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007:三大欲求には抗えない (睡眠欲<食欲<性欲)

 はぁはぁ……ぜぇぜぇ……うぐはっ……。


 オーガこと鬼の魔物から逃げ切った私は、物陰(ものかげ)(ひそ)んで呼吸を整えていた。


 ドラゴンよりは遅かったけど、知らない道だから逃げるのが大変だった。

 というかなんなの!?

 ドラゴンとかオーガとか!

 この洞窟(どうくつ)意味わかんないんだけどー!!

 最初にドラゴン、その次オーガってベリーハードすぎやしない!?

 私、か弱いミミックちゃんなんですけどー。

 神様、設定間違ってませんかー!?


 やっぱり神様から返事は返ってこない。

 それでも脳裏には、レベルアップを()げる不思議(ふしぎ)な声を聞いた記憶が残っている。

 あれは夢なんかじゃない。

 そうじゃなかったら満身創痍(まんしんそうい)だった体が復活していることに対する説明ができない。


 ほら、ラノベとかアニメによくあるステータスの解説とかスキルを教えてくれたりしてくれるあの能力。

 私にもあるのだとしたら……


 この状況どうしたらいいですかねー!?

 私、何したらいいんですかー?

 やっぱり魔王(まおう)とか倒さなきゃいけない感じー?

 教えてくださーい!


 やっぱり誰も返事はしてくれない。

 みんなだんまりを決め込んでる。

 そろそろミミックちゃん寂しいよ?


 それにだんまりを決め込むんだったら、私好きなように生きるんだからねっ。

 イケメン冒険者と恋に落ちて、私の〝初めて〟を奪ってもらうんだからっ。

 箱生(はこせい)謳歌(おうか)して、ハッピーエンドで終わるんだからー!


 とまあ、そんな感じで。


 そういえば、オーガから逃げてるときはモンスターがたくさんいたな。

 逃げるのに必死だったからよく見てなかったけど、明らかにここの層はドラゴンカップルがいた下の層とは違う。

 やっぱり下の層はドラゴンカップルの愛の巣(なわばり)だったんだな。

 ってことは、つまりあれか。

 ドラゴンカップルはここの洞窟の……ダンジョンのボス的な存在ってことかな。

 そうじゃなかったら、ドラゴンカップル以外の生き物がいないの異常だもん。

 ダンジョン系でボスがいるのって最下層とか最奥部(さいおうぶ)とかだよね。

 私は上り坂を上ったから……もしかしたら最下層にいたのかも。

 よりによってなんで最下層に転生するのかなぁ。

 ベリーハードにも程があるって……。

 この洞窟何層まであるんだろう。

 私はいつイケメン冒険者に会えるの!?


 はぁ〜 (クソデカため息)


 クソデカため息も出ちゃいますわ〜。

 とりあえず全力で逃げてお腹が空いたから、ここらで一旦お食事としますか。

 非常食の宝石を〜。


 私は舌を使って体の側面に埋め込まれている宝石を器用に取った。


 この宝石も綺麗だけど、お気に入りの宝石はもっと綺麗だったなぁ。

 もっと濃い青でツルツルのテカテカのピカピカで。

 ものすっごくパワーを感じた。パワーストーン的なやつだねっ。


 結局生きてたわけだし、食べなきゃ良かったかもしれない。

 あの状況だったから味なんてわからなかったし。

 なんだか、勿体ないことしたよなぁ。後悔、後悔。

 まあ、過ぎたことは仕方ないか。

 宝石なんてまた見つければいいしね〜。


 それじゃ、いただきま〜す。


 ――ガリガリバリバリッ。


 うひょぉおおおおおー!!!

 やっぱり美味しい!!

 言葉に表せられないほど美味しいよぉ〜!


 どうしよう。もう一個食べたくなってきちゃった。

 非常食のつもりだったけど……いいよね?

 もう一個くらい大丈夫だよね?

 だって逃げるの頑張ったんだもんっ!

 ご褒美を与えなきゃだよねっ!


 舌を器用に使い体の側面に埋め込まれている宝石を取った。

 そして宝石の輝きを楽しむことなく口の中へと放り込む。


 ――ガリバリバリッ。


 くぅうううううー!!!

 全身に染み渡るこの美味さ!

 生きてるって素晴らしいー!


 も、もう一個だけ……。

 飛び跳ね続けてお腹が空いちゃって。

 だからいいよね。

 最後、最後だから。


 ――ガリガリバリバリッ。


 次が本当の最後っ。

 これ食べたらもう終わり。


 ――ガリバリバリッ。


 私は悟る。これ止まらないやつだ、と。


 ――ガリガリバリバリッ。


 私は体に埋め込まれている宝石を――非常食を全て食べてしまった。

 ミミックに転生したとしても欲望には逆らえないものだ。

 特に三大欲求(さんだいよっきゅう)にはね。

 腹が減っては戦ができぬ、ってね。

 食事は大事よ、大事。


 さて、腹も満たされたことだし、寝るか!!!


 ここの層はモンスターが多いけど、私はミミックだ。

 モンスターは宝箱には興味ないはずだし大丈夫だろう。

 まあ、幸いなことにモンスターの気配も感じられないし。 (虫は多いけど)

 何かあってもドラゴンの攻撃に耐えたこの頑丈なボディがあれば大丈夫だ。

 それに眠ってる私をイケメン冒険者が起こしてくれるかもだし〜。

 きゃ〜。ロマンティック〜。


 ぐへへへっ。興奮してきたっ。

 興奮して眠れないかも〜。

 でも妄想は悪いことじゃないもんねっ。

 というか前世でも寝る前は妄想してたしっ。

 そんでいつの間にか寝落ち。

 そう考えればルーティーンの妄想は欠かせない。


 イケメン冒険者とあんなことやこんなことを〜。

 勇者を口の中で転がして気持ちよくなって〜。


 ぐふっ。じゅるり……。


 よだれが止まらん。

 本当にイケメン冒険者が私を起こしにきてくれればいいな。

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ミミックちゃんの性獣譚 〜欲求不満の〝パンドラの箱〟が異世界を救う〜
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