表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/651

東西のライバル2人は互いを認め合う

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 合同合宿は4日目。この日は立見と最神による練習試合が組まれていた。



 滅多に出会わない関東と関西のチーム。互いにタイプの違うサッカーをするので、得られる物はより多くあると両者合意で実現したカードだ。




「最神第一は攻撃的なチームで技術が高い。特にOMFの三津谷光輝が1年ながら司令塔を努めて彼が主に攻撃の起点になってる。後はCDFの八神想真も積極的に上がって得点に絡んだりするので彼の動きは守備だけでなく攻撃でも要注意ね」



 タブレットを操作し、大阪予選を調べていた京子。



 最神のインターハイ予選の戦いを見てみれば、2桁得点の試合が2つと派手な勝利をしている。それ以外も多くの得点を決めており、攻撃力の高さが分かりやすく現れていた。



 一方守備の方では最初の方で1失点しているものの以降は0スコアが並んでいて、大阪予選は失点1。攻撃的なチームだが守りが弱い訳ではない。



 攻撃は最大の防御、最神のサッカーがそれを体現していた。




「まあ今日は練習だから、気負わず強い人達とのサッカーを楽しんで!こういうのは当たって砕けろ、よ!」



 幸は滅多に無い関西の強豪との練習試合に、部員達が緊張していると思って明るく声をかけていく。



 砕けたら駄目だろう、とそれぞれの部員がそう思いつつも、皆声を出して気合を入れ、フィールドの方へと向かって行った。





「練習試合やからって気ぃ抜いたプレー無しやぞー!派手にかまして勝ってこうやー!」



 フィールド上の最神サイド。その後方から想真が声の音量を上げてチームを盛り立てる。よく見れば彼の右腕にキャプテンマークが巻かれているのが見えた。


 立見が馴染みであるダークブルーのユニフォームに対して最神のユニフォームは黒でGKはオレンジだ。




「あいつ、1年なのにキャプテンマーク身に付けてる……何でだ?」



「別に何も不思議な事はあらへんよ、うちは一番上手くて負けず嫌いの奴がキャプテンを務める。ただそれだけの話や」



「あ」



 立見ベンチを一度出ていて戻ろうとしていた時に、摩央の目が想真の姿を捉え、右腕に巻かれた物が見えて立ち止まる。そこに最神の監督、石神が摩央へと呟いた疑問に答えていった。摩央は石神に対して急に目の前に現れた事に、若干驚きつつも頭を下げる。




 一番上手く負けず嫌いの奴がキャプテンだと石神は迷いなく言い切り、摩央からフィールドに立つ想真へと目を向けた。



「あいつの場合はホンマに負けるのが嫌みたいでなぁ、インターハイで2回戦敗退の時とかフィールドで我慢出来ず大泣きしとった」



「……」



 インターハイで敗退が決まった時に大泣き。石神の言葉を受けて、勝気な想真の姿を見る摩央には想像がつかない事だ。



 誰だって大事な公式戦の大会で負けるのは嫌だろう。そして負ければ誰もが悔しいと思い、涙を流したりするのは普通だ。想真は人一倍そういう気持ちが強いらしい。




 弥一と同じようにインターハイで敗北を、悔しさを味わっていた想真。



 次の目標は選手権の優勝。そこに狙いを定め、この立見との練習試合で更に己を高めんとしている。




「ほあ~」




 立見のベンチに此処が自分の席とばかりに飛び乗り、練習試合をフォルナは身守るかのように見ていた。








 試合の方は立見が攻める展開。ボールを持つ成海に最神の選手が2人がかりで詰める。



「(寄せが早い!)」



 最神DFが早くも迫って来るのが感じられて、成海は此処で捕まらんと左サイドへボールを蹴り出し展開。そこを走り込むのは新たに左サイドバックとして抜擢された翔馬だった。



 中々の足の速さでこのボールへ追いつきトラップ。そのまま左サイドを駆け上がってボールを運んで突き進む。



「14フリー!」



 中央から何時の間にか影山が上がっており、マークが薄い状態。そこを想真が見つけてコーチング。これで中央への折り返すパスコースを塞ぎに行く。



 最神のエリア内を翔馬は見る。中には長身や成海が入っているのが見えて、此処は素直に豪山の頭に合わせようと左足で翔馬はクロスボールを高く蹴った。



 相手DFに競り勝ち、豪山のヘディング。額へと当てて最神ゴールにボールが飛んで行くが、そのコースに飛び込んでいる者が居る。



 球はその人物の身体へと当たり、シュートを弾かれる。想真が豪山のシュートを読んでブロックに成功していた。



 ボールは右サイドへと流れ、最神のDFがこれを大きく蹴り出してクリア。タッチラインを割り立見ボールとなる。




 それを見て想真はエリアを離れ、動き出している。投げる田村の視界に入らぬようにチャンスを伺う。




 田村のスローイン。岡本がこのボールを受け取ろうとした時、横入りする者が突然現れる。



「やべ!?」



 そう思った田村だったが遅かった。



 岡本へのスローインを想真が詰めてボールを奪い取り、中央に蹴り出してマイボールにしていた。




「両サイド上がってるよー、気をつけてー!」



 これを見て弥一の方はカウンターが来ると、相手の両サイドが上がって来た姿を見ながら、DF陣へと声をかけていく。



 チャンスと見ればすぐ攻撃に出るのが最神のサッカー。立見ゴールへと迫り来る迫力は八重葉にも負けない勢いだ。




 司令塔の光輝がボールを持つと柔らかいタッチのドリブル、ステップを見せていき、詰め寄っていた豪山を躱しきると前線のFWへ縦に1本のパスを出す。



 ストレートなスピードある低い弾道のパス。そのFWに間宮が迫りトラップした瞬間を潰そうと目論んでいた。




 だがFWはトラップをせずダイレクトで左へと流す。そこには左のSDFが上がっており、田村が追いつく前にクロスを上げる。



 高く上がり外へと逃げるようなボール。立見の長身DMF川田がこれを頭でクリアしていった。




 その零れ球に誰よりも速く詰め寄る想真の姿。




「(いただき!)」



 シュートフォームに入る時、良い感じだと確信。これなら入ると良いシュートが撃てる予感がこの時点で伝わって来ていた。



 その考えと共に得意の左足を迷いなく振り切り、ボールの芯を捉えて真っ直ぐ立見ゴールへ飛ぶ。




 それに対してシュートに向かう存在があった。




 想真のシュートを心で読んでいた弥一。想真のシュート力は浜辺で見た通り、彼の見かけによらず豪快なシュートを撃って来る。



 それでもゴールに入れさせはしない。その思いと共に弥一は自分の右足に想真のシュートを当てて弾き返していた。




 ボールは弾かれて再びタッチラインを割る。





「(久々やなぁ、決まる思ったシュートを防がれんのは。ホンマどういう読みしとんねんこのチビは)」



「(顔に似合わず豪快なパワーシュート撃っちゃって、あの大城って人にも負けてないかも)」



 弥一と想真、互いの顔を見れば2人とも軽く笑い合う。




 互いに攻めては守りを繰り返す。猛暑の中で選手達は懸命に動き回るが、スコアは動かず練習試合は0-0のドローで終わっていた。









「結局お前との勝負に続いて試合も決着はお預けかい」



「だねー」



 合宿所の宿にある大浴場。大勢が入れる温泉で弥一と想真はそれぞれ湯に浸かって試合の疲れを癒し、汗を流していた。



 もうすぐ合宿は終了を迎える。慣れ親しみつつあった宿の食事やこの温泉ともお別れとなるので、最後に存分に味わっておく。




「最初関西の合宿所でええやろ、なんでわざわざ遠い関東まで行くねんとかあったけどな。なんやかんやで楽しかったわ」



「合宿も良いもんだよねー、早く起きるのだけは面倒だけどさぁ」



「それについてはホンマ同意見や。早朝はアカン」



 互いに朝が得意ではない海外暮らしの経験を持つ者同士。そこは気が合っていた。



 気づけば弥一と想真、結構一緒に居て色々あり、互いに楽しいと思えた今回の合同合宿。彼らにとって色々良い合宿となった事だろう。




「なあ、神明寺」



「ん?」



 名前を呼ばれて弥一は想真の方へと振り向く。



「選手権の全国、勝ち上がってきぃや。俺は一足先に待っとるで」



「あはは、そういう事言うの想真で二人目だねー」



「はぁ?俺より先に既にお前へ言ってたんか、誰やねん抜け駆けかましよった奴は!」




 先に全国で待つと勝気な笑みで弥一へと言い放つ想真に、弥一は以前照皇からもそういう事を言われたのを思い出し、二人目だと無邪気に笑った。



 既に王者が先に言っていたと知らずに、不本意ながら二人目と想真はなってしまったのだった。









 こうして合宿は終了。最神は立見と別れて西へと帰って行き、立見も東京へと引き上げる。



 帰る電車の中で揺れながら、席に座る弥一はケージの中に居るフォルナへと目をやる。思えばこの白い猫の出会いから、色々この夏起こっていて合宿での事はフォルナが引き寄せたのかもしれない。



 帰ったらフォルナに良いご飯をご馳走しよう。そう決めつつ弥一は揺れる車内で目的地に着くまで一眠りするのだった……。

宜しければ、下にあるブックマークや☆☆☆☆☆による応援をくれると更なるモチベになって嬉しいです。


サイコフットボールの応援、ご贔屓宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ