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018:なんちゅう見送りだ (ネズミだけに)

 ぷはぁー、食った食ったー。


 キングラットを倒して10日くらいが過ぎた。

 まあ、私の腹時計で計算してるから、10日かどうかなんて知らないんだけどねっ。

 それにこの世界も前世と同じように1日という概念が存在するかわからない。

 存在したとしても1日が24時間すらもわからない。

 でもここはわかりやすく10日ということにしておこう。

 その方が私としても都合がいいからねっ!


 で、この10日間は、食って寝て食って寝て、たまにネズミさんたちと遊んで、を繰り返した。

 有言実行ってやつ。私偉いっ!!

 すっかりネズミさんとも仲良くなったよ。

 まあ、ネズミさんたちからしたら私は、キングラットの支配から解放した英雄みたいな存在だもんね。

 ネズミさんは賢いからそういうことも理解してると思うよ。


 宝石と魔石(たべもの)がある。

 熟睡してても襲われない。

 ネズミさん(話し相手)がいる。


 何ひとつ不自由ない生活を送ってる私だけど、そろそろこの拠点から離れようと思ってる。

 なぜかって?

 そりゃ決まってるだろ。

 イケメン冒険者に会うためよっ!!


 この10日間――いいえ、ミミックちゃんに転生してからずーっと性欲が満たされてないんだもんっ。

 そろそろイケメン冒険者に私の〝初めて〟を奪ってほしいわ。

 それにここにいると余計に悶々(もんもん)としてきちゃって、頭がおかしくなりそうだからね。

 だって見てよ。この大人のおもちゃの数を!!

 200……300くらいあるよ?

 どんだけ集めたのよ。そしてバリエーション豊富!!

 こんなのずーっと見てたら誰だって悶々(もんもん)してきちゃうでしょ?

 極め付けはネズミさんたちよ。

 恥ずかしげもなく私の目の前で交尾を始めちゃうんだもん。

 新手の拷問よ。拷問!


 たまにこの悶々を晴らすため、鍵穴に大人のおもちゃを突っ込んでみたけど全然ダメね。

 電動歯ブラシを使ってるような感覚。ほぼ無よっ!

 逆に切なくなったわ。


 だからこの性欲をいち早く発散するためにもこの洞窟から――ダンジョンから脱出しなくちゃいけないの。

 ということで荷造り荷造り〜。


 非常食の宝石と魔石を体に埋め込んでお洒落に着飾ったら、はいっ、荷造り終わりー。

 レベルアップしたからなのか、体に埋め込められる数が増えてたんだよね。 (めちゃくちゃラッキー)


「「「チュチュチュチュッ」」」


 おっ、ネズミさんたちが寄ってきたぞ。

 私がここを出ようとしてることに気付いたのかな?

 さすが賢いネズミさんたちだ。


 というか、こんなに数多かったっけ?

 キングラットと戦った時よりも5倍くらい増えてない?


 まあ、いいか。平和になった証拠だ。


 この子たちがいたおかげで退屈せずに済んだからね、最後はちゃんとお別れの言葉で別れよう。


「キィイイイイイィイ (ネズミさん今までありがとう。楽しかったよ)」


「「「チュチュチュチュチュッ」」」


「キィイイイイイ (幸せに平和に暮らすんだよ)」


「「「チュチュチュチュチュッ」」」


 言葉は伝わってないと思うけど、気持ちは伝わったよね。

 私が喋り始めた瞬間に交尾を始めたネズミさんたちが半分以上いたけど……。

 他では見ることができない貴重なお見送りとして受け取っておくよ。

 子孫繁栄(しそんはんえい)頑張ってくれたまえっ!!

 私も頑張るからさー。


「チュウチュウチュウッ」


 おっ、キミはネズミさんたちの中でも、ちょっとだけ大きなミディアムラットくんではないか。

 どうしたのかな?


「チュウチュウチュウッ」


 こ、これは!?

 ミディアムラットくんの背後に青色に輝く綺麗な宝石があった。

 私が宝石の壁があった場所で見つけたものと同じだっ!

 どうやらこの宝石をここを出ていく私に渡しに来たみたいだ。

 なんて賢くて律儀(りちぎ)なネズミさんなんだ、キミは。


「キィイイイイ? (貰っていいの?)」


「チュウチュウチュウッ!!!」


 ミディアムラットくんは宝石を私の方へ転がした。

 旅立ちのプレゼントで間違いないようだ。

 それなら受け取らないわけにはいかないよね。

 でもこれ以上体に埋められないし……まあ、食べちゃえばいいか。

 本当はお守りとして取って置きたかったけど、食べるのもありだよね。

 食べ物なんだし。(私にとっては)


 ということで――いただきまーすっ!!!


 ――ガリガリボリボリッ!!!


 くぅうううー。これこれ〜。

 全身に染み渡る〜。

 現在の言葉じゃ表すのが不可能なほどの美味しさ。

 死の底から復活できたのも納得だよ〜。

 あの時は本当に死にかけた。もはや死んでたからね。

 それにしても美味しいなぁ。


「キィイイ、キィイイ (ありがとう、ミディアムラットくん)」


 青く輝く宝石をくれたミディアムラットくんに感謝を告げたその時だった――


 《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル11に上がった》

 ぬぉおおおおおおおー!!! (歓喜)

 《個体名〝ミミックちゃん〟はレベル12に上がった》

 キタキタキタキター!!! (大歓喜)


 私の脳内でレベルアップが告げられた。しかも連続で。

 あれから一度もレベルアップしなかったのに、一気に2レベも上がったぞ!

 経験値が貯まってたとはいえ、さすがだな、青い宝石。


 よしっ!

 幸先の良いスタートだっ!

 最高のプレゼントを本当にありがとうね、ミディアムラットくん。

 それにしても他のネズミさんたちは……まだ交尾してるよ。

 というかほぼほぼ全員交尾してない!?

 最後までちゃんと見送ってよ〜。

 幸先の良いスタートとか言ったの訂正訂正!!

 なん()()()スタートだよ。 (ネズミだけにねっ)


「チュチュチュッ」

「チュチュチューッ!!」

「チュッー!!!!」


 ネズミさんたちの喘ぎ声が私の心に一生残り続けたのだった。

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ミミックちゃんの性獣譚 〜欲求不満の〝パンドラの箱〟が異世界を救う〜
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