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新たな立見の快進撃

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「おーし、紅白戦行くぞー」



 2次トーナメントがもうすぐ始まる中で今日は紅白戦が行われる日。インターハイを戦うチームとリーグ戦を戦うチームに分かれての紅白戦を、立見は積極的に行うようになる。



 前と比べて練習試合などの予定が組みづらくなってしまい、実戦に近い練習が中々出来ず、総体のAチームとリーグのBチームがこの紅白戦でぶつかる事が多くなって、Aチームは弥一、間宮中心の守備。Bチームは氷神兄弟、半蔵、明を軸とした攻撃と毎回高レベルの争いを繰り広げていた。



 一方が1試合で二桁得点を取れる程の攻撃力があれば、一方は無失点記録を伸ばし続ける守備力。このぶつかり合いが互いにとって糧となり、1年だけでなく2年や3年の成長にも繋がっていく。



 この日も間宮の言葉から紅白戦が予定通り行われようとしていたが、今日はそこで薫から待ったの声がかかる。




「今日は詩音、玲音、石田、明。Aチームに入れ」



 今までBチームとして出ていた攻撃の要となる1年の4人。それが今日は総体を戦うAチームへと加わらせた。



 既に立見内どころか東京内でも頭角を現して来ている彼らの力は、総力戦となる夏の厳しい大会で必ず必要となるはず。遅かれ早かれ総体を戦うメンバー達とそれで連携を高めて、極力攻守のミスを可能な限り無くしていくには早い段階で組ませた方が良い。




「「お願いしまーす」」



 詩音、玲音は揃ってAチームへと挨拶すると、そこに半蔵、明も続いて改めて挨拶。




 彼らは様々な連携を試していき、何が噛み合うのか噛み合わないのか紅白戦を通して追求を続けていくと、やがてそれは力となって明確に現れる事となる。








 5月の下旬を迎えると2次トーナメントの戦いは始まり、立見は土曜の試合から早くも登場する。当然ながら選手権を制した新たな王者の試合を見ようと、スタンドは満員の客で埋まって予選から高い熱気ある会場となっていた。



 相手は2次トーナメントの常連校である音村学院。過去に立見を負かしている実績を持つが、去年は立見がその借りを返して勝利している。



 今年も全員攻撃、全員守備のオランダのトータルフットボールを目指すスタイルで勝ち進み、今回も立見相手にそれを行って来る事だろう。




『東京の総体予選からこの大歓声、この満員。やはり選手権を制したニューヒーローに皆惹かれてしまうのか?今日から始まる2次トーナメント初戦から昨年の東京覇者、立見が登場です!』



『相手は立見にとって難敵と言われる音村学院、去年は立見が勝利しましたが今年はどうなるのか。っと立見はこの試合から初登場となる選手が何人か居ますね』



 大勢の観客による大声援が出迎えるように立見、音村の両選手達がフィールドへと入って来る。




「立見の試合やっぱ皆注目してるなぁ、何人か偵察も来てるし」



「つかあれ、西久保寺だよな?あっちには空川も居るぞ」



 スタンドからの観戦となる三笠、立浪の二人。自分達のリーグ戦を上回る観客数に辺りを見回していると、翌日に試合を控えている他校の姿も見えた。



 優勝候補の一角と言われる西久保寺。そのジャージを着る数名の部員達が居て、離れた場所に空川のジャージを着る集団も居る。





「んぐ……立見は、むぐ……メンバー前線変えて来たかぁ?」



「喋るか食うかどっちかにしろよなお前」



 土門はご飯山盛りの豚生姜焼き弁当をかきこむように食べつつ、立見のメンバーを見ており、辻はマナー悪いぞと注意しておく。



「中学で注目されてた氷神兄弟と石田が入ってますね、それに加えて緑山明。リーグ戦で活躍した攻撃陣を此処から起用ですか」



 眼鏡をかける小平はタブレットを操作して、立見についてのデータを調べていき、新戦力の彼らの情報を頭に叩き込んで先輩達へと伝えていた。



「細くて美少女みたいだけど氷神兄弟が中学最強なんだな。人は見かけによらないというか」



「女子だったら口説いてましたねー!栄田さんも行ったでしょー?」



「阿呆、俺は彼女居るわ」



「何!?こら、何時の間に作りやがって裏切り者ー!」



 氷神兄弟が女子だったらなぁ、と残念がる前田に栄田へと振ると、メンバーにまだ話してない事をここで暴露すれば、土門は同志だと思っていた相手の裏切りを受けてご立腹の様子。



 ほとんど去年の主力メンバー健在な西久保寺の明るいチームワーク。この連携が彼らの強みだ。




「試合始まるってお前ら!偵察来ておいて見逃したら笑えねぇっての!」



 そろそろキックオフが近いので辻は小競り合いを繰り広げる栄田、前田、土門を注意。





 この試合、立見はこのような布陣で挑む事となりメンバーが発表された。





        石田


         9


 氷神(玲)  緑山    氷神(詩)


  8      10     7


     影山   川田


      14    5


 水島  神明寺  間宮  田村


  4    6    3   2


        大門


         22





 スタメンに1年の4人が選ばれて優也、武蔵はベンチスタートだ。





 これまでチームを分けて連戦を乗り越えてきたが、強豪が集う2次トーナメントでそれらのチームを融合させ、一つのチームとしてこの試合に臨む。



 新生チームは一体どのようなサッカーを見せるのか、今お披露目の時だ。




 ピィーーー




 音村からのキックオフで試合開始。相手が立見であり、前回の試合ではいきなり人数をかけて攻めた事で逆に失点を喰らってしまい、今回は慎重な立ち上がりだ。



 自陣でパスを回して行こうとする音村。するとそれを読んでいたのか、素早くボールを持つ音村の選手へ詰める者が居た。




『立見の1年、氷神玲音早くも全力プレスだ!』



 玲音がボールを奪おうと音村の選手に突っかかり、これに玲音を避けるように近くの選手へとパス。



『今度は詩音、更に石田の二人がかり!立見開始早々にハイプレス!』




 すばしっこい氷神兄弟に加えて、192cmの大型ストライカー半蔵に寄せられれば、彼らからすると強烈なプレッシャーがかかってしまう。



 キープしようとするが半蔵の長い右足がボールを弾くと、セカンドボールを拾ったのは明だ。




 チャンスとばかりに明はドリブルを開始。高い位置でボールを取られて、バタつき気味の音村DFに対して明の個人技が此処で炸裂。



 ターンで相手を華麗に躱し、そのままスピードに乗ったドリブルで一気にゴール前へ向かう。これを止めようと音村DF陣は必死の守備で明を止めにかかるが、その瞬間、明は左へと右のインサイドでパスを出していた。



 その位置には先程真っ先にハイプレスを行った玲音が走り込んでいる。



 明から送られたパスに玲音は得意の左足を一閃。



 ゴール左の枠を捉えるシュートにGKのダイブは及ばず、ゴールネットが早くも揺れていった。




『電光石火ー!立見、キックオフ開始からなんと僅か25秒!西久保寺の29秒を超えて今大会最速ゴール記録を更新したー!』



『速いですね!?前線のハイプレスから上手く奪ったとはいえこれは凄い……』




 開始早々の立見の先制ゴールは会場のボルテージを大きく上げていき、歓声が鳴り止まない。



「やったー!作戦通りー♪玲音ナイスゴールと明ナイスアシストー♪」



「こうも上手く行くなんて、正直びっくりだ!音村相手に凄いぞこれ!」



 ゴールを決めた玲音が明の手を引いて一緒に観客の方へと向かって喜び、明はこれに戸惑い気味。その二人へ半蔵と詩音も駆け寄る。




 このゴールは事前に立てた作戦のおかげであり、試合開始前まで時間は遡る。






「1年の皆ー、最初だけハイプレス行ってくれないー?」



 ポジションにつく前に弥一は前線の1年4人を呼び寄せ、前からのプレスを行く事を要求。



 紅白戦を重ねてきて、氷神兄弟の素早い動きと半蔵の体格を生かした圧力。この強烈なプレスが開始すぐの時間に活きると弥一は見ていた。



 それもそのはず、彼は音村の選手の心を読んで、最初は慎重に自陣でじっくり回す事を考えてるのを見たのだ。そこまで慎重になってくれるのであれば、彼らのハイプレスを此処で活用しようとしていた。



「あくまで最初だけ、ね。そこからはあまりやらなくて最低限の守備で良いから」



 ハイプレスの弱点は体力の消耗。試合開始から最後まで厳しくプレスをかけ続けるのはまず不可能に近い。やるのは不意打ちとなる一発目だけ。



 そこからは相手もそれに警戒するはずなので、プレスを続けさせて激しく体力を使わせるのを避ける為に、最小限で留めておく。




 弥一から言われた通りに1年達は実行。それがこの電光石火のゴールへと繋がったのだった。





「ナイスプレスー!皆良い仕事だったよー♪」



「どもっす……」



「この調子でガンガン行きますよー!」



 1年達のプレーを弥一が褒めると、アシストを決めた明は短く返事。ゴールを決めた玲音は弥一に褒められた事も上乗せして、気分がノって来ている。





「1年に負けんなー!俺らもきっちり守ってくぞー!」



 立見の闘将DF間宮が守備陣へと声をかけ、士気を高めて行けば反撃に出る音村のスピードある攻撃にも指示を出して対応。



 合気道で鍛えた競り合いで田村がライン際の攻防を制し、音村に付け入る隙を与えない。




「キーパーミドルー!」



 エリア内に中々入れず焦る音村は外から思い切ってシュート。事前に弥一が気付き声をかければ、大門は慌てる事なく正面でシュートを受け止めてキャッチしていた。




「敵さん焦ってる焦ってるー、もう1点行けるよー!」



 手をパンパンと叩き後ろから弥一は攻撃陣を鼓舞していくと、それに後押しされてか明から大きく左へと展開。玲音が追いつき、ゴール前にそのままクロスを上げる。



 大柄な半蔵をDFはマークしていたが、このボールに反応したのは詩音。得意の右によるボレーで合わせ、再びゴールネットは揺れていった。




 勢いに乗った立見、こうなると音村の手に負えなくなってしまう。







「音村さん、そんな弱い相手じゃないはずだよな?」



「過去には桜王からも得点してる強豪チーム、なんですけどね……」



 今繰り広げられている試合が信じられないという感じで見ている辻。その横でタブレットを動かす手が止まってしまっている小平。



「立見ってそこまで攻撃的な感じじゃなかったはずだけど、すんげぇイケイケで攻撃してんじゃねぇか今年」



「でも守備堅いままです、どうなってんですかー!?」



 弁当を食べ終えた土門は去年の立見を思い出していくが、記憶の限りではそこまで攻撃的ではなく、今のような攻撃は出来てなかった気がする。


 どちらかと言えば守備寄りのはずだが、前田は今年は全然違うと驚くばかりだ。




「なんか今年はこれ……ひょっとして立見、恐ろしいぐらいにとんでもないチームになったんじゃねぇ?」



 思わず栄田の頬から汗が伝って滴り落ちる。その彼の前で翔馬が左サイドを駆け上がり、そこから高いクロスを上げて半蔵が圧倒的な高さから、頭で追加点を奪ってみせていた。




 過去に難敵と言われていたはずの音村学院。それを完全に吹き飛ばす勢いで立見はこの試合攻守で圧倒。



 そして後半よく動いた氷神兄弟に代わり優也、武蔵が出場して試合は終始立見ペース。



 最後に優也が1点を決めて試合は終了。




 立見が一番乗りで深い爪痕を残しつつ次へと駒を進めたのだった。




 立見11ー0音村



 石田2


 玲音3


 詩音2


 田村1


 川田1


 歳児2

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