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全国の舞台で躍動するサイキッカーDF

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 高校サッカー選手権、準々決勝はそれぞれ12時、2時からの試合が2試合ずつあって立見の方は12時から登場する。試合開始の数時間前、消化に良い軽い軽食を取って備え、試合会場へと到着していた。




 快進撃を続ける新鋭として注目を浴びる立見。彼らがウォーミングアップでフィールドに出たら、歓声が飛んで行く程に人気は高くなる。



 立見の応援も気合を入れてか大勢来ていて、学ランを着た応援団や華やかなチア達の姿が目立つ。




 この準々決勝で勝てば準決勝、決勝は国立で再び試合を行う。立見にとっては開幕以来であり、此処で勝って国立へと舞い戻る事は当然狙っていた。





「準々決勝の愛知代表、城坂しろさか高校は愛知予選を得点22、失点6。スピードある攻撃サッカーを持ち味……前半飛ばして来るか?」



「どうだろうねー、連戦続きでバテて序盤はゆっくりとした立ち上がりかもよ」



 スマホで今日の相手である愛知の城坂高校について、おさらいで調べていた摩央。前日の休暇の合間に、相手のチーム情報は全員に渡っており、グルチャで打ち合わせ済み。



 相手の此処までの勝ち上がりとしては1回戦3-0、2回戦4-2、3回戦2-2のPK勝ちで来ての準々決勝だ。




 スピーディな攻撃が売りの城坂。立ち上がりから向こうが仕掛けて来るなら、キックオフから警戒しておいた方が良いだろう。前の試合でも海幸がキックオフ直後、仕掛けてきていた。彼らも同じ手で来る可能性は否定出来ない。





 という風に摩央は考えているが、弥一はそう思っていない。




 スピーディな攻撃という事はそれだけ運動量が多く、予選のような1週間に1度の試合ならまだ良いが、中1日しか休みが無い過密スケジュールで、そういったサッカーを毎試合行うと消耗しやすい。それこそメンバーを試合の度に入れ替えたりしなければ持たないだろう。



 無論リスク覚悟で攻めに来る事もあるだろうが、弥一はアップをする相手の方を見つめ、その心を読む。




 彼らは何を思っているのか、それで前半どうするか決まって来る。






 前の試合でPKにまでもつれ込み、接戦を勝ち上がった城坂。その分、立見より心身共に消耗はしているが、前の試合でベンチだった選手達が入れ替わる形で、試合に出て入れ替えている。



 城坂は前の試合で思い切って消耗した主力を温存し、それで試合に望んだが追いつき追い越される接戦だった。



 負ければ温存策が水の泡となっていたが、結果として成功。立見戦は万全の一軍メンバーで臨める。




「(休んでたおかげで身体は軽い、行けそうだな今日)」



 それぞれ軽快な動きを見せており、良いサッカーが出来る。茶髪で七三の髪型をしている城坂の司令塔を務める、道野淳平みちの じゅんぺいはボールを蹴ると自らが好調であると確信。



 前の試合ではかなりヒヤヒヤさせられるも、城坂が全員きっちり決めて相手を一本止めたGKの功績でPK戦を制する。



 今回はフル出場でダークホースとして注目されている立見を迎え撃ち、彼らの持つ無失点記録を此処で止めるつもりだ。




 立見の3回戦はチェックしており相手の奇襲を見切り、カウンターで仕留めている所を見れば、彼らに開始直後の奇襲は通じない。むしろ逆効果とすら思わせて来る。



 速攻が自慢の城坂だが、此処はあえて様子見で行く。まずはゆっくりと試合に入り、チャンスがあれば素早く1点を狙う。



 最大のチャンスとしては立見の攻めの時。彼らが前がかりになった所で、城坂の長所であるスピードでカウンターだ。





 監督からの事前ミーティング内容を道野は頭の中で復習し、忘れないように繰り返していた。




 それが弥一に見られていると夢にも思わぬまま、アップの時間は終えて試合の時を迎える。







『準々決勝、これに勝った方が国立の道が開かれる重要な一戦!3回戦を大差で下し完勝の立見と大接戦の末PKで競り勝った城坂。一体どちらが準決勝進出の切符を掴み取るのか!?』



『城坂は前の試合でエースの道野君達主力が休んでいましたからね。万全で戻って来たとなると、この試合立見としては難敵となりそうですね』






「絶対戻るぞ国立!立見GO!」



「「イエー!」」




 開幕戦で1度国立のフィールドに立っている立見イレブン。この試合に勝ってあの地に再び戻るぞと、成海が気合の掛け声と共に皆も揃え、それぞれが散って位置につき、開始のホイッスルを待つ。





 城坂イレブンはキックオフを待っており、開始は向こうのボールからだ。スピードサッカーを自慢とするが、立ち上がりはゆっくり行く。このプランは開始直後の今も変わらない。




 それは弥一も心で見ており知っている。






 ピィーーー






 城坂のキックオフで試合は開始。ゆっくりとボールを回しつつ、立見の1トップ豪山が突っ込んで来るか警戒。



 その立見も立ち上がりは様子見を見ながら守りはしっかりと固めている。




 スピード自慢のチームが、スロースタートという不気味さのある序盤。城坂の司令塔を務める道野は立見の陣形を観察していた。




「(ちょっとつついてみるか)」



 ボールを持つ右サイドハーフ、そこに道野は右手を上げてボールを要求。パスを受け取れば、ダイレクトで前線のFWへとグラウンダーで送る。



 守りは固めている。それでもスローな動きをしていた相手が、急にリズムを速めて攻撃に転じれば、動揺してミスが出るはず。



 道野は緩急を付けて、ミスを誘発させようとダイレクトパスを出したのだ。





「ナイスパース♪」



「(神明寺!?)」



 このパスを読んでいた弥一。彼らの緩急を完璧に読んでおり、ダイレクトパスをFWより前に出てインターセプトに成功する。



 心を読まれたと知らないまま道野は驚愕していた。





「(じゃ、こっちもお返しはしとこうかな)」




 パスを取った弥一は真っ直ぐ成海を見ている。視線に気付いた城坂の選手はサッとすかさず成海の前に行き、パスコースを塞ぐ格好となる。



 だが弥一は構わず右足で蹴り出す。そのボールは中央の成海に行かず、全く見てなかった左サイドへと大きく出されて、鈴木の足元へ正確に送られた。




 成海のよく使うノールックパス。



 それを弥一も使い、成海に出すと思われた相手は騙されてしまう。




『神明寺、インターセプトから一気に左サイド鈴木へと速いパス!これはカウンターのチャンス、っと鈴木倒された。これはファールの判定だ』




 倒された位置は左サイド寄りで、ゴールからは50m付近のフリーキック。これに弥一は相手のエリア内へ向かうチームメイト達と話した後、キッカーの位置に付くと城坂イレブンは彼に警戒する目を向ける。




「(狙って来るのか?)」



「(いくらなんでも遠い。此処は豪山の頭か川田の頭に合わせて来るだろ)」



「(そうだな、その辺り警戒していくぞ)」



 城坂の選手達が弥一が合わせるのは、豪山か城坂ゴール前に上がって来た川田と、長身である2人のどちらかの頭だと話し合い予測。




 ゴール前、長身の選手が揃い立見のフリーキックで試合が再開。



 弥一は左足で蹴り出すと高くボールは上がり、城坂エリア内まで伸びて行く。




「(取れる、ミスキックだ!)」



 今回はシンプルにハイボールを放り込んで来たのであろう、弥一の蹴られたボール。城坂のGKはこれを取れると判断し、飛び出すとしっかり地を蹴りジャンプ。高く上げられた球へ、両手を伸ばし掴み取ろうとする。



「!?」



 だがボールは命が宿ったかのように急激な変化、曲がりを見せて外へと逃げて行く。GKの最も嫌がる外へと逃げる回転だ。



 そのボールに頭で合わせたのは成海。相手GKが飛び出してガラ空きとなったゴールにヘディングシュート。相手DFも足を伸ばすがブロック出来ず、ゴールへとそのまま入っていった。





『成海の頭ー!ゴール決まったー!立見、国立に向けて幸先の良い先制点だ!』



『そんな長身ではありませんが成海君良いヘディングでしたね。しかし神明寺君の蹴ったボール信じられないぐらいに曲がりましたよ。それをよく合わせましたよね』





「うおー!蹴一ナイスヘッドー!」



「キャプテン流石ー♪」



 豪山に弥一、立見の面々が成海へと抱きつき先制ゴールを喜び祝福。



「(まさか本当にあんなドンピシャなタイミングで来るなんてなぁ……)」



 祝福の最中、成海はこのフリーキック前の会話を頭で振り返る。








 フリーキック前




「皆さんー、此処は成海先輩に合わせますから他はDF釣っておくデコイお願いしますー。特に長身の選手の動きにかかってますからー」



 エリア内へ向かう豪山、成海、川田を呼び止めて弥一は作戦を伝えていた。



 高さで合わせるのは長身の豪山や川田ではなく成海だ。2人程の上背は無いが、ヘディングが苦手という事は無い。



「成海先輩、凄い曲げますからこれ自分には行かないなーとか思わないで構えといてくださいね?」



「そんなに曲げる気か?まあ、そう思って待ってるよ」







 弥一からそう言われて備えていたら、本当に信じられないぐらいに曲げて来て、あのヘディングをお膳立てしてくれた。



 まるでバナナを通り越してカミソリのような鋭く急激な曲がり。それがキーパーの手から逃れ、自分の元に導かれるように来たようにも思える不思議な感じだ。




 取れると思っていた相手GKはチームメイトに励まされるまで、自分の両手を見たまま呆然としていた。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。


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