決戦を前にフランス観光な彼ら
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
日本は4戦全勝でグループAの戦いを終えて首位。この結果グループBの首位で同じ全勝のベルギーと全勝対決となる。
互いに今大会負け無しで来て、決勝戦の注目はSNSを中心に高まっていた。
ヨーロッパでも有数の親日国のフランス。自国が決勝に出られない今そちらを応援する者がいれば、フランスを下したベルギーにそのまま優勝を取ってもらいたいという者もいて、決勝戦はホームやアウェーという差は無さそうだ。
合宿所では本日オフで休みのUー19日本代表がそれぞれくつろいでいる。ひたすら寝て睡眠をとる者、仲間と共にビリヤードをやったりゲームを楽しむ者、スマホをひたすら触る者やパソコンで決勝の相手ベルギーについて調べたりと、各自がオフの時を過ごしていた。
「立見組は相変わらず元気やなぁ」
自室のベッドで横になっている光輝。休みは与えられているが、特に何かする気は無く体を休めており、スマホをたまに寝っ転がって触ったりしている。
「ベルギーも高いなぁ……ん?立見?」
同じ部屋でパソコンを起動させ、ベルギーの試合をチェックしている室。今回の相手DF陣も高い選手が揃ってると見ていたら、話半分に聞こえてきた単語に反応。
「あいつらまた遊びに行ってるそうやで、どんだけパリを満喫する気やねん。観光客か」
外出を特に禁止されているという訳ではない。ただ今日に関しては特に誰も出かけず、合宿所でゆっくり連戦の疲れを取りたいと思う者がほとんどだ。
その中で弥一、優也、大門とまたしても立見組の姿が無い。彼らは決勝を控えても変わらずパリを観光しに行っていた。
「やっぱこれは見とかないとねー、セーヌ川♪」
フランス北部を流れる長い川。弥一達は全長780kmを誇る世界遺産にも登録されている、フランスを代表する河川の前へと来ていた。
日本で1番長い川が信濃川で367kmなのでセーヌ川はその倍以上。これでフランスで1番ではなく2番目に長いというのだから驚きだ。
ちなみにフランスで1番長い川はフランスの中央部を流れるロワール川、長さは1,012kmとセーヌ川を超えていた。
「此処でオリンピック始まるんだな」
大門は何処までも流れるフランスの川を眺めながら、先の4年に1度の大きな大会の事を考えている。
此処パリではもうすぐオリンピックが開幕。セーヌ川ではマラソンスイミングなどの会場となり、一ヶ月近くが経過すれば、もうすぐ此処で各国の代表選手達が集いそれぞれ競い合う。
「その前に俺らがパリに来れるって結構凄い事じゃないか、よくよく考えれば」
「五輪の先輩達より先に来ちゃってるからそうなるね」
五輪開催前のサッカー国際大会でUー19は五輪代表より早く、フランスのパリの地へ到着。優也はこれが結構凄い事だと口にすれば、大門も同意して頷く。
「観光船乗ってみたいなぁ」
セーヌ川を移動する船。色々な船があって、中には乗船しながらランチが楽しめるクルーズまである。弥一はそれらの船を見ていいなぁとなって、次第に乗ってセーヌ川を移動してみたいという欲が出て来る。
「ええ?当日にこういうの乗れるのかな……」
「行くだけ行ってみようよ♪」
当日にクルーズは中々無理なのではと思う大門の背中をぐいぐいと押して、チケット売り場へ弥一は向かわせようとしていた。とりあえず行ってみようという事で向かい、乗船のチケットは船乗り場の窓口で買えると分かり、弥一達はチケットを購入。
日本円で1人2500円となっており、学生の財布にとってはお高めで贅沢なクルージング代だ。大門と優也は料金を払う中で、正月に貰うお年玉を今まであまり使わずにいて良かったと思っていた。
パリ観光におすすめと言われる、水上バスへと乗り込みセーヌ川を行く。ちょっとした優雅な船旅が此処から開始。
「わーお、良い眺めー♪風が気持ち良いー♪」
水上バスに乗る弥一。思いっきりセーヌ川を移動する水上バスを楽しむ、その姿は日本の観光客と変わらない。これで彼の事を日の丸を背負う代表DFと思う者はそういないだろう。
「お前ら船酔いには気をつけろよ、それで体調崩して決勝のベルギー戦を欠場ってなったら笑えないぞ」
「僕乗り物酔いしないからー」
「ちゃんと乗船前にリンゴジュースを買って飲んだから大丈夫だと思うよ」
「?何でリンゴジュース?」
優也から船酔いについて気をつけるよう言われると、弥一はそれで酔った事は無いから平気と言い切り、大門は乗船前にリンゴジュースを飲んで対策している。弥一は何で船酔いにリンゴジュースと分からなかった。
「知らないのか、リンゴに含まれる成分が船酔いに効くとされている。リンゴジュースは酔い止めの薬みたいなもんだ」
弥一のように酔いとは縁のない者とは違い、その対策を必要とする優也に大門は方法を知っており実践している。
「本当はコーラが1番最適だけど、試合を控えてる身としては控えないといけないから……」
「もうー、セーヌ川まで来てそこまで船酔い防ぎの豆知識披露しなくていいよー」
このままだとリンゴジュースやコーラについての、健康談義による船旅になってしまいそうなので、弥一は此処で話を止めて周囲の景色を楽しむ事にする。
世界遺産の川を船で移動する、こういう体験はそうは味わえない贅沢な旅。1時間かけて周り途中での停泊は無し。
旅の終盤にはフランス、パリを象徴する300m以上の高さを誇る鉄塔が船上から眺める事が出来た。
セーヌ川に浮かぶ船から眺めるエッフェル塔の光景はまた格別で、3人は揃って鉄塔を見上げている。
「やっぱ凄いなぁ世界って」
「そうだね、日本に居てばかりだったら見られない光景や味わえない体験がこのパリにはあったよ」
大門にとっては前回悪い事もあったが、全体的に見れば良い海外の旅になったと、弥一の隣で此処までのフランスで滞在の日々を振り返っていた。
「けどもうすぐ決戦って時に俺ら観光してばっかだな」
主にフランスで初めての海外という事もあり、海外経験を持つ弥一に頼りくっ付いて来たが、あまり練習せず休んだりと観光してばかりだった。これで大丈夫なのかと練習不足を不安視する優也。
「中2日しかないから今回。そんな時にわざわざ練習なんか取り入れても大きな効果無くて試合前に体を疲れさせるだけだって。日本人は働き過ぎ、しっかり遊んでおかないと♪」
反対に弥一はこれを全く不安と思っていない。がむしゃらに練習を積み重ねるのは、普段の部活の練習量で充分足りている。こういうハードな日程の時はむしろ遊んで心身共にリフレッシュさせた方が効率的、イタリアや欧州では皆やっている常識だ。
試合前に厳しい練習を課すような事はマッテオも決してやらない。彼も休みを推奨するタイプの監督である。
「それじゃあ船から降りたらセーヌ川付近の美味しいレストランのお店とか行こっかー♪」
決勝を控えていても変わらずパリの美味しいグルメを堪能しようと、弥一はルンルン気分でスマホ検索し、セーヌ川近辺でおすすめのレストランを調べる。
優也は此処まで来たら、もうこのまま弥一に付き合うかと止めなかった。世界遺産を前に食べる飯というのも、また滅多に味わえるものではないだろう。
観光にグルメと彼らは決戦に向けて英気を養い、体も心も休めてリフレッシュさせれば合宿所へと戻って行ったのだった。
次の日本とベルギーの決勝戦。SNSでは日本にとっては2018年のワールドカップで大逆転負けのリベンジだという声が上がっている。
この対戦となればそのイメージを持つ者は多数居るだろう。
だがその中にはこんな声もある。
神明寺弥一とアドルフ・ネスツのミラン、ジョヴァニッシミ時代の元チームメイト同士の戦いと。
優也「急にまた観光の話になったな」
弥一「生中継のオリンピック開会式見て書きたくなったそうだよー、僕らもせっかくパリに来てるし今このタイミングしかない!ってさ♪」
大門「また深く考えず勢いだね……」
優也「それが作者のやり方だからな、というか奴はそれしか知らん」
弥一「勢いでまた何か想定外なの書いちゃいそうだよねー」
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