フランスの戦い、決着へ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「室でかしたー!よく押し込んだぞー!」
「最後の最後ヒーローなりおってこのー!」
試合終了間際に追加点を入れると、室の周囲に人は集まり番や光輝がそれぞれ手荒く祝福。スタンドからは「ニッポンー!」「ムロー!」という声も歓声の中で上がってきていた。
『日本試合終了間際の追加点ー!室がこの局面で値千金のゴールを奪いベルギーにトドメの一撃だー!』
『よーし!今度はこれひっくり返されないよう日本気を付けてほしいですね!』
後半アディショナルタイムの失点。8分で追い風になるはずだったベルギーが逆に失点を喰らってしまい、それぞれが下を向いてガックリと肩を落としていた。
ルイですら何も言えなくなってしまう、その中で1人まだ諦めてない者が居る。
「まだだって!まだ行けるはずだろ!!」
急いでボールをセットしに向かうアドルフ。センターサークルに置いてすぐにキックオフを行おうとしていたが、肝心の日本がまだ歓喜の中に居て再開の準備をしていない。
「(なるべく長引かせとけよー、此処でベルギー焦らしまくってやれ)」
「(了解や)」
室と喜び合う中で白羽と光輝は悪い顔で薄ら笑みを浮かべ、喜ぶ時間を延長させての時間稼ぎをしている。
もう2点差がついているがA代表のワールドカップで2点差をひっくり返されて、これ以上無い煮え湯を飲まされた。ベルギー相手に容赦する気は一切無い。
姑息だろうがなんだろうが、今回是が非でも勝って悲劇の借りを返そうと大半が思っている。
喜びっぱなしの日本にアドルフも流石に焦れてきてイライラした顔に変わる。
「(早くしろよ……!)」
そしてギリギリまでゴールの喜びを引き伸ばし、時間を稼いだ日本はすぐにキックオフ準備を整えていく。
主審はイエローカードを出そうかと思ったが、迅速に日本が再開の準備を進めたのを見てカードまでは出さないでいた。
ベルギーのキックオフで再開。時間が無いので中央から一気に突破を狙おうと、アドルフはルイにボールを預け、速いショートパスで繋ぎ日本ゴールへ向かう。
ルイから再びアドルフに短いパスが通れば、そこに立ち塞がるのは弥一。
何度もボールを跨ぐ高速のシザースで弥一を翻弄しに行くアドルフ。すると突然弥一の右側へと軽くパスを出して、自らは左側を走る。
右へと出されたボールは回転がかかっており、左側を走るアドルフの丁度合流するような感じのコースを描いていた。
メイア・ルア、日本で言う裏街道。それぞれ半月のような動きで進み、中央で合流してボールを受ける。これで弥一を躱した。
そう思った時。
弥一はアドルフが自分の左側を突破して走るよりも先に反転。蹴られたボールの回転を読んで、アドルフが中央でボールを受けるよりも前にカットしてみせたのだ。
「(パリの悲劇とか御免だね、これでおしまいっとー!)」
メイア・ルアをあっさりと見破られ、流石に動揺を隠せないアドルフをよそに弥一は前線へと向けて、ボールを左足で力の限り蹴ってクリア。
そこに長きホイッスルは吹かれたのだった。
『此処で長いホイッスル!試合終了ー!日本、Uー19フランス国際大会で初の優勝です!』
「勝った!勝ったぁー!」
「優勝やー!!」
試合終了のホイッスルを聞いた瞬間に弥一、想真のリベロ2人は飛び上がって共に喜び、ベンチメンバーもフィールドへ飛び出して選手達と共に大きな歓喜の輪を作り出していた。
「わー!やったー!」
「日本勝ったー!神明寺先輩勝ったー!」
立見の寮では氷神兄弟を中心に大盛り上がり。フォルナは喜びのような鳴き声を上げている。
「弥一君が勝った……!おめでとう……!」
自宅で弥一の姿をずっとパソコンで見て、応援を続けていた輝咲。彼の勝った姿に自然と笑みがこぼれていた。
「畜生……負けた……負けた……!!」
ベルギーの選手達は負けた事に皆下を向いており、ルイは悔しさを見せていた。
日本には負けないと思っていて、この大会はUー20ワールドカップの為の弾みで優勝しようとしていた。だが結果は2ー0と負けてしまう。
自分達が思っているよりも日本は強く、狡賢かった。
「……ワールドカップ、そこで返すしかねぇだろ」
悔し涙を見せるルイの右肩をポンと叩き、アドルフは喜ぶ日本の姿を目に焼き付けるようにじっと見ている。
「勢いは付けられなかったけど、最後にその大会で優勝して笑えれば勝ちだ。勿論そこで日本にも勝つしイタリアやブラジルにだって負けやしない」
今大会で参加してなかった強豪国は多く居る。イタリアにブラジルといった国が参加してない中で、この国際大会を優勝しても世界最強とは行かない。
より大きな大会、つまりワールドカップのような規模の巨大な舞台で勝たなければならないだろう。
本当の勝負はそこだ。今はこの苦い敗北を噛み締めて来年への力と変えるだけ。
「当たり前だろ……どの国にだってワールドカップの優勝渡してたまるかよ……!」
涙を腕でぐいっと拭い、ルイは来年絶対に日本を強豪国共々叩き潰すと誓う。それを見てアドルフは小さく笑みを浮かべたのだった。
優勝トロフィーの授与、代表してキャプテンの藤堂が受け取れば彼を中心に日本チームは大盛りあがり。アジアでの制覇は何度かあったが、世界の強豪を相手に優勝は中々届かず、良くて準優勝が続いていた。
だがそんな時代も彼らが終わらせるのかもしれない、神明寺弥一達による新たな日本サッカー黄金世代によって。
彼らを讃えるように場内はニッポンコールが沸き起こっている。それに応えるように藤堂は高々と優勝トロフィーを両手で掲げ上げ、此処に日本の優勝を証明してみせたのだった。
日本2ー0ベルギー
歳児1
室1
Uー19フランス国際大会
優勝 Uー19日本代表
準優勝 Uー19ベルギー代表
3位 Uー19アメリカ代表
一戦目 アメリカ 1ー0
二戦目 コートジボワール2ー0
三戦目 コスタリカ 3ー0
四戦目 スウェーデン 5ー0
決勝戦 ベルギー 2ー0
得点13 失点0
大会MVP 照皇誠
照皇「これでフランスの戦いも終わりか」
弥一「照さんMVPおめでとうー!さすか日本の得点王ですねー♪」
照皇「お前が選ばれると思ったんだが……」
弥一「DFがそんな何回も選ばれる事は早々ありませんってー、それよりハットトリックもやった照さんが相応しいですよー♪」
照皇「俺としてはベルギー戦でそこまで活躍出来たつもりは……」
弥一「もうー!いちいち難しく考えるのは照さんの悪い癖ですよー、此処は喜んじゃいましょう!」
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