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フランスとの触れ合い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 Uー19フランス国際大会の初戦、日本はアメリカを相手に1ー0で逃げ切り勝ち。試合後の会見でマッテオは記者から、あの状況で逃げ切りは消極的だったのでは?と質問されていた。



「あの状況で最適な手段を取ったつもりです。選手達も一つの方向へ向かいそこに一体感が生まれて全員逃げ切るサッカーへ明確に向かう事が出来て、それが今日結果に現れたというだけですよ」



 全員があの日本のサッカーを良いと思ってはいない。1点を取ればそのまま攻めずに時間を潰し続けてひたすら逃げる。SNSでも賞賛の声があれば、批判の声もあったり人によって感想はバラバラだ。



 しかし結果は日本の勝利。結果が出ている分、賞賛の方が大きくアメリカに負けていたら圧倒的に批判の声の方が大きくなる所だっただろう。




「照皇君は神明寺君からの見事なゴールでした。あの動き出しはもう来るという予感がありましたか?」



「もう来るというよりも彼ならば、そういうパスを出して来るという予感はありました」



「神明寺君の方はいかがでしょうか?」



「あー、僕の方は照さんなら反応してくれると思って出してましたねー。おかげでアメリカの裏スペース突けたんで流石だなぁと思いましたよ♪」



 記者は先制ゴールとそのアシストを決めた弥一と照皇の2人に質問。あの時のゴールを振り返りつつ思っていた事をそれぞれ話していた。




 この後も会見でそれぞれ話していき、日本の初戦を勝利で終えたこの日は終わりを告げる。








 試合のあった日から一夜明け、今日のUー19日本は完全休養。この辺りのスタイルは立見と同じであり、選手達には存分に体を休めてもらい疲れを取ってもらう。



 中二日で今大会は試合が行われていくので、休めるうちに休んでおいた方が良いと大会前からマッテオがそのスケジュールを決めていた。試合に出ていた選手達はそれぞれ部屋でゆっくり休んだり、軽い散歩に出て気分転換と過ごし方は人それぞれだ。



「優也ー、大門ー、パリ観光行こうよー♪」



 私服へと着替えた弥一は観光する気満々で、優也と大門を誘って初日に出来なかったパリ観光へと向かう。






 パリの凱旋門、正式名はエトワール凱旋門。高さ50m、幅45mと壮大な門は3人が揃って見上げると、より巨大に感じられた。



 凱旋門の展望台から眺めるパリはまさに最高の景色を誇り、弥一も登ろうと言い出したが大門が凱旋門についてスマホで調べると、登るにはチケットを買わないといけないらしい。



 学生にとって予算は限られているので、此処は外から凱旋門を眺めるだけにしておこうと、3人はその門をしばらく見てから再びパリ市内を移動。





「おおーい、そこの少年達ー!」



 凱旋門から移動し始めて、すぐ辺りに弥一達へ声をかける者が居た。日本語ではない、此処はフランスなので日本語を使って話しかけて来る者は少ない。



 弥一の耳からそれは男によるフランス語だと分かった。




 男は40代ぐらいで恰幅の良い体型をしている。フランス語に加え日本人と違う顔立ち、十中八九この男はフランス人と見て間違い無いだろう。



「君と君、昨日の日本とアメリカの試合に出ていただろ?凄かったよ、あんな大男達とそんな小さな体で渡り合うなんて!」



「あはは、Merciありがとうー♪」



「お、君フランス語行けるのかい?」



「少しはねー、イタリア語の方が得意だけど♪」



 弥一は男とフランス語で会話、互いに笑い合って雰囲気は和やか。それは見ている大門や優也からも伝わって来る。



 フランス人の男は昨日の日本対アメリカの試合を観戦していて、弥一と優也のプレーをその目で見ていた。大男揃いのアメリカが有利だと思われたが、蓋を開けてみれば日本が上手く戦い、大きな体の相手を掻い潜り勝利をその手に収める。男にとってそれが衝撃だったのだ。




「今日は観光かい?さっき凱旋門を見てたようだけど」



「うん、パリを観光♪とりあえずお腹空いたから何処かで何か食べようかと移動してたんだー」



「そりゃ丁度良い!是非うちの店来てくれよ、サービスするからさ!」





 男の名はグレゴリー、パリ市内でパン屋を妻と共に経営して暮らしている。大の日本好きで何度か日本へ観光に行く程の親日家だ。



「フランスのパン、ていうとやっぱイメージとしてはフランスパンか」



「だね、そのイメージがやっぱり大きい」



 優也と大門は共にフランスのパンと来れば、イメージとしては細長いパンで日本でも馴染みあるフランスパン。それが真っ先に頭に思い浮かんでいる。



「甘いねー、2人とも。フランスはもっと色々パンあるんだよ?クロワッサンとかブリオッシュとかパン・オ・ショコラとかさぁ」



「クロワッサンは心当たりあるが後の2つがピンと来ないな」



「ブリオッシュって何……!?」



 フランスパンのイメージが強い2人に、弥一は他に美味いフランスのパンについて教えていく。美味しい食べ物に目がない彼はフランスの様々なパンも知っていて、名前を言っていくと弥一は益々パンが食べたくなってきていた。




 グレゴリーの案内で来たパン屋は小さな町のパン屋という感じの店構え。共に店内へと入ればグレゴリーと同じく、40代程の恰幅の良い女性が出迎えてくれた。



「アドリーヌ、昨日凄かった日本人の選手がうちの店来てくれたぞ!」



「まあ本当!?あんた達あのデッカいの相手によくやったねー、あたしもびっくりだよ!」



 妻のアドリーヌも試合観戦にグレゴリーと共に来ており、日本と比べてサッカー熱の高いフランス、そのサッカーへの関心が分かりやすく現れていた。



「俺、試合に出てないけど此処に居ていいのかなぁ?」



「日本選手なんだから大丈夫でしょー」



「駄目だと言われていないし構わないんだろ」



 試合に出てたのは弥一と途中出場の優也であり、控えキーパーの大門は藤堂がずっと出続けたので出番は無かった。自分まで招待されていいのだろうかと遠慮していたが、グレゴリーは特に何も言ってないので多分大丈夫だろう。




「丁度焼き上がったクロワッサンで良ければ食べてみるかい?」



「良いの?いただきまーす♪」



 アドリーヌから焼きたてのクロワッサンを勧められ、焼き上がったクロワッサンから伝わるバターの芳醇な香りが鼻に伝われば、早く食べたいと食欲を刺激される。



 食べたい欲には抗えず、弥一は焼き上がったばかりのクロワッサンにかぶりつく。表面はサクサクしており中身はふんわり、小麦本来の甘味が口の中に広がってバターの風味が絶妙に伝わればそれは美味しさとなる。



「フランスのクロワッサン美味しい~♡朝これが良い~♡」



 朝食のパンに良いと、弥一は本場のパンの味に夢中となって食べ進めていた。




「こんな美味いのかクロワッサン……とりあえずもう一個」



「美味い……!俺ももう一個」



 優也と大門もクロワッサンを口にすると共に、その美味しさに一個じゃ足りないと感じてもう一個おかわりで食べている。




「流石若いのは食べっぷりが良いな。遠慮せずどんどん食え!そんで次の試合も頑張れよ、決勝で我がフランスと当たる事を願うからさ!」



 勿論フランス国民としてグレゴリーはフランスを応援しているが、日本も同じぐらい応援しておりフランスとの決勝を望んでいる。弥一達とてそのつもりだ。



 最も当たった時はフランスを倒しての優勝を狙っているが、それはわざわざ口に出して言う事ではない。









「ただいまー、これお土産ー♪」



 弥一達が合宿所へと戻って来ると代表の皆へと土産を持って来る。グレゴリーとアドリーヌ夫妻からパン・オ・ショコラに焼き菓子と持たされていて、皆で食べようと振舞われた。



「カヌレ美味ー!最高やなー!」



「いーや、マドレーヌも捨てがたいぞ」



 想真がカヌレを美味しく味わうと、室はマドレーヌも美味いとフランスの焼き菓子を堪能。




「お前ら……少しは節制しとけ」



 照皇は少量ならば、と焼き菓子を一つだけ食しておく。








「日本2位か……」



 カヌレを食べつつパソコンでフランス国際大会のホームページを見ていた藤堂。そこには日本の居るグループAの情報が出て、日本は昨日アメリカに勝って勝ち点3を積み上げ、得点1、失点0だ。



 その日本を上回りグループAの首位に立つ国があった。



「コートジボワールがコスタリカを3ー1で下して得失点差で向こうが上になってますねぇ」



 パン・オ・ショコラを味わう白羽がモニターを覗き込み、グループAの首位に立つコートジボワールの文字と国旗が見えていた。日本がアメリカに僅差で勝利したのに対して向こうは2点差を付けての勝利。よって得失点差でリードされていた。




 アメリカを下した日本だが、この大会はそれぞれのグループ首位でなければ優勝を争う決勝戦に進出する事が出来ない。



 得失点差で負けている日本。直接対決でこのコートジボワールに勝つ必要が出て来て、次の試合がまさにその試合となり、日本としては初戦以上に負けられない試合となってくる。

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サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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