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東西リベロの策

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「啓二!」



 立見のゴール前。抜かれたらピンチという場面で、間宮は体を張って想真の突破を阻止。その時に想真と間宮は激突して地面に2人は倒れ、これを見た影山が間宮の元へと駆け寄る。



 審判の笛が吹かれてプレーは一旦中断される。間宮は起き上がると、その場で身体を動かして状態を確認。



「何処か痛めてないか?」



「全然っスよ、昔から頑丈なもんで」



 成海からの言葉を返しながら、間宮は身体を動かすと痛みは特に感じなかった。プレーは問題なく続行出来そうだ。





「ったぁ~、思いっきりガツンぶつかられてもうた」



「痛みは?」



「痛いわ、プレー無理……やないけどな」



「出来るんかい、元気やないかお前」



 想真の方は立ち上がり、ホコリを払う仕草を見せれば審判を見る。判定はどうなるのか行方が気になる所だ。




「立見ファール、最神FK」



 審判の判定は間宮のファール。彼が想真を妨害して倒したという主審の判断で、ファールを受けた位置は最神から見て、ゴール斜め左の近い距離。



 FKのチャンスを此処で得られた。間宮には注意のみでカードは出されないようだ。




「(なんやねん、イエロー無しか。出てくれたらあいつのプレー縮こまるチャンスやったのに)」



 痛い思いしたのこっちなのにと、想真は間宮にカードが出ない事に若干不満な様子。イエローカードを一枚貰えば、この試合は後一枚貰ってしまうと退場。仮に準決勝を勝ったとしても、次の決勝戦に出場が出来なくなる。



 その葛藤は選手達に大きな影響を及ぼすかもしれない。イエロー2枚で最悪レッドカードになれば退場。この試合も、その先の試合も大きな影響は出るだろう。



『ゴール前、立見の間宮と最神の八神が激闘しましたが両者立ち上がり大丈夫そうです』



『さあ此処最神チャンスですよ、三津谷君高い精度のキックを蹴り込んで来ますからね』




 立見のゴール前には大門が指示して壁を作っており、エリア内に180cmを超える最神の選手が集まる。ボールを持っているのはファールを受けた想真自身。



 右手の指でボールを器用にくるくる回し、それを地面に落とせば完全に落下する前に足で受け止めて、そのままリフティング。



 その後に彼はボールをセットする。



 最神のセットプレーのチャンスに最神側の応援の声が大きくなり、彼らを後押しすると共に立見へ強烈なプレッシャーをかけに行く。





「大門、狙って来るよ向こうのリベロ」



「八神が?」



 想真の姿を観察していた弥一。狙って来ると彼は大門へと断言し前もって伝える。



「前の試合のFKで囮の時やんなかったし、ボール回してリフティングの後にボールを置いた彼大体蹴ってたからさ過去の試合動画で」



「それが向こうの罠って事は無いか?このルーティーンを行う時は俺が蹴るんだぞと分かりやすく伝えて、それで裏をかいて三津谷辺りが来るとか」



「そうなったら僕の事思いっきり怒っていいよー」



 弥一は想真が蹴ってくると確信しているようだった。揺らがない彼の自信、それを見た大門は弥一を信じて、想真が来ると思って構えておく。




「あ、影山先輩ちょっとちょっと……」



「え?」



 大門に伝えてから弥一は影山を呼んで、彼に一つ頼み事をする。









「今回はまずお前がボール飛び越えや、ほんで俺がその後にゴールにブチ込んだる」



「長身のあいつらは全部デコイとして動き回りかい。まあ得点出来たら皆万々歳で納得は見えとるけど」



 エリア内には同級生に先輩と長身選手が揃う。だがそれらは全部囮であり、本命は想真の直接ゴールへ蹴り込むキックと決めている。彼らには立見を釣るデコイとして働いてもらうつもりだ。



 開始まで短い打ち合わせをして作戦は決まり、想真がボールから離れ助走距離を取った。それと同時に光輝も少しボールから離れる。




『さあ、最神のキッカーは三津谷か八神。いずれも脅威のスーパールーキー。彼らのキックによって立見の無失点記録にストップをかけられるか!?』




 審判の笛により再会の合図が吹き鳴らされ、想真が走ると同時に光輝も走り出した。光輝はボールを飛び越えて蹴らない。立見の壁はこれに釣られなかった。



 そこへボール目掛けて猛然と走る想真。これが本命だと見て、壁の中に居る成海が「今だ!」と一斉に立見の壁がジャンプ。




「(もろたわ)」



 想真は口元に笑みを浮かべればボールを左足が捉え、地を這う低空に飛ぶキックがジャンプした壁の下を通過する。



 自分に合わせて飛ぶという所まで想定していたおかげで、立見のジャンプに対応出来て彼は慌てる事なく、グラウンダーの強烈な左を撃つ事が出来たのだ。



 このまま壁を通り越して後はネットを揺らすだけ。




 そう思っていた時。





 想真の地を這う弾丸のようなキックは弾かれ、ボールが零れていく。



 最神の選手がこれを追って行くも、先にクリアしたのは立見の翔馬だ。









「いったたた!防げたけど彼のシュート強いよ……!」



「良いぞマサー!」



「影山先輩ナイスブロックでしたよー♪」




『最神、強烈な想真の地を這うシュートでしたが壁の後ろで横になっていた影山がこれをブロック!なんともユニークな方法でこのフリーキックを阻止しました立見!』



『いやはや、これはなんとも……サッカーも時代によってアップデートされていくものですね』



 壁を抜けたはずの想真のグラウンダーシュート。それを止めたのは壁の後ろで寝そべっていた影山だった。クリアされたボールがタッチラインを割ってプレーは途切れ、弥一と間宮がそれぞれ影山のブロックを褒め称える。



 先程影山を呼んだ弥一はゴール前に寝そべってほしいとお願いしており、影山はそれを聞いて驚くが、これで攻撃が止まるならと了承する。



 そして壁の後ろに影山は寝そべる格好となり、影の薄い影山というのもあって、壁に隠れた彼は想真や三津谷からは見えない。結果として想真のキックは影山の脇腹辺りに命中し、阻まれたのだ。



 いずれも弥一が想真や光輝の心を読まなければ実行されなかっただろう。



「あー!あの影うっすいの気づかんかった!あいつおらんかったらゴールやったのに悔しいー!」



「ええから仕切り直しや!」



 影山にブロックされた事に悔しがる想真。これに山崎から声をかけられ、落ち着くように言われる姿はどちらがキャプテンか分からない。




「海外だけやなく日本でも流行りだしたんか、あの面白ブロック。立見もおもろい事かますもんやなぁ」



 興味深そうに立見イレブンを見ている石神は「惜しい惜しいその調子で行けー!」とフィールドで戦う最神へ、積極的に声をかけていく。



 最神も囮やフェイントと二段構えの攻撃をして、立見を欺いたりしてきたが、心を読んだ弥一は更にそれを上回る策を考えると、守備網を敷いて見事引っ掛けてみせた。




「ええと、ああいうのってありでしたっけ?実は反則とかそういうのって……」



「実際に壁の後ろで寝そべってブロックは海外の超一流選手達がやっている事。あれが反則だったら現地新聞で絶賛されるとかは無いはずだから」



「つまり全然ありって事ですね~」



 立見ベンチでは見た事無いブロックのやり方に摩央は困惑しており、京子へと訪ねた。それに対して眉一つ動かさず反則ではないと言い切り、彩夏ものんびりした声と口調で有りなんだなと納得した。



 ブロックする者としては結構勇気のいるプレーではあるが。





 ピンチを立見が凌ぐと今度は立見の方でチャンス。パスを繋いで行き、マークを一瞬振り切りフリーの状態となった成海がボールを持つ。



「(こっち!)」



 田村が右サイドを走り、豪山へと視線を向けている成海は、斜め前を走る田村にノールックでパスを送る。



 ピィーー




 だが田村へと渡った瞬間に旗が上がり、オフサイドを取られた。



『成海の田村へのスルーパスはオフサイド!最神DFライン、上げていた!』



『両サイドが上がっていて3バックの状態となりサイドの隙を突いたとなってたら、彼らの罠でしたね。良いラインコントロールですよ』





「(タケさん、今や!)」



 オフサイドの罠にかけた想真。そのすぐ後に洞山へジェスチャーで伝えると、洞山は素早くボールをセット。




『おっと!最神GK洞山速いリスタートで前線へ特大ロングキックー!』




 相手の攻撃を止めた後にすぐ攻撃。相手が攻守の意識を完全に切り替える前に強襲を狙い、想真は洞山に立見には読まれないように声を出さず伝えたのだ。



 洞山のキックは一直線に飛び、その先には立見にとって危険な存在である光輝が待ち構えていた。




「渡さないよっとー!」



 このリスタートによるキックを見破っていた弥一。洞山から送られたボールを光輝の前に回り込むと、洞山からのキックを蹴り返してクリア。




 火花散る両者のDF、弥一と想真。



 東西対決の高校サッカー選手権の準決勝は、両者が攻めて守り合う激しい展開となっていた。

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