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小声な彼のポテンシャル

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 立見サッカー部はこれまで監督やコーチ無しでやってきた。学校側としては当然学生だけに全部は任せず、顧問として幸が付いて彼女が監督代理のような形。だが実際に監督のような役割をこなしたのは学生達、出来てからまだ数年しか経っていない部に監督が就任するというのは中々難しい。



 今年もそのスタイルで行くかとなっていた時に、女子サッカーの元プロである緑山薫が新たに立見サッカー部の監督へと就任。更にその弟である1年の明もサッカー部へと入部。



 2人が新たに立見へと加わってから次の日の朝練を迎える。この日が緑山姉弟にとって初の練習と指導だ。





「……」



 朝練の道場で正座する部員達。間宮の右隣で正座するのは薫と更にその隣には明が居る。



「あの、監督も参加っスか?」



「何か不都合でもあるか?」



「え?いや、全然……」



 合気道を取り入れた朝練に対して、何か意見を言う訳ではなく監督である薫自らもこれに参加すれば、部員達と共に姿勢正しく正座をしていた。隣の明も特に何も言わず立見独自の朝練をこなす。




 朝練の合気道が終わり、道場から出る時に薫は間宮へと話しかける。



「昨日あったサッカーマシンの練習は今日は行うのか?」



「放課後に使いますね、前半はキーパーで使って後半は俺達フィールドの練習としての予定っス」



 間宮は今日の練習メニューの予定で、サッカーマシンは使う事を薫へ伝えていた。高性能な万能マシンなので活用しなければ損だ。


 あのマシンから繰り出されるボールスピードに慣れて行けば、様々な速さに対応しやすくなるだろうと考えている。






 放課後を迎えると、予定通りサッカーマシンを使ってのトレーニングは再び行われる。GKに向けられてマネージャーがボールをセットしたシュートは、真っ直ぐ飛ぶ弾丸シュートだけでなく、鋭いカーブのかかった物や変化球も混ざっていて、対応を難しくさせていた。


 更に発射のタイミングは此処でもランダムで、何時飛んで来るのか分からない。



 実際の試合でも相手が丁寧にシュートを撃つと言ってから、撃ってくれるという事は無い。不意の素早いリスタートにも反応出来るように、こういう形のトレーニングとなっている。



 交代でゴールマウスに立ってシュートに向かい、大門や安藤と経験ある先輩GK達はかなり止めており、入ったばかりの1年GKは止められずゴールを許す場面が結構あった。まだこのマシンに慣れていない時期なので無理もないだろう。




 一方フィールド組は全員体力強化のインターバル走を実行。週2回やる過酷なトレーニングはこの日行われて、皆が緩走と急走を繰り返す。それぞれ2年、3年組と分かれ、1年組は弥一と影山がリードしていく。


 更にこの緩走と急走をただ繰り返すだけでは終わらない。



「はい右にダッシュー!」



 皆が同じ方向を走っていた時に、1年組を引っ張り先頭を走る弥一が急な方向転換。くるりと向きを変えれば急走を行い、1年達もこれに同じく方向を変えてついて行く。


 勿論ダッシュを言うタイミングも完全に弥一次第だ。



「今度は左ー、と見せかけてもっかい右ー!」



 更に一度立ち止まってまた逆方向に行くと見せかけ、再び同じ方向へと急走。弥一はこういうフェイントも織り交ぜて走り、優秀な1年組もついて行くのに苦労していた。



 途中で方向転換したり変化を付ければ、より高い効果が得られる事を弥一は知っており、実際の試合でも様々な方向へと向かって走り回る。なので練習でもただ同じ方向にずっと走りはせず、全方角ランダムで走り回って行く。




「あの弟君、結構タフだねー……!」



「うん……!」



 繰り返しの急走と緩走で息が乱れてきた詩音と玲音。他の1年達も疲れが見えてくる中で明が弥一のランダムペースについて行って、周囲の1年と比べて消耗が少なそうだった。



 1年の中でスタミナは現時点で三笠と1、2を争う程だ。





 立見の独特の練習メニュー。学生達が考えた内容に監督はこれでは駄目だとか、この練習は無意味だと言い出し、自分の考える戦術と合わないと監督によっては、練習内容で揉める可能性が考えられていた。



 だが新監督である薫は特に何も言わず、それぞれ行われている練習を見て回り、腕を組んでいる。



 主務を努めて2年目の摩央。すぐ横に居て練習を見ている薫が何も言わないので、何を考えているか分からず内心では結構戸惑っていた。



「(指摘とかそういうのも今の所特に無い……合気道に関しても自分で参加したり反対はしてなさそうだったし、後になって色々何か言うのか?)」



 監督初日で練習中という事で結論は急がない。有名人ではあるが、薫という人物がまだ見えてきていないのだ。



「杉原君」



「!?は、はい!」



 急に薫は摩央へと視線を向けて名を呼ぶと、摩央は慌てて返事をする。



「次の月曜日の練習についてだが……」











「くぅっ!」



 インターバル走の後に休憩を挟んでから、昨日と同じサッカーマシンによる攻守で高速クロス対応の練習。消耗した状態での練習となり、体が重くなるであろう後半戦を想定している。



 昨日と比べスピードに慣れてきたか、速いハイボールに半蔵は長身を活かしジャンプして頭をボールへと当てる事に成功。ただ当てただけで枠は捉えていない。


 それでも初日と比べれば進歩している方だ。




 すると1年組の中で、マシンから発射された低いクロスに右足で正確に合わせて、ゴールネットを揺らす者が現れる。



 それは明だった。



 彼は向かって来る低く速いクロスに戸惑いや恐れを見せず、見事な右のボレーシュートで守るキーパーの右脇を通して決めてみせたのだ。




「凄ぇ!?」



「あんな速いのよく合わせたなー!」



 1年組は明のプレーに驚いており、経験ある先輩達にも負けていない。明を見て皆が同じ事を思い凄いという声と共に皆が駆け寄って行く。




「……ああいうの、ドイツで慣れてるから」



「ドイツ居たの?すげー!」



「神明寺先輩のイタリア留学みたいに行ってたんだー?」



 明はドイツでサッカーをやっていた。その事を聞いて氷神兄弟の2人は揃って、海外留学羨ましいという目で明を見ている。



「なるほど、海外トップのサッカーだとパス一つ一つがシュートのように速いと聞く。日本と比べて海外の強豪達はパススピードがとても速いから、緑山はそれを本場で体感していたんだな」



「まあ……うん」



 半蔵が感心するよう頷くのに対して、明の反応は薄く塩対応のように思えた。挨拶の時と変わらず声は小さめで張らない。



 スタミナが高いだけでなくテクニックもかなりの高さを誇る。あの凄まじいスピードに合わせ、正確にシュートを飛ばせる程で高校レベルの中でもかなり上位に行くだろう。




「へえー、ドイツかぁ。どれくらい居たのー?」



「中1から中3、だから2年ぐらい……」



「ふーん……って神明寺先輩!?」



 さりげなくドイツに2年程留学していた事を1年に混じって、聞き出していたのは弥一で、何時の間にか居た憧れの先輩の姿に半蔵は驚いてしまう。



 その明も弥一の方を見れば聞いてきた相手が先輩と聞いて、表情は初めて驚きへと染まった。




「皆も明に負けないようにねー♪」



 そう言うと弥一は再び走り自分の組へと合流に向かう。小さな背中を1年組は皆見ていて、その中で呟く者が居た。




「いいなぁ、もう名前呼びされてるー……僕も詩音って呼ばれたい」



「分かるー、僕も玲音って呼ばれたいし」



 明が既に弥一から名前で呼んでもらっている事に、羨ましく思っている詩音と玲音。




 初日で明は高いポテンシャルを見せて、氷神兄弟や半蔵と並んで1年の中で注目される存在となっていく。







「よーし、今日は此処まで!」



 空が夕焼けへと変わるタイミングで間宮から本日の練習終了が告げられ、各自が帰り支度に動くとそこに薫が皆へと声をかける。



「その前に月曜の練習についてだけど、予定を変更する」



「ん?予定変更?」



 練習の予定変更、それについて間宮は聞いておらずどういう事だと薫を見ていた。



「月曜に紅白戦を行う。メンバーもこちらで決めているので目を通すように。杉原、メンバー表のデータ」



「はい」



 薫に言われ、摩央は自分のスマホを操作すると、皆のスマホにメンバー表のデータを転送する。




 今日の立見の練習に関して特に何も言って来なかった薫。それが月曜に本来行われる予定が無い紅白戦を行うと、言い出し驚く者も少なくない。



 当日紅白戦を戦うメンバーも発表されており、皆が自分のスマホで出場メンバーをチェック。






 紅白戦は月曜の放課後、そこで薫が決めた互いのチームがぶつかり合う。

詩音「此処まで見ていただきありがとうございまーす、この話が面白い、次どうなるの?となったら応援よろしくお願いしますー♪」


玲音「☆評価とか作品ブクマも貰えたら更にやる気アップで良いサッカーを皆出来そうだから良ければそっちもよろしくお願いしますー♪」


詩音&玲音「僕達氷神兄弟の事もこれから覚えてくれると嬉しいな♪」


宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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