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王者を食え!

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「高校サッカー、冬の選手権はいよいよ大詰め。決勝の組み合わせが今日決まりました」



 夕方の時間帯に流れるニュースのスポーツコーナー。日々色々な出来事を伝えていく中で馴染みの高校サッカーのテーマ曲が流れながら、今日の選手権準決勝の2試合を振り返る。




「準決勝1試合目は立見と最神。前回大会準優勝校の最神を相手に立見は互角の展開。ゴールへ攻め込みますが最神のDF八神を中心とした鉄壁の守備に阻まれ、得点出来ません」



「一方最神もゴール前でFKのチャンスを獲得しますが立見、壁の後ろに人を寝転ばせる珍しいブロックで跳ね返し得点させず。今大会無失点の守備力を両者共に発揮しています」



 画面に流れる立見と最神の激しい攻防戦。影山が寝そべっている映像が拡大されて紹介しており、普段目立たない彼は全国ネットで今スポットライトを浴びて目立っていた。



「後半に入ると立見に決定的チャンス。立見のGK大門のキックから前線の豪山が競り合い後ろへ流した所に立見のスピードスター歳児が走り込みGKの頭上を超える、ループを撃つも八神がこれをオーバーヘッドで防ぐ。ビッグプレーが飛び出せば流れは最神」



「中盤の司令塔三津谷を起点に数々の攻撃を仕掛け、立見のゴールを脅かしていきます」



 決定的と思われた優也のループ、洞山の上を超えてゴールかと思えば想真が追いつきオーバーヘッドでクリアのスーパープレーが流れる。



 その後は最神の攻撃シーンが続く。




「最神のペースかと思われましたが後半終了間際、立見がFKのチャンスを得てこれを蹴るのは神明寺。集中して蹴るとボールは回転が全くかからない無回転シュート。関西No.1GK洞山もこれを止められずついに最神の堅いゴールをこじ開け、立見が先制します」



 FKで集中する弥一の姿。そして無回転シュートが決まった瞬間、飛び上がって仲間と共に喜んでいた。最神の方は腰に両手を当てて深刻そうな顔をする洞山の姿が映される。



「最神も諦めず反撃しますが立見のゴールを最後まで破れず、この1点を守りきった立見が前回準優勝の最神を破り初出場で初の決勝進出、創部僅か2年での快挙です」



 最後のシーンは想真がゴールへ蹴り込もうとしていたジャンピングボレー。これを弥一がクリアして試合終了。




 初の決勝進出で歓喜に沸く立見チームとその応援団。




「もう一つの準決勝、前回チャンピオン八重葉と真島の一戦は開始早々動きがありました。真島の鳥羽がFKで先制を狙うも八重葉GK工藤がこれをダイビングキャッチ。その後すぐにボールを前線へと運ぶと照皇、村山とボールを繋ぎ再び照皇。八重葉が鮮やかなカウンターで先制します」



 鳥羽の厳しいコースを狙ったFK。これを龍尾がしっかり両手で掴み取れば照皇へとすぐに送る映像が流れていき、照皇がゴールネットを揺らしていた。



「更に八重葉はCKのチャンス。村山が蹴ったボールを合わせたのは八重葉キャプテン大城、190cmの長身から振り下ろされる強烈なヘディングシュートで2-0と真島を突き放すと試合は八重葉ペース」



「真島に攻撃のチャンスを与えず、攻めあぐねる相手に八重葉のルーキーが魅せます。後半、スローインのチャンスを掴むと1年の月城がアクロバティックのスローインで会場を沸かせるとゴール前、大城の落としたボールに素早く詰めていた月城がミドルシュートで更に追加点」



 派手なプレーで観客を沸かせた月城。ゴールパフォーマンスのギャルピースも流れる。



「ただ月城はこの後に真島の真田と激しい接触、月城は腰を押さえ苦悶の表情。真田にはレッドカードが出され一発退場、月城はプレー続行不可能でベンチへ下がります。この後に数的優位に立った八重葉が照皇のこの日2点目となるダメ押しのゴールで4-0、磐石の強さを発揮し決勝へ進出しました」



 真田が後ろから激しく月城へとぶつかるシーンが流れる。これが月城の演技である事について何も明かされず、場面は変わり照皇がダイビングヘッドでゴールを決める所が映されていた。



「決勝戦は立見と八重葉、注目の新鋭と絶対王者の組み合わせとなりました。この2チームはインターハイでも戦っており八重葉が勝利しましたが、立見は八重葉を唯一0点に抑えたチーム。今回の決勝で八重葉が連覇を達成するのか立見が初優勝か、明後日の決勝で全てが決まります」










「(ずっと寝てばかりも暇だなぁ)」



 準決勝を戦った翌日。自宅マンションの自室でゆっくり眠っていた弥一は遅めの時間に目覚めて、母親の涼香と一緒に朝食をとる。



 ハムエッグのトーストに涼香お手製のフルーツジュース。キウイ2個使われており、ビタミンC豊富な神明寺家のジュースだ。



 美味しく健康的な朝食の後はスマホで動画サイトをチェック。



 弥一が推してるグループは新たな動画を出していた。体を動かす企画やホラー企画に大食い企画と、色々体を張っている。




 昼食の時間には涼香と共にトマトソースのパスタと野菜のスープをいただき、明日の試合に向けたメニューを、涼香が朝から作ってくれて疲労回復を手助けしていた。



 昼食の後は自室のベッドに寝転がり漫画を見る。内容は自分のやっているソシャゲの四コマ漫画だ。



 外に出ず今日はずっと家で過ごす時間。それが退屈に思えてきて、弥一は小さく欠伸をしながら漫画のページを閉じる。一眠り出来そうだから少し寝ようかと思ったら、スマホのバイブ音が聞こえてくる。



 充電器に差し込んでいた状態のスマホは充電完了していた。スマホを引き抜くと立見のグルチャに動きがあったようで、チェックをする。





「今から皆で立見の部室、集合出来る人は来てほしい」










 一体何があるんだろうと、呼び出された理由を弥一が電車の中で考えていても明確な答えは出ない。



 決勝に向けて詳しい作戦会議をするというのはありそうだが、グルチャで済みそうに思える。直接出向く理由はやはり見つからない。




「皆来てたんだー」



「外に出て軽い運動のつもりで出て来た」



「ずっと寝てばかりは暇だったからさ」



 立見の正門前まで来ると弥一はそこで優也に武蔵の姿を見つけ、声をかけて挨拶。3人で共に部室を目指して歩く。




 部室には立見の部員達が集まっていた。その脇には白い猫フォルナの姿がある。



「ほあ~」



「フォルナ、元気そうだねー♪」



 フォルナが弥一の姿を見れば鳴くと弥一は駆け寄って行き、フォルナの頭を撫でてあげた。此処最近は選手権の為あまり会っておらず、他の部員達が世話をしていたので少し久しぶりに思える再会だ。




 休みにも関わらず立見の部室には部員達が集合。全員あのメッセージを見て此処に来たらしい。



 皆ずっと家に居てばかりだったので、気晴らしに来たという感じだ。



「明日の試合に向けて気合を入れる為に皆を呼んだけど、全員来てくれた事にびっくりしてるよ」



 部員達の姿を見回し成海は改めて皆へと言葉を発した。



「黛さん」



「はーい♪」



 そこに京子が彩夏へと声をかければ、彩夏は丁寧に包装された箱を持っており、部員達に見せる。





「……うなぎパイ?」



 摩央がその箱を見ればお菓子の箱。うなぎパイの箱だと理解するまで、少し時間はかかった。他の皆もリアクションは似たようなものだ。



「あー、静岡の名物お菓子だよね?美味しそうー♪」



 美味しい物に目がない弥一。うなぎパイの事は知っており、食べてみたいと思っていた。それがまさか此処でお目にかかれるとは驚きだ。



「明日の試合に向けて買ってきたんですよ静岡の銘菓~♪あ、静岡のお茶もあります~」



 箱と共に彩夏が見せたのはペットボトルの静岡産のお茶。きっちり人数分カバンに入っていて、別のカバンにもうなぎパイ入りの箱はまだあった。



「急に何で静岡のお茶とお菓子を?」



「明日の八重葉学園、静岡だろ?だから王者を食うって意味で気合入れる為に皆でこれを食おうってなったんだ」



「急な呼びかけだから人数集まるか不安はあったけどな。全員来てくれた事に俺ら驚いてるよ」



 影山の疑問に成海が答える。明日の決勝戦で当たる八重葉は静岡の高校。だから静岡産の物を食べて王者を喰らい尽くすという意味を込め、これを皆で食べようと呼んだ訳だ。




「じゃあこれを八重葉だと思って食い尽くしましょうー♪」



 自分が早くうなぎパイを食べたいだけで、弥一はそう言うと真っ先にうなぎパイを手に取って食べ始める。



 サクサクの食感にバターの風味と共に伝わる甘味。それを味わうと食べる手は止まらない。



「これ美味しい~♡静岡の人羨ましいなぁ~」



 静岡に住む人が羨ましいと思う止まらない美味しさを、静岡のお茶をお供にして存分に味わう。




 他の部員達も食べ始めると、立見の部室前でサクサク音が次々と発生。全員が王者を倒すつもりで、うなぎパイを食して静岡茶を飲んでいた。



「ほあ~」



「あ、フォルナはこっちこっちー」



 フォルナがうなぎパイの箱へ近づくのを見た弥一は部室へ駆け込んで、猫用のおやつであるササミを持って出て来ると、フォルナにもちゃんとおやつをあげる。



 自分達ばかり美味しいのを食べていて、羨ましくなったのかもしれない。




「これで俺ら優勝してうなぎパイ食ってたってエピソード話したらうなぎパイの売り上げ、上がったりしてな?うなぎだけに売り上げうなぎ登りってなぁ!」





 田村がうなぎパイを食べつつ、場を面白く盛り上がるつもりで言ったのかそれを彼は笑いながら言った。その途端に周囲は誰も言葉を発さず、サクサク食べる音のみが聞こえていた。




「……草太、ただでさえ寒ぃ冬を更に寒くすんな」



「地球温暖化を忘れさせる程の寒さだったよ」



「今のそんなに滑ったのかよ!?」



「うなぎだけに滑りましたねー」



 同じ2年の間宮、影山から寒いと突っ込まれてしまう田村。自分だとウケたつもりだったらしい。




 その様子を見て弥一はフォルナにおやつのささみをあげつつ、滑ってるなぁと思って一言。



「ほあ~」



 反応したフォルナがそれにウケたのかどうかは誰にも分からないまま。




 立見の部員達は八重葉と思って、うなぎパイを食い尽くせば早々に解散し、改めてそれぞれ明日の為に体を休める。




 いよいよ選手権は明日でフィナーレ、頂点に君臨する高校が決まる。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。


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