表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
280/652

グループBの赤い悪魔達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『試合終了ー!ベルギー強豪ひしめくグループBで3連勝!開催国フランスとウルグアイに続きメキシコも3ー0で勝利し、エースのアドルフはこの試合でハットトリックを達成!』



 フィールドの赤いユニフォームを着た選手達がそれぞれ勝利に喜び、観客達の声援に応える。フランスと並び優勝候補と評判高いベルギー。この試合でも北中米の強豪メキシコを相手に、3得点を決めて勝利。



 全てベルギーのエースで背番号11を付けるアドルフ・ネスツによるゴール。今大会ハットトリックを決めている選手は彼だけで、得点王の座をほぼ手中に収めれば注目度は日に日に増していく。



 海外の強豪クラブも彼への関心は高くなってきており、この大会を切っ掛けに移籍の可能性も出て来る。




「あー、今日のヒーローインタビューもアドルフかぁ」



「そりゃハットトリックやってるし当然そうなるだろ」



 同じチームで長い金髪の長身DFアキレス。インタビューを受けるアドルフを羨ましそうに見ている一方、短髪で暗めの茶髪のキャプテンOMFのルイは、特に関心無さそうな様子でドリンクを飲んで喉を潤していた。




「試合自体は決して簡単じゃなかった、相手のメキシコには結構攻め込まれたけどDFが0で凌いでくれたのが大きかったと思うよ。あれでベルギーに流れが来て上手くゴールを決められたんだ」



 慣れた感じでインタビューに応えていくアドルフ。3ー0で勝利したものの、試合はメキシコの方がボール支配率で上回られ、ベルギーは後手に回ってしまう。


 だが最後を決めさせず、中々点が取れないメキシコは次第に焦り、その隙を突いてアドルフはチャンスを物にしたのだ。



「中々タフなゲームだったよ、その中で勝ち点3を積み上げられたのは最高だね」



 そう笑ってアドルフはインタビューを終えると、仲間の元へと戻り改めて今日の勝利を喜び合っていた。






「……反対のグループ、日本が3連勝で首位だそうだ」



 ベルギーのロッカールームで着替えを終えた金髪の選手。物静かだが、頼れるベルギーの守護神ドンメルがスマホで日本の試合結果を見ていた。


 グループAの日本がコスタリカを3ー0で破り、ベルギーと同じく3連勝で首位。その後をアメリカが追いかける展開だ。



「日本が?いや、正直アメリカかコートジボワール辺りが来るのかと思ってたけどな。大男達に今回強いのかね?」



「知らん」



 素っ気なく返事するドンメル。別に彼が嫌いという訳ではない、口数が少ないだけであり、ドンメルを知っているアキレスは苦笑を浮かべていた。




「日本ていうとアドルフ、お前向こうの小さいのと知り合いだろ?日本の弱点とか何か掴まなかったのか?」



「掴んでないって、別にそういうつもりでこの前一緒に飯を食った訳でもないしさ」



 この前アドルフが日本の立見という、高校の連中と出会った事は聞いている。その時に元チームメイトと再会した事も。何か情報をルイは期待したが、アドルフは特にそのような情報は得られていない。



「何だ、本当に友人同士の飯だったんだ」



 あーあ、とルイは着替え終えれば両腕を上に伸ばしてリラックス。



「悪いな、そういう情報収集はあんま得意じゃないんだよ」



「まあいいよ、小さい奴が来ようが2m越えのデカい奴が来ようが結果は変わらない」



 アドルフは悪いと、自分より身長の低いルイへすまなさそうにするが、ルイはそこまで気にしてはいない。そういうのを得意としていない事ぐらいキャプテンとして、何より幼馴染として知っている。



 そんなアドルフもルイの事はよく分かっていた。



「フランスもウルグアイもメキシコも俺達を止められなかった、日本もアメリカも蹴散らしてベルギーがこの大会を制する」



「分かってる分かってる、今からそんな張り切るなよ。試合は逃げないからさ」



 人一倍負けず嫌いで愛国心の強い少年。誰よりもこの大会でのベルギー優勝を強く望み力を注いでいる、それがこのチームの司令塔を務めるルイ・デュッセルだ。


 小さくも頼もしい彼の肩をアドルフは軽く右手を置いた。



 無論その先のUー20ワールドカップ優勝も狙っており、このUー19ベルギー代表は本気で優勝が狙える、選りすぐりのエリートが集結していた。








「ベルギー3連勝だ」



「メキシコ相手に3ー0……強いな」



 日本の合宿所、大門と優也の部屋で2人はパソコンでグループBの試合をチェック。見てみればベルギーがメキシコに完勝し、グループ首位をキープ。その後を2勝のフランスが追い掛けていた。



 得失点差に相当な開きがあり、グループAの日本とアメリカ以上の差で次のナイジェリアにベルギーが大敗しない限り、首位での突破はほぼ間違い無いだろう。



 この時2人とも同じ男の顔を思い浮かべる。弥一の元チームメイトにしてベルギーのエースFWアドルフ・ネスツ。



 弥一と共にイタリアのミラン、ジョヴァニッシミで圧倒的強さを誇ったチームを支えていた力は伊達ではない。それはベルギーのプロリーグや今大会での活躍が既に証明している。



 10の国が集う中で唯一ハットトリックを決めているのがベルギーのネスツだ。




「このダブルタッチ速いぞ!」



「それだけじゃなくヘディングの高さもある、分かってはいたけどやっぱりこいつは万能だな」



 大門が動画で流れるアドルフのプレーに驚く。相手DFを置き去りにする高速ダブルタッチであっという間に抜けば、GKと1対1となり相手の肩口を掠める、弾丸シュートでゴールネットを豪快に揺らして決めてみせた。



 更に別のゴールでは左サイドからのクロスを、高い跳躍力によるヘディングでゴール。速くて巧い上に高くて強い、まさに万能ストライカーと言ってもいい。



 優也はこれを見て照皇と似たようなタイプかもしれないと、同じチームの天才FWを思い浮かべる。






「おーい、2人とも飯だぞー」



 そこに部屋の外から室の声が聞こえた。それに合わせて大門はパソコンの電源を落として、優也と共に部屋の外へと出て行く。



「悪い悪い、パソコンの動画見てたら夢中になって時間忘れてたよ」



「えー?エッチな動画でも見てたのかそれ」



「んな訳あるか、さっさと飯行くぞ」



 次の試合にも出るであろう室には集中してもらう為に、ベルギーについては大門も優也も教えず伏せておく。まだ日本の首位が確定した訳ではない。



 スウェーデンに敗れてしまうとアメリカの結果次第で、首位の座が入れ替わる可能性はまだ残っているのだから。











 グループA、日本の4戦目となるスウェーデン。此処まで2敗1分けと調子が上がらないチーム事情。決して弱いチームではない、全体的に体格が良く、守備はそれを利用した激しいプレーを持ち味としている。



 首位の日本相手になんとか勝ち点を積み重ねたいと、彼らはこの試合挑んで来るはずだ。



 だが日本も確実に首位の突破を決める為には負けられない。今回も変わらず勝ち点3は取りに行く。スタンドにいるフランスの観客達も、その日本のゴールを期待してか日の丸の国旗が若干多くなっていた。




「おー、日本のファン増えてきたかなー♪」



 試合前のフィールドでアップをしている弥一。スタンドの日の丸を見れば器用に左足でリフティングしてからパスを送る。その先に居るのは照皇だ。



「大会が始まる前は日本の評価はそこまで高いものじゃなかった、それを思えば大進歩だな」



 そう言いながら照皇は弥一のような遊び心は入れず、普通にパスを返していく。



「じゃあ更なる進歩の為に今日も一発お願いしますね照さん、4試合連続ゴール決めちゃいましょ♪」



「その前にまずは4試合連続無失点を目指す守備からだ、俺も前線からの守備は怠らん」



「献身的な守備はDFとして大助かりですねー♪」



 自らの連続ゴール記録への拘り、それよりも第一にやるべき事を照皇はよく分かっている。大事なのはチームの勝利、その第一歩として守備を疎かにはしない。



 共に攻守で記録のかかる日本の天才2人はパスを回して、共にアップを完了させていく。







 同じ頃、グループBのベルギー対ナイジェリアの試合も始まろうとしており、この試合もアドルフは出場。



 この日に両グループの首位が決まり、大会の優勝を争う2チームが決定する。それがどのチームとなるのか、両方の試合は同時にキックオフの時を迎えようとしていた。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ