表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/652

サイキッカーDF対超攻撃サッカー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『ボールを奪取した辻!前はGKとDF1人、これは西久保寺チャンスー!』



 ドリブルでサイドから斜めに切れ込んで中央に向かう辻。エリア内に入ろうとしている時に立ち塞がるのは、一人残っていた弥一だ。後ろの大門も身構える態勢となっている。



 弥一は飛び込まず、辻の動きを観察するように見る。



 辻の方は弥一へ向かい、1対1で抜き去りにかかろうとしていた。此処で弥一を抜き去れば後は大門だけ。先制の大チャンスなので、辻は勝負する方を選んだ。



 チームで一番ボール捌きの上手さを誇る辻。その彼から繰り出される、体全体を使っての素早いフェイント。大きく動く事で弥一を釣って騙そうとするが、弥一はそのフェイントに全く釣られる様子が無い。



「(騙されないのかよ!)」



 弥一の前で止まり、時間がかかっている辻。このままでは埒があかないと思ったのか、左足を振り上げキックのモーションへと入る。



 シュート体勢。これに弥一はブロックに行こうと動くが、辻はその動きを見ていた。



 今度は釣ったと確信し、キックと見せかけてボールと共に辻から見て弥一の右側を抜き去る。これで後はGKのみだ。








 頭で思い描いていた通りのプレーが行えた辻。その頭を覗かれているとも知らずに。




「!?」



 次の瞬間、辻の顔は驚きへと染まる。




 このキックフェイントで抜き去ったかと思えば、弥一は突破して来る辻が持つボールへと左足を出して、球を正確に捉えると辻の足元から離れて弾かれる。それを弥一はすぐに追えば、左足で蹴り出してクリア。



 ボールはセンターサークル付近まで行き、タッチラインを割った。



『守った神明寺!立見のピンチを東京MVPも取っている1年DFが救った!』



『フェイントに釣られず冷静でしたね、あの状況で飛び込まず見ていられるとは……』




「ごめん!抜かれた!」



「いいよー、向こうのスピードこれで把握したよね?」



 自分が抜かれてピンチを招いた事に翔馬が弥一へと謝罪。それに弥一は辻のスピードをあれで覚えたか、翔馬に問いかけると彼はこくんと頷く。



 栄田が高さあるストライカーなら辻はスピードと技のウイング。このFW2人が西久保寺の攻撃の要だ。無論4トップのうちの残り2人も油断出来ない。




 西久保寺のスローインから中盤の笠井へ、成海が笠井へと向かい、その前に再びスローインをした辻へ折り返す。辻は大きく左に蹴り出してサイドチェンジ。



「右!5番上がってる!」



 後ろから大門が全体へと伝える。その言葉通り西久保寺の左サイドから、前田が長い距離を走り上がっていた。



 サイドチェンジで送られたボールを、前田は正確なトラップを見せるとドリブルを開始。岡本が迫り体を寄せるが、前田の並外れたフィジカルに体がぶつかった岡本の方が弾き飛ばされる。



 テクニックではなく力のドリブル。それは重戦車のように思えた。



「こんの!」



 今度は田村が前田へと向かい、突破を阻止しようとしている。



「草太ディレイー!!」



 そこに間宮からの大声が飛んだ。無理にボールを取りに行かず、此処は攻撃を遅らせろという狙い。田村は前田へと突っ込んでボールには行かず、彼の前に立ってパスコースを消す動きを見せる。



「チャド!」



「!」



 前田を呼ぶ声が耳に入ると、フィールド中央に土門が上がって来る姿が見えた。前田だけでなく土門まで上がるDF2人の攻撃参加。



「ロング来るよー!」



 弥一はゴール正面、40m以上の距離に居るであろう土門を見て、彼は撃って来ると判断し、声を上げる。



 心で彼が撃つ気満々なのが、分かりやすく伝わったからだ。




 その通り、前田から中央への折り返しが来ると、土門は走り込んでからの右足の甲でボールを蹴る。力強い右足のインステップキックは彼のパワーがボールに宿ったかの如く、勢いよく飛んで立見ゴールへと強襲。



「うぐ!」



 このシュートが間宮の肩に当たりシュートブロック。ボールは零れると転がって立見のゴール前、これを影山がボールを拾う。その直後に栄田と島が素早く詰めていた。



 西久保寺のハイプレスがこの時動き出し、影山へと襲いかかる。二人がかりでボールを取りに行き、左右から影山を挟み込む形となる。



「(水島駄目だ、辻……!)」



 影山は左の翔馬へパスを出そうと左を見るが、傍に辻の姿が確認される。影山がそこへ出して来ると思って先回りしたかのように。



 このまま出しては辻に取られる可能性があり、左へのパスは出せない。




 その躊躇の間に栄田の長身による、長い右足が影山のキープするボールを捉え、影山の足元から球は離れてしまう。




 再びボールが流れて、これを拾ったのは西久保寺の中盤若杉。もうかなりの西久保寺の選手が立見のゴールへと迫っていた。



 息つく暇もなく西久保寺の攻撃は続く。若杉は右にスペースが出来てると見れば、辻をそこに走らせようと一瞬辻を見た後、浮かせるようにボールを蹴り上げ、立見は左サイドの空いているスペースを突かれる。



 この一瞬のアイコンタクトが伝わったか辻は既にスタートを切って走っており、ダッシュが遅れた翔馬よりも速く、右の空いているスペースにたどり着こうとしていた。





 だが辻が辿り着くよりも更に速く、弥一が真っ先にこのボールへ追いつきクリア。再びボールはタッチラインを割る。



 再び弥一が西久保寺の攻撃を阻止し、連続攻撃の流れを一時的に断ち切る事に成功。






「うーん、押し込まれてきてますね~」



 ベンチからマイペースに見守っている彩夏、隣では幸がハラハラした様子で試合を見ていた。



「向こうはハイプレス、そしてそれに合わせてDFラインもハイライン…」



 京子の視線の先にはラインを上げている西久保寺DF。これに立見のベンチは動く。



「上村君、歳児君、後半の頭から行くつもりだから準備して」



「はい」



 京子から言われて、優也と武蔵の2人はベンチから立ち上がりアップを開始。






 試合の方は西久保寺がペースを掴んだか、攻撃の回数が多くなり立見ゴールに何度も襲いかかっていた。



 4トップや中盤の2人に加えて、左サイドの前田による積極的な攻撃参加。この攻撃布陣で東京予選の今大会最多得点を叩き出しており、決勝戦もその姿勢は変わらない。



「チャドー!」



 右手を上げて要求する栄田、だがそれを見ていた弥一は叫ぶ。



「間宮先輩9番!」



 ボールを要求する栄田ではなく、もう一人のセンターに居るFWのマーク。間宮にそっちへ付くように弥一が言うと、間宮は反応して9番に向かう。




 すると前田のアーリークロスが9番の方へと向かう。



「(マジで来たし!)」



 内心でそう思いつつも、間宮は相手の9番と競り合い頭でクリア。この空中戦をしっかりと制した。




「すぐ蹴り出してー!」



 弥一の声に翔馬はその場でキープせずに、ボールをすぐに蹴り出す。近くには辻が迫ろうとして、隙あらばボールを奪い取ろうと企んでいたので、キープしたら先程みたいにやられる。同じミスは繰り返さない、繰り返させない。







「(中々決定的なチャンスをくれない……本当、たいした読みだな彼は)」



 西久保寺ベンチに座り腕を組んで静観する高坂の視線。その先に居るのは指示を送る弥一の姿だ。



 支配率は上回っている。ただしフィニッシュまでは持っていけてはいない。







 ピィーーー




 センターサークル付近。立見寄りの右タッチライン際で立見側のファール。これに審判は笛を鳴らし西久保寺のFKだ。




 流石にこれは距離が遠く直接は難しい。



 するとこのFKで動き出す者が居た。



『おっと、これは西久保寺のGK小平が向かっている。これは彼が蹴るようです』




 前半から代わって入った小平がゴールを離れて、立見陣内にセットされたボールへ近づく。更に立見ゴール前に土門や前田と長身のDFが近づいていた。





「GKまで攻撃的かよ……!」



 DFだけでなくGKまで立見陣内へと踏み込んで来たのを見て、豪山は思わず呟いた。




 なんとしても得点する、その意思が西久保寺全体から伝わって来る。



 ゴールを守る弥一にはそう思えたのだった。




「此処失点無しで乗り切るよー!」



 どちらにしても彼らには1点もやらない。相手が超攻撃的だろうが、それは何時もと変わらない。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ