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サッカーをする動機は人それぞれ

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「あ~、やっぱ可愛いなぁ美沙ちゃん~」



 放課後、夕暮れとなり部室では着替えを行う部員が数多く居る。その中で川田は自分のスマホに映るサッカーボールを両手で持ち、可愛く微笑む制服姿の女子高校生を見て顔がにやけていた。



「今年の応援マネージャーかぁ、俺ぁ前回の麻耶ちゃんの方が好みだなー」



 川田には好みのタイプだが田村は前の応援マネージャーの方が良いらしく、後になって「美沙ちゃんも可愛いけどよ」と付け足しはしておく。



「勝ち進めば、話す機会とかあんのかなやっぱ」



「えーマジで!?こんな可愛い子と会って話せるならマジ頑張ろう俺!」



 鹿児島のフィジカル軍団である海塚に不安だった面影は無い。部員達は可愛い応援マネージャーと会えて、言葉を交わせるかもしれないというのがモチベーションとなっていた。



 やはり男というのは魅力ある女子に惹かれやすいものかもしれない。




「……お先、失礼します」



「あ、お疲れー」



 その中で1人静かに着替えを終えた優也は先に部室を出て行った。





「おーい優也ー」



 正門へと歩いて行く優也。自分を呼ぶ声が後ろから聞こえて来ると、彼は歩く足を止めて振り返る。



 そこに立っていたのは弥一。着替え終えて優也の後を追いかけて来たのだった。




「ああいう話、得意じゃないんだ?」



「……」



 今日は優也が急ぎ気味で着替えたのが見え、弥一は気になって追いかけて来た。普段から話すのは得意ではない優也が、彼から恋愛話についてはこれまで聞いた事が無い。なのであまりそういう類は不得意なのかと思い、弥一は優也の顔を見上げて言う。



「モチベーションが高いのは良い事とはいえ、女目当てでサッカーするのって不純じゃないかと思っただけだ」



 優也は今も応援マネージャーの話に盛り上がる男達の居る部室の方を見ており、それでサッカーをするのは動機として不純と感じていた。



 真面目に人一倍練習に打ち込む優也。おそらく立見で一番サッカーに対してストイックだろう。だからなのかそう考えてしまう。




「別に不純って事は無いと思うよー?始める動機とか人それぞれだろうしさ。女子マネージャーに会いたくてサッカーしてるとかあれば、モテたくてサッカーやってるとか一蹴りで億万長者になりたいとかお金目当ても結構居ると思うし」



 弥一からすれば不純でもなんでもない。心でそれぞれの動機というのは散々見てきた。女子からモテたい、大金を掴みたい、海外だと家族を養いたいという理由でサッカーをする者が日本よりも多く居たものだ。



「案外そういう明確で分かり易い動機持って、サッカーする人の方が大好きで真面目にサッカーするよりも強かったりするもんだよ。不純だからってその強さは決してバカには出来ない。ほら、実際モテたくてサッカーやってる田村先輩も頼りになって強いじゃん?」



「まあ、確かにそうだな」



 例として同じ部の先輩である田村を話題に出した弥一。立見で不動の右サイドバックとして攻守を支え、チームになくてはならない存在で活躍を続けているのは事実。自分に匹敵する俊足を持つ田村の実力は優也も認めている。



 サッカーが好きで真剣にやっている者と比べ、動機が不純だからと言ってそれが劣るとは限らないのだ。




「なあ弥一」



「うん?」



 優也より前を歩く弥一は彼に呼ばれて振り返る。



「お前は何のためにサッカーをやっているんだ?」



 優也の場合は同じ陸上の幼馴染に負けたくないという理由で、サッカーの世界に飛び込んだ。元々持つ速さに更なる磨きをかけようと、負けず嫌いから来る動機だった。



 では弥一はどうなのか、優也は興味があって尋ねる。




「どうしようもなくサッカー大好きなサッカー馬鹿だから」



 優也に対して弥一は真顔で答えた。自分がサッカーをやる理由はそれが大好きで馬鹿が付く程に好きだからと。





「なーんて冗談だよ冗談ー♪僕だってそりゃプロになって大金欲しい、楽に暮らしたいって欲深い気持ちあるからさぁー♪」



「お前の場合マジなのか嘘なのか分かりづらいぞ」



 真顔になってから普段通りの陽気な笑顔で冗談でしたと、おどける弥一の姿に優也は軽くため息をついた。




「まあでもサッカーは好きだけど、それよりも好きなのはー」





「サッカーで相手に勝つ事、それが楽しいから」



 サッカーが好きというよりもサッカーで勝つのが好き。それは相手が強ければ強い程に、勝利した時の喜びや達成感は大きいものとなる。



 そういった事を正門を背に語る弥一。その顔は最初の冗談の時の真顔でもおどけた陽気な笑顔でもなく自然な笑みだ。





「なんだ、お前らまだ此処に居たのか」



 弥一と優也に話しかけて来たのは着替え終えて部室から出て来た大門。その隣に摩央も居て、彼らへと大門より先に声をかけていた。



「あー、ちょっと話し込んじゃってさぁ。じゃあ折角だから皆で駅前のコロッケ食べて帰ろうかー♪」



「それ良いな。今日結構お腹空いてて途中で何か食べようと思ってたから付き合うよ」



 弥一の急な提案に大門は空腹の為か、乗り気であり弥一の買い食いに付き合う。



「俺は別に腹減ってねーけど、あそこのコロッケは美味いからまあ食おうかな」



 何気に駅前のコロッケは好物であり、摩央も我慢出来ず食べる選択を選んでいた。




「優也はどうすんのー?」



 3人とも買い食いは決まり、弥一は残った優也にどうするのかとコロッケを楽しみにしつつ尋ねる。





「行くなら早く行くぞ」



「あ、待ってよー」



 優也は足早に先頭を歩き、弥一はそれを追いかけて大門と摩央も続く。




 この日は4人で揚げたてで、美味いジャガイモのコロッケを食べて帰宅したのだった。












「田村先輩、すみませんでした」



「は、はあ?」



 次の日の部活で優也は田村の前で頭を下げて謝罪する。優也からすれば不純な動機扱いをした詫びのつもりだが、田村からすれば何の事なのかわからず困惑の表情を浮かべるしかない。




「これからのサッカー部の為にも田村先輩、もっとモテてください」



 そして優也は田村がもっとモテればそれだけ彼は力を発揮すると思い、サッカー部の為にそう願って言えば、そのまま田村の元から走り去ると今度は川田の方へと行く。




「悪かった保、勝って絶対応援マネージャーに会うぞ」



「え?あ、ああ……勿論(あれ、優也も美沙ちゃんファンなのか?)」



 川田の肩を軽く叩き、応援マネージャーに会うと伝えれば、川田は優也がそのマネージャーのファンなのかと思っていた。




「(うーん、真面目っていうかズレてるなぁー)」



「ほあ~」



 弥一は優也のそんな姿をフォルナと猫じゃらしで遊びながら見ていたのだった。




 選手権開幕の時は刻一刻と迫る……。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

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