開会式から迎えるフィジカル軍団との開幕戦
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
12月28日。選手権開幕の日を迎えて、出場校が高校サッカーの聖地と言われる国立競技場に集結。
今日はこの聖地で開会式と開幕戦が行われる。予選の時よりも遥かに多くの観客達に囲まれて、収容人数は6万人を超える程だ。
開会式では各出場校の入場行進が行われ、出場校とは別でプラカード係に選ばれた都内の高校マネージャーが、高校の名前が入ったプラカードを持って先導する。
最初に登場したのは前回優勝校の八重葉学園。
『八重葉学園、優勝旗を持つ2年エース照皇誠を先頭に入場。昨年圧倒的強さで選手権のみならずインターハイ、高円宮杯と高校サッカーにおける三冠を獲得したまさに高校サッカー界の絶対王者、今年もインターハイを優勝しており今回の選手権を連覇し更なる連勝記録を狙っています』
『全てのポジションに死角がありませんよね、彼らは高校レベルを超越していてまさに黄金世代ですね。その王者を止める高校が今回現れるのかも注目ですよ』
高校サッカー界の絶対王者の登場に、割れんばかりの観客達による声援。その中で八重葉は堂々とした入場で進んで行く。
もはや歩いているだけで昨年三冠覇者としての貫禄は充分だった。
入場行進はまず前回大会優勝校から始まり、その後は日本列島の北から南下する形で出場校が順番に行進する。
予選を勝ち抜いた各都道府県の強豪校が現れ、主将がそれぞれ校旗を持ち、予選大会優勝の証である旗も選手が持っている。
やがて関東まで来ると東京A代表である立見が入場。先頭の成海が校旗を持っており、豪山が予選優勝旗を持って共に歩く。
『立見高校、インターハイに続いての全国出場を創部から僅か2年で達成と勢いがあり、インターハイに選手権予選を無失点と八重葉に次ぐ記録を継続中。王者を唯一0点に抑えており今大会のダークホースとして注目されています』
『此処は面白いんですよね。インターセプト数が全予選トップを誇るDF神明寺君に後半100%に近い確率でゴールを決めるFW歳児君と、身体は小さいですが個性的で凄いプレーヤー達がいますから彼らの今大会の活躍も楽しみです』
番狂わせを起こすダークホースの可能性があるという立見の評価。その彼らと開幕戦で戦う対戦校は後の方で登場となる。
『最神第一高校、昨年の選手権は惜しくも八重葉に1-0で敗れ準優勝。今年こそはと雪辱に燃えている事でしょう。高校随一の司令塔である兄に代わり、弟にして1年でキャプテンを務めるDF八神想真は栄光の優勝旗を大阪へ持って帰れるのか?』
『兄である彼のテクニックも凄かったですが彼も負けず劣らずですよね。後釜である三津谷君も素晴らしい選手ですし、此処も全体のレベルが高いので優勝候補の一角ですね』
校旗持って最神の先頭を歩く想真、勝気な顔をする彼の目に優勝以外は見ていない。
入場行進は更に進み、立見の対戦校である鹿児島代表の海塚高校が入場。
『海塚高校、長身選手をずらりと揃えた南のフィジカル軍団は鹿児島予選を安定した成績で突破。優勝候補の一角としても数えられており狙いは勿論優勝でしょう。今日の開幕戦で立見と戦います』
『此処は春から徹底的に筋力トレーニングを中心にフィジカルトレーニングを積み重ねて来てそれが実ってますね、彼らのテクニック&パワーサッカーとダークホースである立見の試合、これは楽しみです』
長身で体格ある選手達が歩く彼らのパワーは脅威であり、高校生離れしていると評判。そのパワーは八重葉をも脅かすかもしれないと記事に書かれる程だ。
48の出場校が出揃った中で開会宣言、演奏と行われて前回優勝校の八重葉から優勝旗が返還される。
優勝旗は優勝校が1年間保持。次回の開会式で返還される決まりであり、代わりにレプリカ額を授与。それらが行われた。
そして挨拶や選手宣誓もされて無事に開会式は終了。この後午後3時に立見VS海塚が、この国立で開幕戦のキックオフを迎える。
フィールドにはアップを始める海塚の選手があり、軽快な動きで走りボールを蹴っていた。
「改めて見れば全体的にでっかいねー」
ベンチで海塚の動きを見ながら、弥一はパクパクとカステラを食べている。彩夏がこの日の為にカステラの本場である長崎から取り寄せた物だ。
甘さ控えめでしっとりとした食感の上品な味を楽しめる。
「筋トレとかフィジカルトレーニングをしっかり行っただけじゃなく食事メニューも徹底してるそうだぞ、ほぼ毎日蕎麦。それが筋肉の成長を促して回復にも良いらしい」
弥一の隣でミネラルウォーターを飲みながら優也は自分の方でも、海塚について調べていたようだ。彼らは食事も決められた物をきっちりと食べて筋肉を作り出しており、それが強いフィジカルとなっていた。
「えー、毎日蕎麦ぁ?流石にそれ、天ぷらとかマヨ和えとか味に色々バリエーションあったりするよね?」
「揚げ物とかそういったのは断ち切っていて菓子も食わない、とインタビューで答えてたな」
「僕絶対にそこのサッカー部の一員はなれそうにないや~」
信じられないといった感じで弥一は優也の言葉を聞いて、改めて海塚の選手達を見た。あの筋肉は食事の楽しみを無くすのと引き換えに手に入れたと思うと、弥一にはどう足掻いても真似出来ない。
美味しい食事が楽しみなのに、それを奪われたら到底身が持たなくて耐えられない。彼にとってそれは拷問で地獄に等しかった。
それを食べ盛りであろう、高校生から既に海塚は食を徹底して実行している。
「それだけ彼らはこの大会に真剣で優勝を狙ってる、という事なんだろうね。強敵だ」
同じくベンチから海塚のウォーミングアップを観察の大門。屈強な体つきの選手達を見て間違いなく強豪だと感じ取っていた。
「さ、僕らもアップアップー」
そう言うと弥一はフィールドへと出て優也もそれに続き、大門はキーパー組でアップを開始する。
「……」
海塚の選手達は弥一達がアップする姿を見ていた。それに対して何か思っている事は心が読める弥一には筒抜けである。
「(軟弱そうなのが多いわ、軽く当たっただけでも飛びそうな奴ばっかだ)」
「(こりゃ楽勝)」
内心で海塚は立見を舐めている。立見は海塚と比べて体格の良くなかったりと、海塚の方が屈強な肉体を誇る事は間違い無い。その筋肉の無さで彼らはこの試合ラクラクと勝利し、2回戦に進めると思っているようだ。
彼らがこっちを甘く見ていると分かっただけで収穫と、弥一は彼らに見えない所で口元に笑みを浮かべていた。
見下してる彼らが試合になればどうなるのか、その時の顔が見ものである。
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