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9.倫理

俺達は森の中を進んでいった。


正直、さっきのゴブリンの断末魔が結構ダメージ来ていた。

言葉が通じないのと通じるのじゃ、全然話が違う。

言葉が通じないのに意思疎通ができる者だっているのに、通じているのに意思疎通が取れない。

こんな経験したことがなかった。

命が消えるギリギリまで声が聞こえてしまったのはなかなか慣れそうもない。


ルゼはずっと俺に寄り添ってくれている。

タンク達も俺にモンスターが会わない様に、広めに警戒してくれているみたいだ。


「大丈夫?ハルキさん」

レディア様も心配してくれているようだ。

「大丈夫です。たぶん慣れると思いますから」


異世界で活動するには、モンスター討伐は切っても切れない。慣れるしかないんだ。



俺達が森の中を1時間ほど進んでいると、別のモンスターに出くわした。

スライムだった。


「ハルキさん。私がやります」

ルゼが俺を気に掛けてくれる。


「いや、俺にやらせてくれ」

「わかりました」

俺はスライムに近づき、声をかけた。


「俺の言ってることは理解できる?」

「……………」

スライムの応答はない。

その場でモゾモゾ動いているだけだ。


「ハルキさん。スライムにも会話する知能がないと思われます」

「わかった」

ここは俺がやるしかない。


「ルゼ、スライムの倒し方は?」

「身体の中の核を破壊するか、取り出すかです」

「わかった」


俺は近くに落ちていた木の棒を拾い、スライムの核に向かって突き刺した。

核は体から押し出され、スライムは液状に溶けて行った。


「これで平気?」

「はい!問題ありません。でも大丈夫ですか?」

「うん。少し慣れたかもしれない」

「なんかあったらすぐ言ってくださいね。彼女なんですから」

ルゼは本当に心配してくれている。

「ありがとう」


俺達はちょくちょく出てくるスライムを倒しながら進んでいった。


▽ ▽ ▽


スライムを倒していたら、さっきまでの不快感というか黒い感情はだいぶなくなっているように感じた。


「オンナ!オンナ!」

この声はゴブリンだ。


俺がそう思うと同時に草むらからゴブリンが1体出てきた。


「ハルキさん。ここは私がやります」

「大丈夫。俺がやる」


俺の手には先が鋭くとがった木の棒を持っていた。

さっきルゼに削ってもらっていた。

俺は木の棒を振りかぶり、ゴブリンの胸へ突き刺す。


「イ、イダイ。イタアアアアア!」

ゴブリンの断末魔が聞こえる。

手には肉を突き刺し、骨に当たっているような感覚。

でもこれは異世界では普通の行為なんだ。

木の棒を伝って、ゴブリンの命が消えたことがわかった。


すると目の前に小さなウィンドウが出てきた。

[スキル:『異世界倫理』を取得させました]


「え?ルゼ、目の前になんか出てきたんだけど?ステータスみたいなやつ」

「なんて書いてあります?」

「『異世界倫理』を取得させましたって書いてある」

「異世界倫理?単純に考えると、異世界の倫理観を得たということですかね?」

「うーん。直訳というかストレートに考えるとそうだよね。なんか心なしか、心が軽くなった気がしてるんだよね」

「本当ですか?無理していませんか?」

「うん。この『異世界倫理』のおかげかもしれない」


俺は謎のスキルを取得し、少し心が軽くなった。


▽ ▽ ▽


俺達は森をさらに進む。


するとポンプが俺のもとに飛んできた。

「ハルキ!人の足跡あったよ」

「ほんとに?」

「うん!こっちこっち」

ポンプは嬉しそうにくるくる回っている。


「リディア様、ポンプが人の足跡を見つけたそうです」

「本当?」

「はい。ポンプについて行ってください」

「うん」

俺達はポンプの後を追った。


「ここだよ」

ポンプが居る場所には確かに人の足跡が数個あった。


「リディア様。この足跡を追えば何かしらに出会えると思うのですが、どうしますか?」

「鬼人族に会えるかもしれない。足跡を追おう」

「わかりました」


俺達は足跡を追うことにした。


▽ ▽ ▽


足跡を追っていくと崖壁にぶつかった。


「あれ?行き止まりだ」

周りに足跡がないか調べるが、どの足跡も崖壁にぶつかる。

「タンク。崖の上に足跡があるかもしれないから見に行ってくれる?」

「おう!」

タンクは崖の上を確認しに行った。


「お姉ちゃん、逆方向だったのかな?」

「うーん。その可能性はあるね。タンク君が何も見つけられなかったら逆方向に居ってみよう」

「わかった!」

「わかりました」

俺達はタンクが戻ってくるのを待った。


少し待つとタンクが戻ってきた。

「ハルキ、なんもなかったぞ」

「そうか、ありがとう。リディア様、戻りましょう」

「うん。ごめん」

「大丈夫ですよ」

俺達が戻ろうとした瞬間。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ


地面が揺れ、何かの音が鳴り響いた。


「ん?なんだ?」

「お姉ちゃん!あれ!」

ルゼが指差す方向を見ると、地面に大きい穴が開いていた。


「さっきはあんな穴なかったよね?」

「そうですね」


俺達は穴に近づいた。

すると穴の中から2人出てきた。



1人は濃い赤紫色の肌で額に角が生えている女性。

もう1人は腕が4本生えていて、頭に触角が付いている女性だ。


角が生えている女性がリディア様を見て声を荒げた。

「え?リ、リディア様?ファジャです!覚えていますか?やっと戻ってこられたんですね」


ファジャと名乗る女性はリディア様にどんどん寄って行く。

心なしか目には涙が溜まっているように見えた。


リディア様もファジャに駆け寄って行った。

「ファジャ?本当にファジャなの?」

「はい。ずーっと待っておりました」

「ごめん。だいぶ待たせたね」

リディア様はファジャを抱きしめた。


ファジャはリディアの胸の中で泣き始めた。


▽ ▽ ▽


落ち着いたファジャは少し恥ずかしそうに話し始めた。

「リディア様、ルゼ様。お久しぶりです。今は鬼人族の長をしております、ファジャです」

「ファジャが長?」

2人は驚いていた。


「はい。そしてこちらに居るのは、鬼人族を保護してくれた蟻人族の長の娘のウィノナです」

「お話は鬼人族から聞いています。蟻人族の長の娘ウィノナです」

ウィノナは頭を下げた。


「蟻人族ですか?ここらへんに虫人が住んでいるとは知らなかったよ」

「申し訳ありません。リディア様が魔王に就任するだいぶ前からこの地にこっそり暮らしておりました」

「そうなんだ。本当に知らなかったよ」

ウィノナは少し申し訳なさそうにしていた。


「リディア様、そこにいる人間は誰ですか?」

「ハルキさんの紹介をしないとダメだね。僕達のサポートをしてくれている人間のハルキさんだ」

「人間の協力者?」

少しファジャの視線がきついように感じた。


「ファジャ。ハルキさんはあなたが思っているような人間じゃないよ。僕達を助けてくれた人と同じような雰囲気よ。それにルゼの彼氏よ」

「ルゼ様の彼氏!?」

ファジャはもの凄く驚いていた。


まだまだ質問をしたそうなファジャを抑えて、ウィノナが話を始める。

「みなさん。ここで話し続けるのは少々問題がありますので、一度街に来てもらえますか?」

「街?」

「はい。ご案内します」


俺達はファジャ達が出てきた穴を見てみると、下に階段が続いていた。

「皆さん入って下さい。扉を閉めないといけないので」


俺達が穴の中に入るとウィノナは手を動かした。

すると穴の周りの土が動き、穴は塞がった。


「では蟻人族の街へご案内致します」


俺達はウィノナについて行った。





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