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超守備的なチームとの勝負

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 11月が近づき、選手達の身に纏うユニフォームが全体的に半袖から長袖へと代わる。それだけ今日は肌寒い日だった。



 これが本大会の12月、1月となれば更に厳しい寒さとなり、フィールドを駆け回る選手達も出番までコートが必要となるだろう。




 準決勝となる会場に立見は一足先に到着し、対戦相手チームはその直後に現れる。



 今日の相手は粘り強い守備が持ち味で、東京屈指の守備力を誇る北村高校。



 夏の予選では真島に惜しくも敗れた彼らだが、今回の予選を此処まで勝ち上がって来た。立見と同じく此処まで無失点で来ていて、自慢の守備力は更に磨きがかかったのを証明していた。




 アップをする両チーム。そこにボールをリフティングして、此処のフィールドとボールの感覚に慣れていく弥一に近づく影がある。



「よ、東京MVP」



「んん?」



 声をかけてきたのに弥一は気付き、リフティングしながら視線を向ける。そこには坊主に近い短髪黒髪の男子が立っていた。北村のジャージを着ているので、北村のサッカー部員であるのは間違い無い。



 身長は180cm程、立見で言えば間宮ぐらいと思われる。



「あー、確か原中さんー」



「こっちを存じてくれてたとは嬉しいもんだな」



 弥一は目の前に居る人物を知っていた。知り合いという訳ではない、北村の試合を動画で見ていて、それで知っているだけである。



 目の前に居る男子は北村高校のDFである原中治はらなか おさむ。鳥羽と因縁ある男子だ。



「そりゃあ知ってますよー、準々決勝じゃ相手のシュートを至近距離の顔面で受け止めてましたよね」



「おお、ありゃまいった。鼻血が中々止まらなくて大変だったよ」



 準々決勝で北村は東京の名門校である水川学園と試合していた。その試合では水川に攻め込まれる展開だったが、北村が粘って守りゴールを割らせず、原中は攻め込まれる中で水川にエリア内でシュートを撃たれて、至近距離でそのシュートを顔で止めるブロックをしてみせたのだ。



 ピンチを凌ぎ原中のガッツ溢れるプレーで、会場から歓声と共に拍手が起こり、原中はその中で鼻血を出しておりフィールドから一時出ていた。



 そして治療を終えた彼は再び戻り、最後まで北村の皆でゴールを守り抜き水川戦は1-0で勝利。



 同じDFというポジションではあるが、弥一と原中では体格の違いもあってプレースタイルは全く異なる。弥一が先読みして気づかれず攻撃を未然に防ぐアサシンタイプなら、原中は身体を張って相手の攻撃を止めるファイタータイプだ。



「真島に、鳥羽にあの時負けてなきゃ前の予選で俺らは戦ってたかもしれない。その鳥羽を倒したお前に今日俺らで倒させてもらうぜ」



「うわー、東京屈指の守備力持つ北村さんからもマークされてるんですねー」



「この東京で今お前らをノーマークにする高校なんか無ぇだろ」



 自分とDFのタイプが違う弥一の事を原中は当然知っている。



 自分達が勝てなかった真島に勝利し、鳥羽を止めたDFとして。



 この小さい身体であの八重葉ともやり合い、天才ストライカー照皇とも渡り合った。こんな小さくか細い彼の何処にそんな力があるのか、実際の弥一を見れば原中には不思議でしょうがない。



 当然その弥一が実は心を読めるというのは、原中が気付く事は全く無かった。




「ま、今日はよろしくな。負けねぇけど」



「こちらこそー♪」



 会話もそこそこに原中はアップへと戻って行き、弥一はその後ろ姿を見ていた。




 無失点同士の試合、特に今日は1点勝負になる確率が高い。東京屈指の守備力を誇る北村からなんとしても点を取る。それがこの試合最大のミッションとなるだろう。







「此処まで無失点で来てる北村。システムは5-4-1を多用していて守備重視の戦術で徹底して守り、相手に得点を与えないサッカーで彼らは勝ってる」



 立見のロッカールームで選手達へと、ホワイトボードの前に立つ京子が北村の特徴について説明。守備のチームとして元々有名であり、今大会も守備に拘りスタイルに変更はなかった。



「前回真島にやられてからすぐぐらいに夏の長期合宿を開始してたらしい。組織としての完成度はおそらく東京で随一だろうな」



 成海からの説明も入り、北村の組織的守備はブロック問わず今大会No.1、それ程に今の彼らの守備力は強固なものだ。




「まともに崩すのは難しそうだから鍵となるのはセットプレー、フリーキックやコーナーキックでチャンスを物に出来れば勝機はある」



 正面からまともに崩すのは厳しい感じがするので、北村から得点をするならば今まで以上にセットプレーが重要になってくる。この試合でそのセットプレーをどれだけ出来るのか分からないが。





「ん?」



 そこに弥一は自分のカバンが少し揺れている事に気付き、カバンを開けるとスマホが振動を起こしており、弥一がスマホを見ればそこにはメッセージが届いていた。




 今日の準決勝キミの勝利を願ってるよ




 スタンプの可愛い美少女のエールと共に輝咲のメッセージ。それが弥一のスマホに表示されている。




 当然勝つよー♪



 弥一はこれにVサインのスタンプ付きで返信。





 その後に弥一は立見の皆と共に準決勝のフィールドへと、立見の長袖ダークブルーのユニフォームを身に纏い向かった。







『東京予選も準決勝を迎えました、今回はAブロックから大会屈指の守備力を持つチーム同士の激突!どちらも無失点で来ている立見VS北村!』



『何時も以上に1点を争う試合になりそうですね、北村は前回の予選からかなり強化してきてますから。夏の長期合宿の効果が出てますよ』




 準決勝のフィールドに出揃う立見と北村の両イレブン。流石準決勝ともなると、両校の応援団だけでなく一般客の入りも多い。盛り上がりを見せる中で両チームが円陣を組んでいた。




「立ち上がり、まずは深追いせずじっくり行くぞ。速攻カウンターに要注意だ」




「立見GO!」



「「イエー!!」」




 成海から作戦の確認の後、恒例の掛け声。それからフィールドに選手達が分かれポジションにつく。




「特別な意識は無しだ、北村のやる事は誰だろうが変わらない。守り勝つ!」



「「おう!」」



 北村の方も気合を入れ、各自がポジションにつき試合の準備は整った。






 ピィーーー




 試合が開始。ボールは立見から始まり、落ち着いてパスを自軍寄りの中盤で回して行く。




「(がっちり守ってやがんなぁ)」



 前線に一人居る豪山。彼は北村陣内へと入っており、周りは北村の選手が多く居る。スペースは特に無く、徹底して裏には抜けさせないという意思が感じられる。




「(これパス出しづらいかも)」



 今日はベンチスタートの武蔵。序盤から守る北村に、スルーパスを通すのが困難だと見ていてそう思えた。隣に居る優也をこの場合どう活かすべきか考えさせられる。




「てぇー!」



「うぉっと!」



 ボールをキープする間宮。そこに相手FWからの寄せが来て、間宮からボールを奪おうとしている。



 奪われたら一瞬で大ピンチとなるので、間宮はこれを渡さず躱すと大きく前線へと右足で蹴り出す。闘志溢れるファイタータイプのDFだが此処は足技を魅せてくれた。



 豪山がDFに競り勝ち頭で落とすが、これを先に北村へ拾われて攻撃は失敗。




 北村の方はボールを持つと、安全かつ確実にボールを回していく。立見の守備が整ってる今あまり積極的な攻めには出ない。



 立見が奪おうと迫って来ると、前に大きく蹴り出してセーフティーにクリアし、時間を消費していった。








「チャンス全然ありませんね~……」



 ベンチで試合を見ている彩夏の表情は冴えず。今目の前の試合では立見がボールを持っているが、北村のFWも献身的に守る超守備的陣形に、チャンスは中々作れずセットプレーのチャンスも貰えない。



 どちらも中盤や最終ラインでプレスやインターセプトによって、満足行く攻撃は出来てなかった。




「ううん、もう相手少しでも出て来てくれないかなぁ!?」



 じれったい展開に幸も北村もっと出て来いと願う。無論そう念じた所で彼らが素直に前に出て来る訳は無いが。






「うお!?」



 右サイドを行く田村、しかしそこにも北村の選手2人がかり。立見の右が優れてる事も把握しており右への対策もしている。





「うらぁ!!」



 原中の闘志溢れる守備。そこから繰り出されるショルダーチャージに立見の岡本はバランスを崩され転倒。



 笛は鳴らず原中はボールを大きく前へ蹴り出す。此処もセーフティーなクリアだ。






 大きくクリアされたボールを弥一はトラップし、足元に収める。立見の陣内に北村は攻め込んで来ていない。前半終了も近いので、このまま0-0で良いという狙いなのかもしれない。




「(無失点はうちのチームだけで充分だよっと!)」



 北村の無失点記録を破ろうと、弥一は此処で動き出す。

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