7.デスパペット
ルゼの家の帰ってきた。
空は暗くなっていた。時計を見ると18時を回っていた。
「あっちの世界と時間の差はなさそうですね」
「そうだね」
「ハルキさんとルゼは明日仕事でしょ?あれ?」
リディア様は俺の方をずーっと見ている。
「仕事ですけど、どうしました?」
「ハルキさん。連れてきちゃったんですか?」
「え?」
リディア様の目線の先を見ると、俺の肩を見ていた。
俺の肩の上にはデスパペットが乗っていた。
「え!!来ちゃったの?」
俺が問いかけるとですパペットが答えた。
「い、いや。あの部屋に居たら扉に吸い込まれて、気付いたらここに」
「あー。部屋を移動させたらよかったね」
デスパペット達はきょろきょろしていた。
「こっちの世界には魔力が無いけど、デスパペット達の体調は大丈夫そう?」
レディア様がデスパペット達を心配していた。
「そうだよ!みんな大丈夫?」
「今のところは大丈夫だ」
「「大丈夫!」」
デスパペット達はとりあえず大丈夫そうだった。
俺はデスパペット達が心配なので、魔力の多い俺の家に連れていくことにした。
「じゃあ俺はそろそろ家に帰りますね。デスパペット達も連れて行きます」
するとレディア様は深々と頭を下げた。
「今日はありがとう。来週も申し訳ないけどお願いね」
「はい!任せてください」
俺が帰ろうとすると、ルゼが話しかけてきた。
「ハルキさん。明日はどうするんですか?」
「ん?普通に会社に行くつもりだけど」
「憑代とかって家にあったりするんですか?」
「ん?あーなるほど、仕事終わりに一緒に買いに行く?」
「はい!」
俺とルゼは憑代を買いに行くという名のデートを約束した。
▽ ▽ ▽
翌日、仕事が終わりルゼと共に秋葉原に行くことにした。
会社では今までと変わらずだったので、俺達が付き合うことになったのはばれていないはずだ。
「どういう憑代を買うんですか?」
「うーん。まだ全然わからないんだよね。デスパペットってことはぬいぐるみでしょ?」
「そうですね。フィギュアやソフビ人形でもいいんじゃないですか?」
「あーそっちの方が強そうだね。なんか憑代の特性を使えるようになるから、ヒーローとかがいいね」
「良いかもしれませんね」
俺とルゼは秋葉原の大型家電量販店にあるおもちゃ屋を見ることにした。
「あーこのアニメのキャラクターのフィギュアとかどう?」
「良いですね!超能力で戦う話ですよね?」
「じゃあ炎と氷と雷のキャラのフィギュアを買っておこう」
「いいですね!あーこれはどうですか?戦隊モノのソフビですよ」
「あー放送終了したのに流行ってるやつか。見たことないけど強そう!ルゼ様も配信でゲームやってましたよね?」
「案件でやりましたよ。ハルキさんは配信の話をするときは様を付けて敬語になりますよね」
「まあ慣れちゃってるからね。彼氏で上司で部下なんで」
俺達は良さそうなものを3種類ずつ入れてカゴに入れていった。
デートと言う名目のせいか、ルゼはずっと腕を組んできた。
俺は『サイキックヒーローズ』のフィギュア3体と『超兵器戦隊アームズ』の赤・青・黄と自衛隊員のリアルフィギュアを買った。
会計を済ませるとルゼが居なかった。
探しているとガチャガチャコーナーに居た。
「なんか良い物あった?」
「これかわいくないですか?」
ルゼが持ってたのはゴルフボールよりちょっと大きい球を3つ持っていた。
「ん?何それ?」
「ここ押すと変形するんです。ほら!」
球はパーツが外れて変形し、ロボットになった。
「見てください!これ救急車のロボなんですよ」
「あーでも生き物じゃないから憑代には向かないかもよ」
「あーそうでした…」
ルゼはしょんぼりしてしまった。
「帰ったら、デスパペット達に聞いてみるよ。もしかしたらそれを気に入るかもしれないしね」
「はい!」
慣れないなりにルゼを励まし、家に帰った。
▽ ▽ ▽
家に到着をした。
ルゼは家に泊まりたがっていたが、金土日休んだ分の配信をしないといけないので家に帰った。
魔力は俺から安定供給されることにはなったが、配信自体が好きなようなので続けるみたいだ。
「デスパペット達。憑代になりそうなものを買ってきたよ」
「ありがとう。ハルキ」
「「ありがとー」」
昨夜一緒に居たことで、デスパペット達とは仲が深まったみたいだ。
3体はそれぞれ個性があり、リーダー格のやつと元気な弟系と妹系だ。
「一応何種類かあるから、好きなやつを憑代にしてくれ」
「「「わかった」」」
買ってきた物を並べると、デスパペット達はくるくると買った物の周りを飛んでいた。
「ハルキ、お願いがあるんだが」
「ん?」
「憑代候補に魔力を込めてくれないか?今後ハルキから魔力貰うことが多くなると思うから、馴染み具合を見たいんだ」
「わかった」
俺はいつもの要領で魔力を込めていった。
「どう?これでいい?」
「ありがとう」
デスパペット達はくるくる憑代候補を物色していた。
「どう?決まった?」
「「「うん」」」
そういうとデスパペットの体は地面に落ち、憑代候補を置いてた場所が光り輝いた。
「え?まぶし!」
光りが消えるとフィギュアの中に見覚えのないものがあった。
ハンドボールぐらいの球が3つ転がっていた。
「ん?あれ?」
「ハルキ!とても良い憑代だ!」
「うん!ありがとー」
「これでいっぱい動けるよー」
3つハンドボールが俺の周りを浮きながらくるくる回っている。
「あれ?人型じゃないと魔力の消費が多いんじゃなかったっけ?」
「ん?これは人型じゃないのか?」
ガチャガチャガチャ
ハンドボールは変形をし、人型のロボットになった。
どう考えても、ルゼが見せてくれたよりも精密でパーツも多くなっている。
てかまずサイズがおかしい。
リーダー格は深緑のロボットで腕には砲台のようなものが付いている。これは戦車モチーフみたいだ。
弟っぽいのは赤のロボットで両腕には銃口のようなものが付いていて、背中には金属製の梯子のようなものが付いている。こっちは消防車モチーフだ。
妹っぽいのは白のロボットで背中にはサイレンみたいなのが付いているから救急車だ。
「みんな、体に異変はない?」
「「「うん!」」」
「じゃあ大丈夫なのか」
人型かどうか怪しかったので不安だったが、みんなが喜んでいるのでとりあえず様子を見ることにした。
「みんなの憑代も決まったし名前を決めようか。ってか決めてもいい?」
「いいのか?」
「うれしー」
「ハルキありがとー!」
俺は3体に名前を付けた。
センスがないのがばれないように早口で言った。
「えータンク・ポンプ・ビュラな!」
「「「ありがとー」」」
俺のセンスの無さはデスパペット達にはばれなかった。
俺は選ばれなかった憑代をしまい、みんなに魔力を注いだ。
俺はみんなに外に出ないように伝え、パソコンを開いた。
「ルゼ様の配信はチェックしないとな」
▽ ▽ ▽
昨日の配信は結局2時間くらいの雑談だったから、寝不足にならなかった。
会社でのルゼは真面目に仕事をしていた。
ちょくちょく魔力を与えるためにコソコソ密会はしていたが、なんかそういうのがちょっと楽しかった。
ルゼに球が憑代に選ばれたと伝えたら本当に喜んでいた。
タンク達を見るために今日はうちに泊まることが決定した。
▽ ▽ ▽
家に到着した。
慣れたようにルゼが部屋に入っていく。
タンク達は俺達を歓迎するかのように、周りをくるくる飛んでいた。
「わあ!その体は私が選んだんですよ。タンクさん達はその体気に入ってくれました?」
「ルゼが選んだのか。だいぶ気に入ったぞ」
「僕も!」
「私も!」
「それは良かったです!選んでよかった―」
ルゼとタンク達は和気あいあいと喋っていた。
喋っていた?
「ルゼ」
「どうしました?」
「タンク達は喜んでる?」
「はい!皆さん気に入ってくれたそうですよ」
「ん?」
「あれ?何かおかしいで…すね!何で私喋れてるんですか?」
ルゼは混乱し始めた。
「え?え?なんで?」
「なんか理由があるはずだ、タンク達はなんか気づくことあるか?」
タンク達は悩んでいる。
「あっ!ハルキ!俺達はハルキの言語を喋っている」
「ん?前もそうだったじゃん」
「いや元の世界に居た時は、ハルキが俺達の言語を使っていた」
「じゃあ、こっちの世界に来たことで日本語を理解して使うことができるようになったってこと?」
「多分そうだと思う」
「その可能性はありますね」
ルゼとタンク達は納得している。
俺には難し過ぎてよくわからなかった。
「どういうこと?」
「多分ですが、あっちの世界でも日本語をしゃべれる人ならタンクさん達と会話ができるってことだと思います。そのかわりあちらの言語を喋る人とは今まで通り喋れないということです」
「あーなんとなくわかった。日本語を理解できたタイミングは分かる?」
「いや、ハルキとは俺達の言語で話していたから気付かなかった。この世界に来た時は、日本語というものを喋れていなかったはずだからこの憑代に入ってからだと思う」
「そうだねー。今ルゼと話すまで気付かなかった―」
「私も気付かなかった」
「日本製はすごいって解釈でいいのか?」
「まあ私も分からないので、そういうことにしておきましょう」
俺は理解が追い付かなかったので、ルゼにタンク達の事を聞いてもらうことにして、2人分の晩飯の準備を始めた。
ルゼ様の配信を見るようになってから初めての自炊だ。
出来合いのものが多いが頑張って作ろう。