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ポジションチェンジで東西ダブルリベロ結成

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 アドルフの右足シュートに対して弥一のスライディングブロック。これらがぶつかり合うとボールは大きく跳ね上がり、日本ゴール前でフランスの上空を空高く舞い、落下してくる。



 このボールに対しては日本の長身GK藤堂がジャンプ。両腕を伸ばせばキャッチして、ベルギーの追撃を此処で断ち切った。



『危なかった日本、オフサイドトラップが発揮されずDFラインをアドルフが突破してきましたが神明寺のブロックでこのピンチを凌ぎました!』



『今のは青山君の上がりがちょっと遅かったですね、彼が残ってしまっていたので旗上がりませんでした』




「危ない……青山は体が強いんですがこういうのは得意としてないんですよね、そこは大野の方が良かったんですが……」



「確かに、そこは彼の課題ですね」



 日本ベンチでは日本のピンチにヒヤッとした富山と、表情を変えないマッテオが会話を交わしている。オフサイドにかける事を得意としていない番。これに富山はやはり大野が復帰次第で変えた方が良いのではと思ったが、マッテオはただフィールドを眺めるのみだ。



「修正の指示をしないと」



「いえ、それは先に彼がやるでしょう」



 新たな指示をと求める富山にマッテオは片手で制する。その視線の先には番へと駆け寄る弥一の姿があった。






「悪い!今の俺がしっかりしてなかったから」



「うん、とりあえず番がオフサイドトラップ苦手で下手っていうのがよく分かったよ。正直何してくれてんだって思った♪」



「う……」



 番は謝罪。そこへ更に傷口に塩を塗り込むかのように、弥一が番にはっきりとオフサイドトラップが下手と言い切った。これに番は言い返せない、昔から力で止める事は得意としていたが、オフサイドを取るような仕掛けは不向きだ。



 どんまいとか気にするなとか弥一は言うつもりは無い。それで楽観視されてDFがミスをそのままにしておくのは許されないと思っているから、遠慮する気など全く無かった。守備に妥協など一切しない。



 しかしそうしてなじるばかりではない。



「だからこっからはね……」



「……え、ええ?」



 弥一はぼそぼそと番に何かを伝えて行けば番はそれに驚く。試合中に行われる弥一の悪巧みが、このベルギー戦で実行されようとしていた。






「(思った通り、日本の穴はあの15番だ)」



 一方のベルギー、キャプテンのルイは守備の弱点を番だと狙いを定めていた。



 此処まで無失点の日本だが穴を常に探っており、崩す所は日本の背番号15。不意打ちの攻撃に対応出来てなかった所を見れば、彼から何度か決定的チャンスは出来る。



 ベルギーが先制の可能性は充分で、何も真っ向から厄介な小さいDFを突破する必要は無い。弱点を攻めるのは立派な戦術であり一つの兵法だ。






 日本は藤堂からのスローイングで想真に渡れば、そこから光輝へ最神ホットラインでチャンスを作ろうと、視線はそちらへと向いていた。



 だが向ける視線をルイに気づかれると、彼は想真と光輝の間に立ってパスコースを消しに動く。それにアドルフも想真の右から寄せに行っている。



 ベルギーのプロリーグで活躍する2人による前線からの守備だ。



「どわっ!」



 流石の想真もパスを出せずアドルフの左足が、キープする想真のボールを弾き出す。左へ流れるボールにトーラスがフォローに動く。



 この辺りの動き出しもベルギーは素早く高い連携力を持っている。




 そのトーラスよりも更に速く動き出している者がいた。




「(此処で取られて連続攻撃は嫌だね!)」



「っ!?」



 ボールをトーラスが取る前に弥一がセカンドボールを取る。ベルギーに連続攻撃を此処で許しはしない。




「白羽ー!走って走ってー!」



「(人使い荒いなぁ、まあ良いけどさ!)」




「7番走り出したぞアドン!」



 弥一は白羽に右サイドを突っ切れと指示。それを受けて右を走る白羽の姿をベルギーのゴール前でアキレスが見ていた。



 すぐに彼は左サイドハーフのアドンにマークの指示を出して、白羽に付かせれば自身は室へと張り付く。身長としては室とほぼ互角。僅かにアキレスの方が高いぐらいだ。



 此処で弥一は中盤で光輝にもマークがきっちり付いていて、パスの出しどころが難しいと見ればゴール前へ、一気に高く右足でボールを蹴り上げ、高いボールがベルギーゴール前に運ばれてきた。



 GKも飛び出すのが難しい位置に狙って落とした弥一。これで後はFWとDFの空中戦による勝敗にかかっている。



 空中戦に滅法強い日本の巨人と言われる室。このボールに合わせて高くジャンプ。



 それに合わせてアキレスも飛べば2人の高さは互角、そして空中戦の競り合い。



「がっ!?」




 190cmを超える大型プレーヤー同士のぶつかり合いを制したのはアキレス。室は吹っ飛ばされるとバランスを崩して地面に激突。



 アキレスのヘディングでクリアされたボールは左のタッチラインを割っていて、判定は日本のスローインだ。




「いつつ……」



「大丈夫か」



「あ、サンキュ……」



 倒れた室に手を差し伸べるアキレス。室は引っ張り起こされて礼を言うと、アキレスは室の耳元へと顔を寄せる。



「今の挨拶がわりで倒れるなんて日本のストライカーは貧弱だな、シミュレーションのつもりか?」



「!」



 室は今アキレスが何を言ったのか言葉は分からなかったが、何となくバカにされた事は分かる。



 今自分は下に見られていると感じていた。




 照皇程の技術は持ち合わせていない、速さも月城や優也のような足は無い。彼らに無い強みで持っているのは高さだけだ。



 今立ち塞がる目の前の巨大な壁、このアキレスをなんとしても破りたい。室は再びアキレスへと向かう決意を固める。



 ゴール前、日本のスローインでボールを持つのは月城。彼もロングスローは得意で、アクロバティックなスローインも投げた経験を持つ。




 此処では目立つような事はせず、確実にゴール前へ運ぼうと勢いを付けて高いボールを放り投げた。



 それに対して再び飛ぶ室の姿、だがまたしてもアキレスと高さは互角。ぶつかり合いになれば室は吹っ飛ばされ、競り負けてしまう。



 高さが互角でもぶつかり合いで筋肉の差が出てしまい、屈強な肉体を誇るアキレスの方が競り合いになれば強い事は当然だった。



『ベルギーのCBアキレス高い!強い!日本の室も高く飛んでますがその室に競り勝ちヘディングさせません!』



『これは室君にとって大きな壁ですね、アメリカのデイブとはまた違った厄介なDFですよ』




 クリアされたボールを下がっていたルイが取ると、すかさず前を向けば番がDFから前に出ている事に気づく。



「(そんな前に飛び出してくれるなんてな、自分の穴をより大きくしてくれるとはありがたい!)」



 番は墓穴を掘った、本来のDFの位置からボランチ付近にまで上がっている。つまり今彼の居たDFの位置はガラ空き。それはアドルフも察するはずだとルイは判断から実行まで僅かな時間で、一気に番の頭上を超える絶妙なロングパスを蹴り込んでいく。



 流石は長い付き合いの幼馴染、ルイのやろうとしている事をアドルフは理解する。此処にパスが来ると、その位置へ走り込んでいた。



 アドルフに対して再び弥一がぶつかりに行く。



「お前なら来ると思っていたよヤイチ!」



「!」



 弥一は合気道式のショルダーチャージでアドルフを崩しに行くが、アドルフはこれを腕で瞬時に反応してブロック。彼がそう来る事はミラン時代から分かっている。


 だからこうして弥一が自分を逃さず、立ち塞がって来ても驚きはしない。昔からFWの動きを見逃さない奴だったのだから。




 そして弥一が合気道を得意としている事も知っている。合気道はヨーロッパにも広まっており、アドルフもそれで鍛えられた1人だ。アドルフは弥一に向かわずこのまま真っ直ぐゴールへと向かう。



 下手に力で向かえば力を受け流され、跳ね返して来る事を知っているからだ。



 弥一のサッカーを知る男アドルフ、今までのFW以上に厄介な相手だが彼は一つ見逃していた。




「よそ見し過ぎやー!」



「うお!?」



 弥一を意識するあまり他が見えていなかったか、アドルフは想真が何時の間にか迫り、自分のボールを狙って来た事に気づかず、スライディングでボールを弾かれた。



「ナイス想真ー♪」



 弥一はアドルフに意識を向けさせる為、必要以上に彼の相手を務めていた。想真が隙を突いてボールをかっさらう為に。




「(5番があの位置だと!?インプレー中にポジションチェンジなんて器用な真似を!)」



 ルイは日本の最終ラインに何時の間にか、番と想真が入れ替わる形で位置を変えていた事に気付き、さっき気付けなかった自分に対して苛立った。



 弥一が番に対して先程耳打ちしたのはこういう事だ。






「だからこっからはね、想真に伝えて?番と今の位置を交代。DMFも確か経験あるはずだよね?」



「え、ええ?そりゃまあ経験あるけど、監督に何も言わずか?」



「いちいち指示を待ってる暇なんか無いし相手も試合時間も待ってくれないよー」



「お、おい!?」



 弥一はそれだけ言うと走って行ってしまう。取り残された番は想真へ今の弥一の伝言を伝えてポジションをチェンジする。








「代表での東西リベロコンビ結成や!いっちょかましたるで!」



「頼りにしてるよ想真ー♪」



「あ、あのー……俺忘れられてない?」



 想真がポジションチェンジで本来のDFの位置へと戻り、東の弥一と西の想真でUー19でのリベロ2人がタッグを組み、アドルフ達の強力な攻撃陣を止めに行こうと2人は張り切る。



 そこにもう1人のDF佐助はポツンと取り残されていた。

佐助「東西リベロコンビと言うけどDFお前らだけじゃないからな!?俺もいるから、俺も!」


弥一「ああ、分かってますよ佐助先輩♪ずば抜けてボール扱いや競り合いや高さ強い訳じゃないけど全体的に高いステータスを誇る頼れるDFっていうのは皆分かってますから♪」


佐助「褒められてんのか特徴無いって貶されてんのかどっちだよ!?」


想真「まあまあ、弟の政宗との兄弟連携ディフェンスは誰も真似出来んから頼りにしてますがな」


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