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攻撃の1年達への試練

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 去年まで優勝候補筆頭と言われてきた桜王。今年は主力だったUー16の蛍坂に原木、DFの要である榊もおらず真島同様戦力ダウンが囁かれたが、2年SDF冬夜が奮闘してチームを引っ張り、今年からキャプテンとなったGK高山も好調。



 彼らを中心に昨年控えだった選手達が成長してスタメンを勝ち取り、立見や西久保寺に次いで大差のスコアで相手を下していき、今日の準々決勝を迎える。




「今年の立見はひと味もふた味も違う、だが付け入る隙はある。攻撃では氷神兄弟、石田に目が行きがちだが緑山という立見の10番。彼のアシストが目立っている、緑山を徹底マークして自由にさせるな」



 桜王のロッカールームでは監督が立見対策について話している。今大会破竹の勢いで勝ち進む立見。だが桜王はその勢いに飲み込まれる気など無い。



 立見で今厄介なのは明。この選手さえ封じれば、立見の攻撃はある程度封じられるはずだと桜王の監督は見ていた。



「では、マンマークする者は……」







「広西冬夜、こいつが桜王で一番厄介な選手だ」



 立見の方のロッカールームでは優也から1年の攻撃陣に対して、自分のスマホを見せると冬夜のプレー動画と共に説明。



「高い走力を持っている上にボール技術が優れ、元FW出身で他のDFよりも得点力が高い。GKの高山と共に今の桜王を支える要と言っても過言じゃない」



「なるほど、攻撃の時は彼のサイドはあまり狙わない方が良さそうですね」



「ああ、甘いドリブルやパスはバシバシとカットされる。あいつはそういう所を見逃さない」



 優也の説明を真剣に聞いて頷き、半蔵は冬夜の守るサイドへ勝負はなるべく避けた方が良いと考えた。下手に仕掛ければそこから奪われて、彼のスピードを利用したジャックナイフのような鋭いカウンターが飛んで来る恐れがあるからだ。



 スピードに関しては優也だけでなく、冬夜と昨年試合した立見の者なら皆知っている。今年もそれに苦しめられる事になるのかもしれない。



「にしても歳児先輩、その広西って人よく知ってる感じですね?」



「優也は広西と幼馴染なんだよ。だからプレーだけじゃなく性格も知ってるから」



「へえ~、ていう事は向こうも歳児先輩をよく知ってるってなっちゃいますね」



 優也が冬夜をよく知っている事が気になった氷神兄弟。そこに昨年その事情を知った摩央から2人は幼馴染だと説明を入れておく。




「それも彼は右、左とどっちのサイドでも行けちゃうからね~。今日は何処になるんだか」



 どちらのサイドでも攻守でプレー出来る事を弥一も見てきており、今日はどっちになる予定か、そこは試合が始まってみないと分からない。



 最後に細かい作戦の打ち合わせも終えると、立見は準々決勝のフィールドへと足を踏み入れる。







『東京総体予選も準々決勝、立見VS桜王と昨年の決勝を戦ったカードが此処で再現。去年と違い今年は東京代表を争う試合で両チーム負けられません!』



『立見にとっては真島を超えた後の桜王ですからね、中々厄介な組み合わせのトーナメントに今年はなっちゃいましたよ』




 両チームがフィールドへと現れれば、注目の試合とあってスタンドの席は満員で埋まっている。まるでこれが決勝戦でもあるかのような盛り上がりだ。



 立見と桜王、両者の応援団の声援が晴天の下で重なりぶつかり合う。





「名門との連戦になっちまったけど俺達のやる事には何の変化も無い、試合に勝つだけだ」



 円陣を組む立見。キャプテンの間宮は改めて自分達のするべき事を言って、明確にする。



「この試合も勝つ!立見GO!」



「「イエー!!」」




 何時もの儀式を終えれば各自散ってポジションについていく。




「(冬夜は今日……右か)」



 何時も通りベンチスタートの優也。桜王の選手達を見ていけば、その中で冬夜の姿はすぐに見つける事が出来た。



 今日の冬夜は右SDFで多分この後に出て来るであろう、優也を意識してのポジションかもしれない。





 ピィーーー




 立見のキックオフで試合はスタート。一旦後ろへと預けて弥一まで戻すと、その弥一の足が思わず止まる。



「(明に冬夜がマンマーク……)」



 これには弥一だけでなく優也も気付く。特定の相手選手に対して常に張り付き、1対1で守備を行う守備戦術の一つ。



 明には2人ぐらいマークが行くかと予想されたが、人数をそこまでかける事なく冬夜1人に明の相手を任せる。これは事前に桜王の方で決められた作戦だ。



「(奪える!神明寺から奪い取れば一気にチャンス!)」



 弥一が止まっているのをチャンスと見て、桜王の前線選手がボールを取ろうと向かって行く。



 だが迫って来ていたのは分かっていた。弥一は相手のプレスをボールと共にするりと躱し、右サイドの詩音へと斜め前方目掛けて大きく右足で蹴り出した。



 中盤が密集地帯となっているので、途中にカットされる危険性あるグラウンダーは避けて、高いボールによるパスで正確に送られていく。



 しかし相手は東京トップクラスの桜王。DFの寄せは速く、詩音がこのパスを受ける前にDFがジャンプして頭に当てれば、詩音がボールを持つのを阻止。



 後はセカンドボールとなった球を拾って桜王の反撃に移るだけだが、弥一もただ送った訳ではない。



 そう来るだろうと思い、あえて受け手に厳しいボールへの鋭い回転をかけておき、ヘディングでカットしたはずのボールは正確に前へは行かず、後ろへと流れてしまう。



『神明寺から長いボールが出て右サイドの氷神詩音、しかし桜王DFがこれを読んでクリア!』



『密集地帯を避けようと神明寺君、上を取って来ましたが桜王も流石に簡単には通しませんね』




 本当はタッチラインに逃れてクリアのつもりは無い。立見にゴールから近い位置のスローインはさせたくなかった。




「ゴール前気をつけろ!」



 桜王ゴールを守る高山がDF陣へと声をかける。彼らもあの位置のスローインが何を意味するか分かっていた。





「お~お~♪立見の人間発射台~♪今日もぶん投げて何時かはギネス記録更新だ~♪」



 スローインの時に作られた応援歌が立見の応援から流れていく。その人間発射台と言われる人物。



 大型DMFの川田が両手にボールを持ち、助走距離を取っていく。




「(何時からあんな応援歌出来たんだ……)」



 歳児タイムに続いて知らぬ間に作られていた、立見の人間発射台こと川田への応援歌。ベンチでそれを聞く摩央は誰がこれを作ったのか気になっていた。





「どらぁぁーーー!!」



 気合の雄叫びから川田は助走で勢いを付けて、思い切りボールをゴール前へと放り投げ、まるでクロスを蹴ったかのように高く上がった。



 これに飛ぶのは192cmの長身ストライカー半蔵。DF1人が競り合うも半蔵の頭の位置の方が高く、空中戦は半蔵に軍配が上がる。




 そのままヘディングに行く、かと思ったらそこに飛び出したのは桜王のGK高山。両チームで190cm台の長身を行くのは半蔵ともう1人、この高山だけだった。



 更に半蔵には無い手が使えるという強みを持っており、高山は半蔵の頭がボールを捉える前にパンチングで弾き飛ばし、シュートを撃たせない。



『190cmの巨漢同士の空中戦!高山がこれを制したー!』




 高山のパンチングで桜王エリアからボールは出され、セカンドボールとなるとそこに詰めて行くのは明。彼にとっては得意のミドルレンジからのシュートで狙える距離だ。



「(撃たせるかよ!)」



「っ!?」



 左足のシュートで行く明に対して、冬夜が滑り込んでのシュート阻止。彼に撃たれれば厄介というのはデータに入っており、冬夜による決死のスライディングでのシュートブロックが明のシュートを弾いた。




 これが左へと流れて行き、桜王DFがクリアに向かう。



「(まだまだー!)」



 だが攻撃を此処で終わらせようとせず、玲音が浮き上がったボールへと詰めれば飛び上がる。左足でボールを捉えるアクロバティックなシュートが飛び出せば、目の前のDFはぎょっと驚いてしまう。



 ゴール左へ斜めの位置から狙ってきた玲音。良い感触で撃てて先制行けるとなっていた。




 手応えあったシュートに対して長い左腕が伸びて来ると、ボールを高山が叩き落とす。半蔵がこぼれ球に詰めて行こうとするが、DFのマークもあって思うように進めず、その間に高山はボールを体で被せてキープ。



 此処は彼の長いリーチに軍配が上がる。



『止め切った桜王!再三のシュートを広西のブロック、GK高山のファインセーブで立見に得点を許しません!』



『今のはGK届かないと思ったんですけど190cmある高山君のリーチなら別でしたね、このセーブで高山君乗ってきそうで立見も簡単には得点が難しいかもしれませんよ』



 今大会は立見の大門、前川の岡田、そして桜王のGK高山と東京1の守護神争いも熾烈であり今日はそのGK2人がいる試合。



 この試合は大会No.1GKを争う一戦としても注目が集まっている。





「ちっ、流石は桜王って所か。今までと違って簡単にはゴール出来ねぇぞあれ」



 相手のカウンターに備え残っていた間宮と弥一。相手の良い守備に、これまで好調の1年達も今回は簡単じゃないなと間宮は見ていた。



「むしろそう来てくれてありがたいですねー」



 相手の厳しいレベルの高い守備がありがたい。弥一の喜びすら含む声に気付き間宮が弥一の顔を見る。




「全国行けば嫌ってぐらいに桜王みたいな厳しい守備の相手はいますから、特に最神とか八重葉とか。今のうちにこういうの経験しておけば彼らもっと伸びてくれそうでしょ?」



 此処まで接戦という試合はリーグ戦を含めて、公式戦では彼らは高校でまだ経験していない。その機会が早いうちにやってきた事が1年達の早めの成長に繋がると、弥一の目は話し合う1年達の姿をまっすぐ捉えていた。




 彼らにとっては全国へ行く前の試練の一つ。優れたDFやGKからも得点出来てこそ、本当の攻撃力が身に付く。どんな練習よりも、真に強いチームと公式戦で負けられない真剣勝負が何よりも一番手っ取り早い成長だ。



 無論試合には勝つつもりで弥一も動いて行く。

摩央「順調に行ってたけど後輩達は此処で苦戦か、まあ桜王相手だとそうなっちまうよな」


翔馬「勿論1年達に任せきりにはせず僕達先輩も頑張って行くよー!」


川田「所で俺の人間発射台の応援歌ってあれ誰が作ったんだ?」


「「さあ?」」


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