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天才達との再会

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 かつて天才と呼ばれる者がサッカー日本代表で君臨していた。



 パワー、スピード、テクニック、全てにおいて日本最高峰を走りアジア最優秀選手に選ばれた実績も持つ。



 そんな彼の力を持ってしてもオリンピックのメダルに届かず、ワールドカップのベスト16を超える事が出来ないまま彼は引退を迎えた。それからは監督としてチームを導く立場となる。




 工藤康友くどう やすとも



 今年のJ1リーグで東京を優勝へと導き、名将としての地位を40歳になる前に既に手にし、オリンピック、またはA代表監督へ次になるのは彼だと、多くのファンが答える程だ。




 その彼がノートパソコンに映し出されている映像を前に、眉間のしわを寄せる難しい顔でそれを眺めていた。




『ゴール!王者八重葉止まらない、3ー0で更に突き放すー!一体誰が、何処がこの絶対王者を止められるんだー!?』




 先日行われた静岡予選決勝。王者といえど、全国へ飛び立つ前に敗退してしまうかもしれない。サッカー王国の激戦区と言われてきたが、彼らは苦もなくあっさりと決勝まで来た強豪校を寄せ付けず、点差をつけていた。



 エースストライカー照皇を中心とした攻撃陣と、190cmの大型DF大城を中心とした守備陣。攻守で圧倒する決勝戦。




「お前の相手になる者はもう日本の高校サッカーではいないだろう、去年既にお前と八重葉は偉業を成し遂げた。インターハイ、選手権、高円宮杯と」



「ああ、自分が言うのもなんだけどな。八重葉に集ったサッカーエリートという名の化物集団のおかげさんで全部行けたよ」



 元日本代表の天才と同じ家で、リラックスしてくつろぐ高校男子。



 天才工藤康友の遺伝子を受け継ぐ、一人息子の工藤龍尾。静岡の寮暮らしだった彼は東京で行われる選手権に備えて、東京にある実家へと帰って来ていた。





「タイトルは全て取った、高校サッカーに居てもこれ以上の成長は無い。一刻も早くプロに来るべきだ」



「分かってる、今度の選手権で優勝して親父の居るプロの世界へ飛び込む。それが俺の高校サッカーのフィナーレだよ」



 龍尾は2年で高校サッカーはまだ1年続けられるが、康友はこれ以上龍尾がそこに居る事を良しとはしない。



 プロへの登竜門と言われる高校の舞台で、龍尾は八重葉と共に高校タイトルを総ナメし、既に充分過ぎる結果を残している。ポジションは現役時代の父と違うが10年に1人の逸材、その天賦の才を見せつけて、高校No.1GKの座を揺るぎないものとした。




 彼にこの日本の高校サッカー界はあまりに狭い。早く舞台をプロへ移し、本格的に始動し活躍すれば近いうちにオリンピック、A代表の正GKとしてやって行くのも決して夢物語ではない。



 近年の日本には腕の立つGKというのが中々現れて来なかった。日本で名キーパーと呼ばれても、世界のストライカー相手にDFの守備もろとも破られる事が多々あって、日本は守備が駄目だと散々言われて来ている。



 世界だけでなく同じアジア相手でも中々完封が出来ない時もあった。守備は不安視されるが、龍尾はそれを払拭する可能性を持っているGKだ。



 親の贔屓目と思われそうだが、これまで数え切れない程にプロ選手を見てきた康友は、龍尾なら通じると確信していた。その為に早くプロに上がってほしいと、誰よりも願う。




 その道を早く進む為に、龍尾は今度の選手権を高校サッカー最後の大会にする。康友と共に決めていた。














「取材ですかー?」



 立見高校の校長室に呼ばれた弥一、優也の2人。目の前には校長席の椅子に座る校長の姿。彼らはアナウンスで呼ばれて校長室へと来ており、幸も彼らに付き添う形でこの場に居る。



「ああ、インターハイに続き選手権も全国出場を果たした彼らを早いうちに取材したいとの事だろう。無論キミ達の意思は最優先だがね、今度は他校も交えてという形になるそうだが」



「受けます受けますー、何処と一緒かなー♪」



「出来る事だったら……受けます」



 校長の言葉に弥一は何時もの明るい笑顔で取材を快く受け、優也は表情を変えず取材に応じる。



 有力選手である弥一と優也への取材は、梅雨の時期の予選でもあった。



 立見の守備を支えながら、数々のスーパープレーを披露した弥一。後半に出場し、高い決定力でゴールを決めて歳児タイムで有名となった優也。




 高校サッカー界に彗星の如く現れた、ニューヒーローとも言える存在を記者は放っておかないだろう。立見自体も此処まで春からの公式戦をずっと無失点で来ているのだから、そこも興味惹かれたのかもしれない。




「うむ、では受けるという事でよろしいかな高見先生?」



「生徒達がこうおっしゃってますから、彼らに任せようと思います」



 最後に校長が幸へと最終確認を行うように視線を向けると、幸はそれに頷いて答える。




 今度は立見以外の他校も交えての取材。それは翌日行われる事となって、その日2人は全体練習へと戻り、今日の日課をこなしたのだった。











「うわー、北海道以来の豪華なホテル~」



 ホテルのロビーにあるフカフカな椅子へと腰掛け、周囲を見回す弥一。



 都内でも高級という方に入るホテルが取材の場所と、向こうは中々豪華な場所を指定してきた。プロでもないただの高校生を取材するのに、少々規模が大きいのではと思えてくる。



「何を聞かれるか知らないが、手の内とかそういうの調子乗ってポロっと言わないようにしろよ?」



「分かってるって、あ~ふかふか~♪」



 選手権の前に立見の手の内を見せて対策されたら、全国の戦いで大きく不利となってしまう可能性がある。チームの迷惑になるような事は避けようと、優也は弥一にそう伝える一方で、弥一は座り心地の良いソファーを堪能していた。



 こいつは分かっているのかと、弥一の姿に優也はため息をつきたくなってくるのを、ペットボトルのミネラルウォーターと共に飲み込んでおく。



 立見サッカー部への取材という事で、弥一と優也は部のジャージをそれぞれ着用して来ている。豪華なホテルとは場違いに思えて来るが、記者の方が表紙の為にジャージにしてほしいとの事だった。




 今日は他校も交えての対談という形だが、その相手はまだ来ていない。



 来ていないが弥一達、そしてこれから来るであろう相手の方も、お互い今日一緒に対談となる相手を知っている。





 その相手はやって来る。弥一達と同じジャージではあるが、当然ながら立見の物ではない他校の物だ。



 先程まで豪華な椅子を堪能していた弥一も、彼らが来ると意識はそちらへ向いていた。






「よお久しぶり、立見の1年坊主達」



 現れたのは優也と同じように表情を変えず、冷静沈着な男。八重葉の2年エース照皇。



 弥一達へと軽く右手を上げて挨拶し、笑う緑の帽子を被った男。同じく八重葉の2年GK龍尾。




 今回は絶対王者八重葉を交えての対談であり、立見から攻守で活躍する弥一と優也が来たように、八重葉からも攻守を支える2人の天才が出て来て、再び彼らは出会う事となった。

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