構色々観光地だって巡ったでしょー、とりあえずフランスの戦いは終わり舞台は再び日本へ、サイコフットボールまだまだ続きまーす♪」
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