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天才達の共演

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 前半0-0で終わり後半戦、アメリカのキックオフで試合が開始される。



 司令塔のロバートがボールを持つと、アメリカ選手は此処から一気に日本ゴールへと走っていた。後半は日本をパワーで圧倒して、ゴールを奪うという作戦で行く。競り合いになればこちらの物、狙いは中央突破だ。



「(そう何度も何度もパワーでやられ放題でいられっかよ!)」



 弥一から足元の扱いが、ロバート以外の選手は大半そうでもないと聞かされ、政宗はまともに競り合いには行かず、狙いはロバートからのパスを受け取る選手。



 パスをもらったジョンにいきなり足元のボール目掛けて足を出し、奪いに行った。



「……!」



 これに慌ててボールを足裏でキープして、政宗を避けようとしているジョン。だが扱いが甘い。レベルとテクニックの高い選手達が集う、八重葉学園の中で日々鍛えられた政宗から見れば隙のあるボール捌きだ。



 向こうがパワーの競り合いへ持ち込んで来る前に、政宗がジョンからボールを足で弾くとボールは転がって白羽が取る。



『止めた仙道兄弟の弟政宗!アメリカを攻め切らせない!』



『中盤で止めるのは大きいですね、これカウンターのチャンスですよ!』




 すかさず白羽は右サイドからドリブル。そこから中央の光輝へボールを送ると、そのまま右サイドを走る。この動きを見て、アメリカの左SDFビルはワンツーで白羽に来ると読み、白羽の方へと走って向かう。



 折り返しのパスが来る、そう思って待ち構えるが光輝からのパスは飛んで来る気配が無い。



 すると光輝の方は右に気を取られて左のスペースが空いているのを見つけ、左へと大きく蹴り出してサイドチェンジ。これを左から素早く上がっていた月城が追いつきトラップ。



 アメリカの守備を左右に揺さぶっていく日本。右から左へとアメリカは守備に追われながらも、持ち前の身体能力で食らいつく。



 だが月城を捕まえるのは簡単ではない。ジェフがボールを持つ月城へ迫れば、すかさず中にいるFW2人をターゲットに低いボールを左足で送る。



 ハイボールは出さない。それはゴール前に聳え立つ巨神デイブの餌食となってしまうからだ。




 このグラウンダーに素早く反応して走る照皇。右足のボレーで合わせてアメリカゴールへとシュート。



 トーマスの反応はこれに間に合っていない。動き出した時にはボールはゴール左隅へ迫って飛んでいる。



 今度こそ先制だと日本選手達の頭がそれを過ぎった。だが先制ゴールは実現させないと言わんばかりに、長い脚がボールへと伸ばされ、シュートを脚に当てていた。



 デイブが反応して懸命に右足を伸ばして当てた成果だ。当たったボールはコースが変わると、左のゴールポストをガンッと叩き弾かれる。ボールが弾かれて混戦になると、かろうじてジェフが蹴り出してクリアしていく。




『あーっと日本!月城から照皇へと八重葉ホットラインで繋ぐもゴールポストに嫌われた!非常に惜しい!』



『白羽君や三津谷君でアメリカのDFを揺さぶってのチャンスでしたが、後一歩でしたね』



「すまん!あの絶好球を決めきれなかった!」



「いっスよ、次行きましょ次!今ので結構デカブツ達をビビらせましたし!」



 照皇は今のチャンスを決められなかった事が、己の中で悔いとなって残る。チャンスを演出してくれた月城に申し訳ないと謝るが月城は気にせず、次行こうと切り替えを見せていた。



 少し前までこの2人の仲が良くなかったのが嘘のようだ。




「(やはり日本は技術とスピードが高い……特に左の2番は要注意、彼のスピードで抜かれれば一気に危なくなる)」



 アメリカの監督はこれを見て月城にもっと注意するようにと、選手達へ伝え日本の左に対して警戒する。




「でっ!」



 再び日本ボールでアメリカゴールを目指し、光輝がボールを持つがアメリカの数人がかりのプレスに囲まれ、ボールを奪われてしまう。



 天才的な抜群のテクニックを誇る光輝だが、体格ある選手達にあんな囲まれては彼をもってしてもキープは困難だ。



「ディレイ!」



 ゴール前から藤堂がフィールドの選手達へ向かって吠える。



 此処はなんとしても攻撃を遅らせろと、電光石火のカウンターに持って行かせるなと。




 しかしアメリカはロバートへ託すと、テクニックとパワーの両方を兼ね備えた個人技で日本の守備をこじ開けに行く。想真が競り合うも、長い腕のリーチで近づけさせてもらえない。



「佐助10番!大野9番!」



 藤堂の指示で佐助、大野はそれぞれのFWへとマーク。本当なら弥一にもマークを頼むつもりだったのだが、彼の姿は藤堂から見てゴール前に大勢の敵味方の選手が混じって来ていて、小柄な弥一を見つける事が困難となってしまう。



 いちいち彼を探し当てて指示では大きな時間のロスになってしまうと、藤堂は瞬時に判断した。




 ゴール前へのパス、そう見せかけてロバートの判断は違う。FWへと注意を引きつけておいて本命は走り込んで来る3番、オーバーラップしてきたアーロンの勢いあるパワーミドルシュートが狙いだ。



 ゴール前の混戦。そのどさくさでアーロンはオーバーラップを仕掛けて来て、日本ゴールに迫る。ロバートはアーロンが近づいたタイミングで、地を這う速いスピードのパスを送った。



 この形でのゴールもした事があり、アメリカが得意とする得点パターンの一つ。CDFだがミドルの精度が高めのアーロンが、ロバートから送られたパスに対してワントラップしてからの強烈なシュートでゴールを狙う。頭ではそのイメージは既に出来上がっている。




 グラウンダーのパスが自分の元に来る。イメージ通りだとアーロンはトラップ。





 だがボールの感触が中々彼に伝わって来ない、何故だと思う間もなく原因はすぐ目の前にあった。



「received!(もらったー!)」



「!?」



 わざわざ英語で相手にも分かるように、弥一は叫びつつインターセプト。ロバートの本命がアーロンへのパスという事は心を読んで見抜く。そこから弥一の行動は速く、周囲の大型選手を隠れ蓑にして自らの身を隠せば、アーロンにボールが出た途端に姿を見せてのボール奪取。



 これにアーロンが驚いてしまっている間、弥一はすかさず大きく前へとボールを蹴り出して自らも大きく走り出す。その動きは以前に月城が立見相手に行っていたラン・ウイズ・ザ・ボールだ。(スピードアップしながらボールと一緒に走るという意味)



 弥一は混戦から抜け出し、ハーフウェーラインを突破してアメリカゴールを目指す。



「月城走れー!GO!」



「(分かったっての!声でけぇよ!)」



 すると左サイドに向かって弥一が月城へと走るよう大声で指示。月城は声が大きいとアメリカに作戦がバレるだろうと、そう思いつつも左サイドを走る。



 その月城の心配は的中してしまう。



「2番来るぞ2番!」



 月城、GOという弥一の言葉でアメリカの方は理解した。弥一は左を使って月城のスピードで、一気にカウンターへと持って行くつもりだと。



 ジェフは月城の走るコースを塞ごうとその前に立つ。




 それがわざと声を大きくして分かりやすく伝えたりと、アメリカに月城へ注目させた弥一の罠とは誰も知らずに。




 アメリカの注意は左サイド、此処で弥一が狙うはアメリカDFラインの裏。ターゲットは照皇だ。



 弥一は迷いなくアメリカDFへと向けて、右足で強めにシュート撃つようにボールを蹴り出した。



 球の勢いは速くDFの間を通り抜け、月城に意識が向いていたDF陣は反応が遅れてしまう。その中で弥一の出した、シュート並に速いスルーパスへ反応して走るのは照皇。



 選手権で戦ったライバル2人。互いに学校は違えど2人とも何となく分かっていた。



 彼ならこの速いボールに反応し追いついて来そう、彼なら此処に出して来るだろうと。




 天才2人が頭に思い描いたプレーはピタリと合っていて、照皇はアメリカDFラインの裏へと飛び出し、弥一の出した速いボールに追いつこうとしている。



『神明寺アメリカDFの裏へ絶妙なスルーパス!照皇一気に抜け出したー!』




 だが相手も諦めていなかったのが1人居る。アメリカの巨神デイブが照皇を懸命に追っており、2m10cmによる大きなストライドの走りで照皇との距離を縮めていく。



 このままでは届かない。そう思ったデイブは反則覚悟で照皇のユニフォームを後ろから掴もうと、太く長い右腕を伸ばした。



「(一度外しておいて此処も外す事など出来るか!)」



 照皇は今度こそ決めてやろうという、点取り屋としての強い気持ちを持って、右足を振り上げず短いモーションでボールを蹴り出した。



 インステップキックではおそらく、伸びて来たデイブの右腕に捕まりフォームが崩れ、まともに撃てなかったかもしれない。相手GKトーマスも優秀だ。



 なのでモーションは極力短い右足のトゥーキック、これを照皇は咄嗟に蹴ったのだ。トーマスから見ればシュートモーションも予備動作が非常に読みづらい。そのせいか、シュートに対する反応は遅れてしまっていた。



 デイブの方もユニフォームを掴んだ時には照皇は既にシュートをした後だ。




 ボールはトーマスの伸ばした右腕を掻い潜り、ゴール左下隅へと入ってゴールネットを揺らしていた。




 その瞬間、満員のスタジアムから割れんばかりの大歓声が響き渡る。




『入ったぁぁーーー!日本先制!今大会初ゴールは照皇誠によって生まれたー!』



『神明寺君のスルーパスから照皇君のシュート、いやぁどっちも凄いですね!カミソリのような鋭いパスからタイミング取りづらいトゥーキックの組み合わせはDFやGKにとって鬼のような組み合わせですよ!』




「っし……!」



「ナイスゴールー!照さん流石ー!」



 照皇はやっとゴールを決めた事に小さく右手を握り締めてガッツポーズ。弥一は後ろから照皇へと抱きつき祝福。



 高校サッカー界を代表する天才2人の共演によって、日本はついにアメリカの巨神が守るゴールから1点をもぎ取る事に成功したのだ。

照皇「アメリカの屈強な守備に苦戦が続いたが、どうにか1点は取れたな」


弥一「やっぱ照さん頼りになりますねー♪」


照皇「あそこはストライカーとして決めなければ駄目だろう、外したらそれこそ流れを向こうに渡す事となってしまう」


弥一「アメリカに流れは渡したくないですよー、あんなパワーある人達乗せちゃったら怖い事なりそうですし」


照皇「だな、1点は取れたが無論まだまだ気は抜けない。隙あらば2点、3点と取りに行くぞ」


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