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ゴールへの執念

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 その目を最初に見た時、自分がターゲットじゃなくて良かったと思った。



 相手にするFWは獲物を狙う目を向けられ続けて追われて行く。試合終了までずっとだ。



 弥一が本気になった時は何時もああいう目をしている。



 そして今、それは自分へとまさに向けられていた。





 アドルフは日本の空いているスペースを狙って走り、パスを要求する。



 だが弥一は彼を決して逃さない。走っても走っても、何処までもアドルフを追いかけて離れなかった。



「(正面だとこんな怖い目してんのかよ!)」



 今まで同じチームで遠い所からしか、その目を見たことが無かったアドルフ。間近で今の弥一を見ると彼は獲物を狙う目。


 小さな狩人となっている。



 走るルートや変化に緩急を付けて動き回るが、弥一を振り切れる気がまるでしなかった。



 全部読まれている、見透かされてるような感じだ。



「ちぃ!」



 優也の執拗なマークに遭いつつもルイはアドルフをちらっと見るが、弥一の姿が見えている為に迂闊にパスが出せない。



 弥一には届かない高さあるパスを送ろうにも、優也がその隙を与えないので蹴る事が出来なかった。



 ルイは左のヒールキックで流し、ボールは走り込むアドンへ。




「キーパーロング!」



 すかさず弥一の声が飛べば、その後にアドンの思い切ったロングシュートが飛んで来た。しかし備えていた藤堂には通じず、しっかりと両手でキャッチし抑え込んだ。



『ベルギー再びシュートも日本の藤堂ガッチリ防いでくれます!頼もしい日本の守護神!』




「(不思議だな、何時もよりシュートが止めやすく思える。事前に知らせてくれるせいか……?)」



 何時もの試合の時よりもシュートをよく止められる、防げる。



 相手はヨーロッパの強豪ベルギーにも関わらずだ。



「焦るなー!落ち着いて相手の動きよく見てマークの確認し合うの怠るなよ!」



 点を取ろうと猛攻を仕掛けて来た事に対して藤堂は声をかけ、その後に前線へと思い切りパントキックで高く蹴り上げ、ターゲットは照皇。




 滞空時間の長いハイボールに対しても、照皇は落ち着いて落下点まで向かえばタイミングを見てジャンプ。



 マークをするセインも同時に飛ぶが、照皇の方がポジションが良かった分この空中戦を照皇が制する。頭で送られた先には光輝の姿。



 パスを受ければ斜め左へドリブルに入り、人の多い中央を避ける動きを見せた。


 此処で無理に中央突破をしてボールをすぐに奪われるよりも、リスクの低い人がまだ少なめの方を選択していく。もう時間は残り少ない、1点リードしている。


 光輝はこのまま逃げ切る為に時間稼ぎへと出たのだった。



 左のライン際でトーラス、ケントに囲まれてボールの取り合いが繰り広げられる中、光輝はボールを渡さない。




『日本守る!逃げる!お、此処でアディショナルタイムへと入りました!時間は……8分ですか!?』



『長いですね!?8分ですぐ吹かれるとも限りませんから実際は10分と見ても良さそうですよ!』



 後半40分が過ぎてアディショナルタイム突入。長い時間となって、ベルギーには追い風で日本には逆風だ。



 それでもルイには優也、アドルフには弥一とマークが続き自由にさせていない。



 ベルギーボールのスローイン、するとルイが駆け寄りボールを持つトーラスへと伝える。



「アドルフにハイボールで送れ、グラウンダーは絶対駄目だ」



「そうだな、低かったらあいつ取るだろうし……」



 日本の守備を崩しきれない現状。やはり此処はエースのアドルフに頼るしかないと、2人は彼を活かす話し合いをしていた。



 マークについてる弥一にはグラウンダーだと十中八九取られると理解しており、ならばまだ高いボールの方が希望はある。



 作戦を決めればトーラスはスローイン。優也のマークを背中に背負いつつも、これをルイがダイレクトでトーラスへと返せば左足でワントラップ。トーラスは此処からアドルフ目掛けて高いボールを蹴り出した。



 一気に日本ゴール前の上空までボールが空を舞い、アドルフはその落下地点へと走って行けば弥一もピッタリと追走していく。



 飛ぶタイミングが来ると見たか、弥一は此処でアドルフのバランスを崩そうと、合気道式のチャージでぶつかる。



「(喰らってたまるかよ!)」



 左からチャージを仕掛けて来た弥一。その動きにアドルフは反応していた。



 低くぶつかってくる相手に左腕でブロックし、チャージを防いだのだ。



 弥一が古武術を習っている事も知っている。その事前情報と持ち前の身体能力が、弥一のチャージをアドルフが防ぐという事を可能にしている。



 妨害を阻止した後にアドルフはボールへ向かって飛び、弥一は空中で競り合って来る気配は無い。


 来たとしてもこの身長差と跳躍力だ。まともに空中戦となればアドルフが勝つだろう。



 弥一を躱し切り、アドルフは此処からヘディングでゴールを狙うには苦しいと見て、ゴール前に走り込むアドンの姿を事前に確認していた。



 政宗が追っているが、アドンのスピードが速く先にボールへ追いつける確率は高い。つまりアドルフのするべき事は1つ。


 ポストプレーだ。



 頭で落としアドンがダイレクトシュート、それで同点。頭の中でイメージを思い描き、アドルフは走り込む彼の方へと向けて頭で落とした。




 思い通り、アドンは反応して落とされたボールに向かっている。政宗は追い付けない、今から他の日本選手が追いかけても間に合わない。





 しかしアドンにそのボールが渡る事は無かった。



 ポストプレーで落としたはずのボールを弥一がコースを読んで、右足を懸命に伸ばし弾いていた。



 アドンへ渡るはずのボール。それはコースを変えられてセカンドボールとなって、左のタッチラインへと転がって行く。




「(ゴール前のロングスローはさせたくないっと!)」



 転がって行くボールに白羽が疲れた足に鞭打って走ると、ラインを割ってしまう前に追い付き、ベルギーにチャンスを与えない。



「くっ!」



 アドルフはまだ諦めておらず、駆け出すと白羽へと向かいボールを奪い返そうとしていた。



 だが迫られる前に白羽は大きく前線へクリア。ハイラインのベルギーDFの頭上を越えてドンメルとの間に落とされ、ドンメルは前に出て来れば素早く前線へボールを送り返そうとしていた。



「!ドンメル!!」



 その時アキレスが大声を上げて彼の名を呼ぶ。見れば照皇が全速力で迫って来て、セインを振り切っている。



 ドンメルは照皇の姿を視界に捉えるが慌てず、落ち着いて蹴り出す体制へと入り、右足でクリアする。




 照皇はこれに体を投げ出してドンメルの前へ出て来れば、全身でクリアボールをブロック。前へと運ばれるはずのボールは、後ろのベルギーゴールへと宙を舞いながらも向かった。



『照皇体に当てたー!ボールはベルギーゴールへ向かう、これはひょっとして!?』



『このままゴールあるかもですよ!』



 セインはこれを追いかけて行く、こんな形でダメ押しの得点が入ってはシャレにならない。



 そこに室が照皇に続きボールに向かって走っていた。長い脚と一歩が大きい歩幅を活かしたストライド走法で迫る。



 だがアキレスも室と並走しており、彼の好きにはさせない。



「(ダメ押し!これで決着つける!)」



「(冗談じゃねぇ!2点目なんかくれてやるか!)」



 両チームの最長身同士による張り合い、走るスピードは両者譲らない。



 ボールが1度落下して落ちると球は大きくバウンド。跳ね上がったボールに両者が追い付く。



 先に飛んだのは室、前へ押し込もうと頭でガラ空きのゴールを狙いに行く。



 これにアキレスも飛べばボールをクリアしに行く。それと同時に室の動きを阻止しようと腕も使っていった。




「うおらぁぁーー!!」



 アキレスに何時までも負けっぱなしはやはり許せなかったか、室は気合いの雄叫びと共に前へと頭を突き出して行けば、ボールは室の頭で捉えた。



 ボールを押し込むだけの室、掻き出して阻止しなければならないアキレス、それが勝敗を分けたかもしれない。




 室が前へと押し込んだボールはスピードが出てないが、ゴールを確実に捉えている。誰もいない状態のベルギーゴールに吸い込まれていった。




「やった……やった……!」



 頭で押し込む事に成功した室。主審からゴールの判定が認められると、スタジアムは再び大歓声に包まれる。



 その中で室は自身のゴールを喜んだのだった。



 2ー0、日本がアディショナルタイムでダメ押しとなるゴールを決める。

番「やっぱサッカーは何があるか分かんないもんだな、まさかあそこから得点生まれるなんて……」


弥一「そこはまあストライカー2人の執念による賜物だよねー、貴重な追加点取ってくれて感謝感謝♪」


番「(こうして見るとこいつフィールドで見た時と普段全然違うよなぁ……実は二重人格?)」


弥一「何か言ったー?(分かってるけどね)」


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