Uー19フランス国際大会 日本VSアメリカ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「陽姉、もう始まるよー」
「分かってるー、ちょっと待ってー!」
場所は日本、東京都内にある一戸建ての趣ある古風な家。此処は輝咲やその家族が暮らしている家で、今日は従姉妹である道田陽子が泊まりに来ていた。
輝咲はスマホを見ているとその時間が迫ってるのに気付き、洗面所の方にて風呂上りのドライヤーで髪を乾かし、中の陽子を呼んでいた。陽子は返事を返しつつ髪を乾かし終えれば、輝咲の居る部屋へ慌ただしく向かう。
「フランスだと向こう7時間の時差あるから今は昼だよね?」
「そうだね、フランスの時間で昼12時のキックオフだから」
今の時間は夜の7時前。日本の方がフランスよりも7時間進んでいるので日本が夜を迎える頃、フランスの方は午後を迎える直前だ。
これが向こうでナイターゲームだったら、夜中に夜更しでもしないと試合を見れないが今日のこの時間なら問題なく見れる。輝咲は自宅で従姉妹の陽子と共に、Uー19日本代表の試合を日本から見る事となったのだ。
2人がテレビの前に座ると、画面の方ではスタジオで、アナウンサーや専門家にスペシャルサポーターとして選ばれた芸能人と色々な人が集まり、今日の試合について話している。
『この世代でかなり優秀な選手達が集まりましたが相手はアメリカですからねぇ、向こうの高さやパワーの前に日本は相当苦しめられると思いますよ』
専門家は高さやパワーで優れるアメリカに相当苦戦し、負ける可能性は相当あると予想。日本がそういった相手に弱いので、そんな予想となっているのかもしれない。
「もうー、日本を応援するんだったら勝ってくれるぐらい言ってくれればいいのに!」
「まあ専門家として迂闊に根拠も無く言えないんだろう。それに今日対戦するアメリカはオランダとも引き分けた程に強いからね」
陽子は専門家の辛口な予想に不満そうで頬を膨らませており、輝咲はそれを見て苦笑しつつアメリカが強いと理解している。
「けど彼が試合に出るなら、何かやってくれる。僕はそんな気がするんだ」
そう言って輝咲が見つめる先。テレビが映すのは場面変わって、現地フランスで行わる開幕戦のフィールド。そこでアップをしている弥一の姿が映し出されていた。
「ほんと……あんたがその神明寺君とお付き合いとはねぇ、知った時はびっくりしちゃった。あの海で本気で攻めて口説き落とせばよかったかー」
去年の夏に友人と共に千葉の海へ出かけ、ナンパされるトラブルとなってしまうが弥一、フォルナ、想真によって助けられてそれがきっかけで、彼らと交流を深めていた陽子。
まさかそこから輝咲が弥一と付き合う事になるとは思ってなくて、去年にもっと彼と親しくなるんだったかと陽子は少し後悔していた。
その輝咲は画面に映る弥一を見つめ、日本の勝利を願っている。
場所は変わりフランス。会場には多くの観客が入って、試合開始前から早くも盛況を見せていた。
所々で「U・S・A!U・S・A!」という声が聞こえていて、アメリカのサポーターが此処フランスへと駆けつけて来たらしい。
テレビではアメリカのサポーターがインタビューに応えており、「勿論こっちが4ー0で勝つさ、日本の選手を見たけど皆ほとんど細くて小さい。あれじゃアメリカのパワーには耐え切れないよ」とアメリカの圧勝を予想していた。
現地へとわざわざ応援に来てくれる、サポーターというのも強みの一つ。今の所下馬評ではアメリカ有利だ。
「アウェーって感じですねー、USAコールがまだ聞こえてるしー」
日本のロッカールームでユニフォーム姿となった弥一。色はダークネイビーを基調として胸には代表の証である八咫烏のエンブレム。
弥一は本番の試合で代表のユニフォームに袖を通すのはこれが初めてだが、彼の様子に緊張は感じられない。むしろベンチスタートである大門の方が緊張しているぐらいだ。
「気をつけろよ、ブーイングとかそういうのが飛んで来るのも覚悟した方が良い」
大門と同じくベンチスタートの辰羅川。今日のスタンドの感じだと日本がアウェー寄りなので、向こうのサポーターからのブーイングは想定しておいた方が良いと、弥一にアドバイスしておく。
選手に対して相手サポーターからのブーイングは、心理的なプレッシャーがかかる事があり、時としてこれがプレーを狂わせていく。気にしないという図太い選手がいれば気にしてしまう選手も居て、効果は人によってそれぞれだ。
「さて、今日が日本のフランスでの初陣。これはただのスタートではありません、来年のUー20ワールドカップ。それに向けたスタートです」
マッテオの口から出たUー20ワールドカップという言葉。それを聞いて日本の選手達は気が引き締まってくる。
来年に始まる戦い。この大会で勝って勢いをつけると、マッテオは会見で答えていた。
今回のUー19フランス国際大会は来年に繋げる重要な大会。それには今日の初戦となるアメリカを乗り越えなければならない。
「日本は大きな相手に弱い、今日でそのイメージを覆しておきましょう」
「よし、行くぞー!」
キャプテンマークを右腕に巻いた藤堂の掛け声と共に、日本のイレブンは控え室を出て選手の入場口前に審判団と共に控える。
日本が一列となって並んでいると、そこにアメリカ代表もやってきた。彼らもユニフォームを纏い白を基調として、胸にUSAの文字が入ったエンブレムを付ける。
彼らが隣に立つとその高さ、そして体格が分かる。平均身長180を超える大男の集団でいずれも強靭な肉体、日本人には無い要素を彼らは持っていた。
やはりその中で一際目立つ存在。身長2m10cmを誇るアメリカの巨神デイブ・アーネスト。
背番号6の彼は同じ背番号を背負う弥一と並んで立っていた。
「(でっかぁ~、本当に巨人みたいだ)」
今大会最も小さい弥一と今大会最も大きいデイブ。その身長差は60cm程あり大人と子供どころではない。まさに巨人と小人だ。
「君、ヤイチ・シンメイジだろ?」
「え?僕を知ってるの?」
突然その巨体から想像つかぬ高い声が弥一の耳に聞こえた。今のはデイブから発せられた物であり、彼は弥一を見下ろしている。見下しているという訳ではない、恵まれ過ぎた体格のおかげで、彼はそうしないと大抵の人と話せないだけだ。
デイブは英語で話しかけて来て、それに弥一も英語で返していた。イタリア語だけではなく英語も弥一は日常会話ぐらい話せる。
「日本の高校で伝説のゴールを決めた事はアメリカサッカー界でも有名だよ。あんなグレイトなゴール俺には真似出来ない」
「光栄だなぁ、まさかアメリカの方でもそんな有名になってるなんてー」
弥一の決めた八重葉戦での決勝ゴール。後輩達に影響を与えただけでなく、遠く離れたアメリカの耳にまで届く程となっていた。
「でも今日はそんなゴールは1本も決めさせない。俺が全部弾き返すからね」
そう言うとデイブは親しげな笑みから勝気な笑みへと変わる。彼も国の代表としてこの場に立っているからには、目指すは勝利のみ。当然この試合も日本を倒すつもりだ。
「(全部弾き返す、ねぇ。それこっちのセリフだけどね)」
同じDFのポジション、デイブと同じく弥一も目指すのは同じ。デイブが言っているように攻撃を全部弾き返して勝つ。
互いにそれを実行し、実現させようと今日戦うフィールドへ共に進み始めた。
『Uー19フランス国際大会、ついに今日開幕戦を迎えます。若き日本代表はこの大会でどんな活躍を見せてくれるのか!?』
『楽しみですが相手は今大会1番の高さを誇るアメリカが相手ですからね。相当苦しむんじゃないでしょうか』
ダークネイビーのユニフォームの日本、GKは黄緑。
白いユニフォームのアメリカ、GKは黄色。
Uー19日本代表 フォーメーション 3ー5ー2
照皇 室
10 9
月城 三津谷 白羽
2 8 7
仙道(政)八神
14 5
大野 神明寺 仙道(佐)
3 6 4
藤堂
1
Uー19アメリカ代表 フォーメーション 4ー3ー3
キース ウッドマン リチャード
9 10 11
ジョン ロバート ジェームズ
7 8 17
ビル アーロン デイブ ジェフ
2 3 6 4
トーマス
1
フィールドでは審判団と共に、互いのキャプテンがコイントスで先攻後攻を決めている。日本からは藤堂、アメリカからはFWのリチャードがそれぞれ出ていた。
コイントスの結果、先攻は日本が取る。
「こっちからの攻めだ、向こうのパワーに皆ビビるなよ!」
「「おお!」」
日本の円陣で藤堂は力強く声を出していき、皆もそれに続く。
「日本GOとかやってくれないんだなぁ~」
「立見やないんやから当たり前やろ、はよポジション行くで」
弥一が小声で呟いていると想真に急かされ、小走りでDFのポジションへと向かっていた。
各自がポジションにつきセンターサークルには、照皇と室の高校最強コンビのストライカーが揃って立っている。日本のサポーターはアメリカの守りを掻い潜ってのゴールを期待している事だろう。
「(初っ端から攻めるぞ)」
「(了解しましたわー)」
その中で照皇は後ろに居る光輝へと合図を送っており、それは開始早々から攻めて奇襲をかけるという物。これに光輝は頷いて了解、と返していた。
フランス時間での昼12時。時刻がそこに達した瞬間、主審の笛は高らかに吹き鳴らされる。
室がちょんと蹴り出すと照皇は後ろへ送る。そして2人は共に前へと上がって行く。
『さあ、日本対アメリカの開幕戦がついにキックオフ!アメリカのパワーに対して日本はどう迎え撃つのか、照皇から戻されたボールを三津谷が持つ!』
『三津谷君は天才的なテクニックを持ってますからね、チャンスを是非演出してほしいです』
光輝がボールを持つと、そこに前線から襲いかかって来るアメリカの選手達。猛烈な突進に対して、光輝は素早く左へとボールをアウトサイドではたく。そこには月城の姿があった。
月城にもアメリカの選手が迫るがボールをワンタッチで光輝へと返し、綺麗なワンツーで躱して行く。
光輝は更にこれをダイレクトでゴール前の室へ送る。
これにアメリカの選手は間に合っていない、光輝も室も行けると感じており室にこのボールが通った。
その瞬間、巨人である彼の前に大きな壁が立ち塞がる。彼は数歩程で一気に室との距離を詰めていた、それは人並み外れた体格。そこから来る大きな歩幅が可能にしてしまう。
そして室へと肩からぶつかるショルダーチャージ。彼からすれば普通の選手と変わらぬチャージのやり方だが、この巨体で繰り出すと想像を絶するパワーが込められた当たりとなり、必殺技と化していく。
「うわああ!?」
デイブのショルダーチャージが炸裂すると、日本の巨人である室の体が浮き上がる程の衝撃。室は巨神の一撃の前に吹っ飛ばされてしまった。
ホイッスルは無い。
『デイブ強烈なタックルー!195cmある室の体をも浮かせるとはなんというパワーだ!!』
『本当にこれで18歳ですか!?とんでもないなぁ……』
これに照皇が素早く寄せにかかりボールを奪い返しに行くと、それに気付いたデイブは前へと大きくクリア。
デイブの右足で蹴られたボールは大きくグングンと伸びて行く。最終ラインの弥一にまで届き、ボールをキープ。
「(ゴール前でっかい壁だなぁ、あれはどうしようか……)」
規格外の巨体に規格外のパワー。日本の勝利にはアメリカの巨神を超えなければならない。
弥一はボールを持つとそのままドリブルを開始した。
優也「飛んだな、室の奴」
大門「自分で飛んだんじゃなく飛ばされたね……あのパワー本当凄い!」
弥一「漫画やゲームの世界だよねぇ、あれって。本当何を食べたらあそこまで大きくなれるんだろうねー?」
優也「やはり物をいっぱい食べるとか、じゃないのか?アメリカの食べ物のサイズは日本と比べて大きいと聞くからな」
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