準決勝の相手が決まる試合観戦
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「今日の試合、途中出場で2ゴールを決めた歳児優也君に来ていただきました!2試合連続の5-0。そして自身でも2試合連続の2得点と好調ですね!」
「まあ、身体の調子は悪くないですね。皆良いボールくれて決めやすいというのもありましたし、自分だけじゃなくチーム全体が調子上がっているんだと思ってます」
「いよいよ開幕戦以来の国立、戻る事となりました。今のお気持ちいかがでしょうか?」
「準決勝まで来たなって気持ちはありますけど満足はせず、次の試合に向けて準備して勝ちに行きます。」
今日のインタビューに呼ばれたのは優也で、マイクを向けられると冷静に受け答えしている様子だ。
だが実際、彼の内心は全国に流れるカメラの前に結構緊張はしていた。
そんな彼の心を見抜けたのは、暖かいベンチコートを着て冬の寒さを凌ぎつつ、彼のインタビューを遠くから見ている弥一ぐらいである。
昼の12時から立見の試合が始まり、ハーフタイムやアディショナルタイムも含めての時間。更にインタビューやを一通り終わって立見はロッカールームを出て来た。
「今日は何食べよっかな~?炒飯、寿司、オムライス、それかラーメンもー」
意識はもう遅めの昼食へと向いている弥一。今食べたいと思うメニューを頭に浮かべてみれば、早く店に行きたいとなってルンルン気分。鼻歌交じりに外へと向かおうとした時。
「神明寺君、何処行く気?この後に準決勝で当たるかもしれない2校の試合が同じ会場で行われるから見ておかないと、ご飯なら皆が試合に勝ってすぐに会場内で買ってきたから」
「美味しいサンドイッチですよ~♪」
京子が表情一つ変えず弥一の首根っこを掴み、外に出るのを引き止める。立見と準決勝で戦う相手が決まる試合。スマホからも見れるが、直に見た方が色々何か見えてくるだろうという事だ。
彩夏達の手で昼の買い出しは行われ、買ったのはスタジアム内で売っていたサンドイッチ弁当のようで彩夏はその箱を見せていた。
「あ~、寿司が~……ラーメンが~」
どんどん遠ざかってしまう弥一の脳内にあるご馳走達。しょぼんとなってしまう彼の様子は、先程までフィールドで活躍していたスーパールーキーには見えない。
明後日の対戦相手を見つつ、サンドイッチで遅めの昼食コースは確定する。
準々決勝、大阪代表の最神第一と埼玉代表の星崎。
最神は優勝候補の一角として順当に此処まで勝ち上がり、星崎高校も強豪校として知られ、こちらもその強さを発揮し勝利を続けている。
星崎は此処まで得点11、失点2と安定した成績で勝ち上がって来た。彼らが最神を破り、準決勝で立見と戦う可能性は充分にあるはずだ。その試合を見ようと立見はスタンドの方にて観戦。
「此処のサンドイッチすんごい美味い~♡」
先程まで好きな昼食を食べられず、落ち込んでいたと思えない幸せそうな顔で、弥一は焼きそばと卵とハムをパンで挟んだ、ボリュームあるサンドイッチにかぶりつく。
試合で消費して空腹となった状態がスパイスとなり、美味しさが自然と彼を幸福へ導いてくれる。
弥一が食べているサンドイッチの他に鳥の胸肉を使い、しっとりと美味しいチキンサンドに、おやつ感覚で食べられるマスカットのフルーツサンドのセット。
弥一に限らず、他の立見部員達も非常に美味しく食べられる昼食となった。
その立見が昼食をとっている間に、フィールドでは選手達それぞれがアップを行う。1年でキャプテンを務める八神想真はボールを軽く蹴って、今日の調子や感触を確かめていた。
「今日何時もより入念やなぁ」
想真のアップする姿を見ながら、自らもアップする同じ1年の三津谷光輝。想真のアップ姿は何時も見ており、今日は何時もより入念だとはすぐに気づける。
「何時もと変わらんつもりやで?誰が相手だろうが同じや」
「せやったらお前無意識やそれ」
この試合の前、立見の準々決勝は行われて最神はスマホでチェックしていた。
夏に合同合宿を行った立見が勝ち続け、一足先に準決勝へ進出。それも此処に来て調子を上げたのか、2試合連続で5-0という大差での勝利を、今年に入って積み重ねる。
見ていて並の勢いではないのは想真だけでなく、光輝から見ても伝わって来た。
そんな勢いある立見と戦うには埼玉の強豪校、星崎高校に勝たなければならない。
立見という存在が想真を刺激し、彼のアップにも変化をもたらしたのだろう。
それぞれアップを済ませ、両チームは入場口の方へと集い時を待つ。
合宿の練習試合で着ていた黒ユニフォームと違い、最神のユニフォームは桃色を基調に肩から二の腕付近と一部に黒色が入っている。
審判団に続き最神の先頭を堂々と歩く想真。1年で初めての選手権だが、それを感じさせてはいなかった。
「今更だけど1年でキャプテン、凄いなぁ」
「なんだ大門はキャプテンやりたいのか?」
「!い、いえ。そんな滅相も無いです」
早々にボリュームあるサンドイッチを食べ終えて入場する最神、先頭の想真を見る大門は同じ1年で、キャプテンを勤めているのが凄いと思えて、彼が輝いているように見えていた。
これが成海の耳に聞こえて彼は振り向く。からかうように言えば、大門は何度も首を横に振る。
「まあ、でも……次のキャプテンもそろそろ決めておかないといけない」
「このまま行けば2年の誰か、だよな。有力なのは間宮だな」
前の席に座る京子、豪山、成海。サンドイッチを食べつつ豪山と京子は時期キャプテンをどうするかと話し、豪山は間宮辺りが良いと推している。
「現キャプテンの意見はどうだい?」
「正直言うと答えはまだ出せてない。結構難しいもんだよ……次期キャプテン決めってのは」
立見の現キャプテンである成海は誰が良いか、まだ答えは出ていないようだ。とはいえ今はキャプテンを決めるのに悩んでいる場合ではない。
目の前の試合があるのだから。
先攻後攻を決めるコイントス。最神と星崎の両キャプテンが前へと進み出る。
「星崎さんよろしゅう♪お手やわらかに頼むわー」
「ああ、良いゲームにしよう」
想真は人懐っこい笑みを浮かべながら、星崎のキャプテンと握手を交わす。星崎のキャプテンはOMFで背番号10を付ける辻堂芳樹。お洒落にセットされた黒髪のショートカットに赤いメッシュ入り。
身長は175ぐらいあり165cmの想真とは10cm程の身長差があり、想真は彼を見上げる格好となっていた。
「(何も知らなきゃ女子にも見えるなぁ、間近で見ると)」
握手をしつつ想真の顔を見れば、中性的な彼の顔立ちは美少女にも見える。何も知らなければ女子と勘違いしたかもしれない。
そんな自分に試合前何考えてんだと、辻堂はコイントスを済ませて離れれば自らの頬を軽く叩き己に喝を入れ、気を引き締めた。
「最神のやる事はただ一つ!」
「「勝利するのみー!!」」
最神は想真の掛け声から、その後に全員が声を揃える。これが最神の試合前の儀式で、それを終えると彼らはフィールドへ散って行く。
「あ~、このフルーツサンドもデザートに良くて美味い~♡」
試合が迫る彼らをスタンドから見ながら、弥一はフルーツサンドを幸せそうに堪能していた。
「(こいつちゃんと試合見れるのかよ……)」
それを横目で見ている隣に座る摩央。飯に夢中で、試合を見てないまま終わるのではないかという可能性が考えられてくる。
「摩央、それ食べないなら貰っていいのかー?」
「食うわ!俺だって腹減ってるし!」
摩央の横には手付かずのボリュームある焼きそばと、卵とハムのサンドイッチが弁当の中に残っている。それを見た川田が食べようとしていたが、摩央は取られる前にサンドイッチを手に取りガツガツと食べていく。
彼らがそんなやり取りを行っている間に準々決勝。次に立見と戦う試合が今開始されようとしている。
午後2時10分、審判の笛が吹き鳴らされた。
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