表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
241/651

紅白戦、決着へ

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 前半CKのチャンスで1年組が上級生チームを相手に先制。これには観戦するレギュラー組も驚かせる程だった。



 彼らも立見式のトレーニングをやっていて実力を付けており、守るGKも安藤と試合前は1年組が不利だと思われたが、蓋を開けてみれば1-0で1年がリードするという、まさかの展開だ。



 氷神兄弟や半蔵、更に三笠や立浪と中学の優秀プレーヤーに加えて明という未知のプレーヤー。この明が1年の攻撃を奏でている事は間違い無い。





「まさか俺らが先制されちまうなんてなぁ」



「悪い、止めきれなかった」



「安藤先輩が責任感じる事無いっスよ。あの監督の弟君からあんなキック飛んで来るなんて誰も思ってなかったし」



 前半が終わりハーフタイムへと入れば、安藤は止めきれなかった事を皆へと謝るも誰も安藤を責めはしない。あの失点は完全に明、そして半蔵にやられた。



 試合前はこっちが点を取って折り返すつもりでいたのだが、セットプレーの一撃で予定は完全に崩れてしまって、上級生達はこれを修正する必要があると話し合う。



「点差はたったの1点、向こうの守備は真ん中の三笠、立浪が厄介な分サイドは薄い。特に……」



「右、だよな。相手の左は結構前に出て行く傾向あったし」



 ただやられっぱなしではない。彼らは1年組の左SDFが穴だという事に気付き、後半はそこを中心に攻めに行くと作戦は固まっていた。









「サイドをもう少し固めた方が良いか?氷神兄弟にも守備寄りで下がってもらって……いや、ガチガチに固め過ぎるのも良くないけど」



「向こうリードされてるから前に出て来ると思うし、それも一つの選択として悪くないだろ。前にでっかい石田を残してのカウンター狙いとか有りじゃね?」




 立浪と三笠のDF陣達が後半に向けての守備で話し合い、サイドから攻められている事が多かったので、そこを固めていくべきだろうかと意見が出ていた。




「もう1点とか行きたい所だけどねー」



「流石に相手も早々そんなチャンス与えてくれなさそうだからねー」



 攻撃陣としてはダメ押しの1点を狙いたい所であるが、相手のDF陣と安藤相手となると中々それも難しい。詩音も玲音も2人揃って理解している。




「後半どう行けば良いと思う?」



「え……」



 突然玲音から後半についての意見を求められて、明は驚くような顔を見せた。



「さっきも立浪に上がるなとか言ったりしてカウンター警戒してたじゃん?皆それぞれ思う中で明はどう思ってんのかなぁって」



 続けて詩音も発言し、明は氷神兄弟に挟まれる形となっている。




「先輩達は1点を追いかけるから、その立場で考えると……立ち上がり集中して守備固めた方が良いとは思う……前線でボール運んだり体を張ってキープ出来るのを残して前で間を作ってもらう事も出来れば良いかな……」



 後半に攻めて来る相手を考えるなら、今の状態から守備の意識を高めにしておいた方が良い。小声ながら明はその事を伝えていた。



「それが出来そうって言えばー……」



 前線で先輩相手に体を張ってキープ出来そうな頼もしい存在。幸い1年チームにはそういった者が1人居てくれている。



 全員の視線が一斉にそちらへと向いた。




「……そりゃまあ、そうなるよな」



 華奢な氷神兄弟達ではその役割は難しい。残るはチーム最長身でガタイの良い半蔵しかしない。まさに彼向けの仕事だ。










 後半が始まると作戦通り、上級生チームは徹底してサイドアタックを仕掛け、右から崩しにかかって来ている。



 前半でもサイドから何回かチャンスを作っているので、彼らの弱点はサイドだと分かっての攻めだ。




 しかし上級生達にとって予想外の事は、氷神兄弟達がそれぞれ左右のサイド下がり目で構えており、サイドの守備を厚くしていた。前線には半蔵が1人残って、彼も前線から積極的に詰め、楽にボールを持たせないようにプレッシャーをかける。





「あいつら良い走りをしているぞ」



 走りに関しては立見随一の優也。その彼に良い走りだと言わせた氷神兄弟。それぞれがボールを追い掛け回しており、ちょこまかとすばしっこい動きに加え、足の速さもあって上級生のサイド攻撃を上手く食い止めている。



「そういえば中学の時とか攻撃だけでなく守備でも結構貢献してたな」



「前がかりに来てる相手には下がって守備に専念、結構器用な双子だね」



 中学サッカー時代の彼らの活躍を振り返り、今の守備の姿に納得の大門。状況に応じて攻撃や守備と色々切り替えられて器用だと、武蔵はそれを見た後にペットボトルのお茶を飲んでいた。




 前半でビハインドを背負ってしまった上級生チームは1点取り返そうと、反撃に出るが中々攻めきれない。



 OMFの2年が3年のFWと繋ぎ、左サイドを攻めて行くと見せかけて、大きく右へと蹴り出してのサイドチェンジを試みる。詩音のプレスを逃れ、玲音の居るサイドに高いボールが向かう。



 いくら上級生達が全体的にそこまで背が高くないとはいえ、160cmに満たない氷神兄弟ほどではない。彼らと空中戦になればこちらが競り勝つ可能性は高い。その計算も入れて高いボールを送っていた。




 だがそこに待っていたのは玲音ではない。



「ぐっ!?」




 空中戦で激しい競り合い、ボールは溢れていきセカンドボールとなった球を、玲音が持って前へと運んで行く。



 突然伝わって来た衝撃に、空中戦で競り合っていた3年の選手がその相手を見ると、共に地面へ倒れた後に素早く立ち上がる明の姿があった。




 氷神兄弟より身長があるとはいえ明も長身という訳ではない。だがそれを補うジャンプ力があって上級生に競り勝つ事が出来た。





「うるぁぁ!」



 中盤で相手にしつこく体をぶつけ、闘志を全面に押し出しての執拗な守備で相手を進ませない三笠。



「此処粘ってくぞー!」



 最終ラインから指示を飛ばしたり声をかけて励ましたりと、コーチングで後ろから支えつつ高いボールをしっかりと跳ね返していく立浪。




 後半時間が経過して上級生と比べて運動量の落ちてきた1年チーム。この時間には上級生チームがボールを支配するも、彼ら2人が中心に守り続け、此処まで0点に抑えられている。




「っと」



 詩音が右サイドでボールを持って久々攻め上がろうとするも、サイドに2人がかりの守備。2点目は許さんという意地から来る上級生達に対して、突破しようとしていた詩音の足が止まる。



 すると左の方を一瞬チラっと見ればその方向へ、軽く右のインサイドで転がすようにパスを出す詩音。そこに走り込んでいるのは明だ。




 前を見据えている明は再びドリブルを開始。詩音に付いていた2人は片方はそのまま詩音のマークを続行すれば、もう片方が明へと向かう。



 明の前には大きなスペース。それが見えて明は前へ強めにボールを蹴って、自らもスピードアップして走るラン・ウイズ・ザ・ボールを決行。



 迫り来る相手をスピードで躱すと、そのままドリブルでオープンスペースに一直線で走る。



 ゴール前には半蔵。安藤の指示で半蔵のマークは外さず、DFの1人が明を止めようと迫っていた。明は相手DFへ、そのまま斜めからドリブルで向かう。



 そのまま抜き去る、かと思えば左の踵で後ろへと流せば、その位置には詩音が居た。ボールを受け取ると明はタイミングを合わせ、DFの横を抜けて走る。



 詩音は右足でボールを明へ向けて蹴る。グラウンダーの球がDFを抜けた明へと向かい、これを受ければ前に居るのは安藤のみだ。




「行けー!2点目ー!」



 行ってしまえとばかりに玲音は叫び、明はシュートに入ろうとしていた。




 それと同時に安藤が飛び込んで来て、体でシュートを止めに行。、どんな強烈な衝撃も覚悟の上で勇気を持った飛び出しだ。




 だが安藤の体に衝撃どころか感触は特に伝わって来ない。




 飛び込んで来たGKに対して明は冷静であり、右足の甲の部分でトンと軽くボールを浮かせる。飛び込む安藤の体の上を超えて、ゴールへと弧を描くように吸い込まれていった。




 力強いボールを見せた後に技ありのチップキック。上級生相手に2点目を決めた明はゴールが決まると、安心するように軽く一息つく。




「やったな明!」



「上手いループだったよー!」



「ナイスゴールー♪」



 氷神兄弟や半蔵とそれぞれ駆け寄り明のゴールを祝福。



「いや……良いパスだったのとDF引きつけてくれたおかげで……」




 何処か照れた感じでぼそぼそと小声の明。攻守で素晴らしいプレーを先程まで見せた者と同一人物には見えないぐらいだ。




「これはもう決定的かなぁ」



「ほあ~」



 時間帯としては追いつくには厳しく、1年組が疲れながらもダメ押しのゴールを上級生相手に決める。



 上級生達は追いつこうと必死だが焦ってミドルを外したりと、攻撃が今ひとつ噛み合っていない。弥一はこの試合展開を見て明の2点目で勝負あったと思い、弥一に猫じゃらしで遊んでもらってるフォルナは同意するように鳴いた。




 そして間宮の笛が吹かれると紅白戦は終了。



 2-0、1年組が上級生チーム相手に勝利という、ちょっとした番狂わせが立見内でこの日起こっていた事を世間は知らない。

月城「立見じゃねぇ俺らも顔出して大丈夫かよこれ?」


想真「他校は禁止やと誰も言うてへんし、むしろ立見ばっかやとワンパターンやろ」


室「うーん……まあ、そうなったらその時はその時って事でいっか」


月城「じゃあ、立見だけじゃなく八重葉もよろしくー」


室「あ、ずるっ!」


想真「せやったら最神も応援してやー!」


宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ