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6.鬼人族の里

俺達は鬼人族の里に来ていた。

低い山に囲まれた丘のような場所にあった。

里に入るとボロボロの井戸や家だったであろうものがあり、誰かが過去に住んでいた形跡はあった。


「誰もいないですね」

俺がそう声をかけても2人は黙っていた。

自分達を助けたことで何かが起きたと思っているのだろう。


「どうしますか?」

俺が問いかけるとリディア様が口を開いた。

「どこかに移動した可能性もあると思う」

「そうだね。手がかりがあるかもしれないから探しましょう」


俺達は分かれて、手がかりを探しに行った。



「この家はまだ形が残ってるな」

俺は家の中に入る。家具などは置いてあるが、全体的にほこりが被っている。


「うーん。最近人がいた形跡がないな」

俺は奥の部屋に通じるドア開けた。

奥の部屋は壁が壊れて外から入れるようになっていた。


「うーん。何もないなー」

部屋を見ると、ほこりだけでなく砂なども大量にたまっていた。

俺は壊れかけの本棚を見たが読める状態の本は1つもなかった。



「…誰かいる」

「本当だ…」

「もう誰でもいい。助けてくれ」


「え?」

何かうっすら声が聞こえてきた。

「おい!誰だ?声が聞こえてるぞ。」

部屋を見渡すが誰もいない。


「…聞こえるの?」

「ま、魔力を…」

「助けて…魔力をくれ」


俺は声の主を探した。

すると声は先ほど見ていた本棚の方から聞こえていた。


「お願い。魔力を」

「…頼む」

「助けてくれ…」


声の主を探していると本棚の上に微かに気配を感じた。

見てみるとそこには、3体のボロボロの木の人形があった。


「え?この人形が喋ってるのか?」

「…そうだ」

「だ、誰でもいい。魔力を与えてくれ」

「た、頼む…」


俺は少し悩んだが、ボロボロの人形に触れてルゼに魔力を送るように与えた。

思ったよりも少ない魔力しか送れなかった。


「これでいいのか?魔力を与えたぞ!」

「お!魔力だ」

「ありがとうありがとう」

「感謝する」

人形がゆっくりと動きだし、俺の方を見た。


「「「え?」」」

人形はなぜか驚いていた。

「「「人?」」」

「そうだけど?まずかったか?」

「いや、人間と会話をしたことがなかったから驚いただけだ」

「うん。初めて会話した」

「人間って僕達と会話で来たんだね」

人形達は先ほどの弱々しさがなくなり、はっきり喋るようになった。


「改めて、魔力を与えてくれてありがとう」

「いいよ。ほんの少ししか与えられなかったけど足りた?」

「充分だ」

「それより君たちは何?」

「俺達はデスパペットだ」

「デスパペット?」

「ん?知らないのか?人間の言葉で言うとモンスターと分類される存在だ」

「え?モンスターなの!?」

俺はデスパペット達から距離を置き、ファイティングポーズを取った。


「ははは。命の恩人に攻撃なんかしないわ」

「しないよー」

「そうだそうだ!」

「本当?」

「本当だ」

俺はファイティングポーズをやめ、デスパペットに近づいた。


「魔力を貰っておいて厚かましいお願いなのだが、憑代になるものは持っていないか?」

「憑代?」

「俺達は物に宿って生きていくモンスターで、俺達が宿るものを憑代という」

「なんでもいいの?」

「うーん。できれば生き物を模ったものだとうれしい。石や本のようなものでも憑代にはなるんだけど、魔力の消費量が多くなって今の俺達だとさっきみたいに死にかけることになる」

「なるほど、残念ながらそういうのは持ってないな」

「そうか。残念だ」

デスパペットの表情は分からないが、声色が暗くなった。


「憑代があると何が変わるの?」

「そもそも俺らデスパペットは、憑代の特性を活かして戦ったりすることができるんだ」

「どういうこと?」

「この体もボロボロになる前は、魔法使いの人形だったんだ」

「僕は剣士!」

「私は弓師!」

「俺は魔法を使え、他の2人も人形に合った戦い方が出来た。今はボロボロで何もすることができない。ギリギリ人型を保っているおかげで、魔力の消費を抑えて十数年生きながらえたんだ」

「なるほど」


デスパペット達は十数年、ほとんど動けないでここに居たみたいだ。

もしかしたら鬼人族についても知っているかもしれない。


「もしかして鬼人族がどこに行ったか知ってる?」

「俺らがここに来た時には、この里には誰もいなかった。だが数年に1回、この里に数人の鬼人族がやってきていた。そいつらの会話を聞く限り、そいつらは森に隠れ棲んでいるみたいだ」

「なるほど」


鬼人族の貴重な情報を得られた。



「ハルキさん!」


俺がデスパペット達と話しているとルゼがやってきた。

「ルゼ!こいつらが鬼人族の情報を教えてくれたんだ」


ルゼはデスパペット達を見つけると、距離をとって手のひらを向けた。

「ハルキさん。そいつらはモンスターです。離れてください!」


俺はルゼの焦り方に驚いたが、俺は落ち着いて説明をした。

「ルゼ、大丈夫!」

「モンスターです!すぐに攻撃しますから!」

「だから大丈夫だって!デスパペット達からも言ってやってくれ」

「あ、ああ。えーとデスパペットです。攻撃するつもりはない」

「ほら、ルゼ聞こえた?」

「ハルキさん。何言ってるんですか?」

俺の発言にルゼが困惑していた。


するとデスパペットが話し始めた。

「人とモンスターは普通会話は出来ないんだ」

「え?」

「モンスターの中には人言葉を話せるものや、テイムされて意思疎通できるものもいるが、俺らはどちらでもない」

「でもこうやって喋れてるけど」

「たぶんお前の力だろう。俺らは長い間生きているが、人の会話は理解できるが会話したことは一度もない」

「えー!」

俺は驚いた。何で俺だけ喋れるんだ。


「ルゼ。デスパペットから今聞いたんだけど、人間とモンスターは話せないみたいだね」

「そうですよ。なのでさっきから何を言ってるんですか?」

「デスパペットが言うには俺の力で会話出来てるみたい」

「ス、スキルってことですか?」

「わからないけど、多分そうなのかな?」

ルゼはまだ困惑していた。


「とりあえずデスパペットから聞いた話を話すね」

俺はルゼにデスパペットと出会ってからの話と鬼人族の話をした。

「なるほど」

ルゼは悩んでいる。


俺はデスパペット達に話かけた。

「あの、相談なんだけど」

「「「ん?」」」

「憑代を俺が用意するから、鬼人族が行った方向に案内してくれない?」

「本当か?」

「うん。まあ今日は持ってないから、別日になっちゃうんだけどね」

「わかった。命も救われ、憑代を用意してもらえるならお前に忠誠を誓おう」

「誓う!」

「僕も!」

「じゃあいい憑代を頑張って用意するわ」


俺は異世界で仲間を得ることができた。


▽ ▽ ▽


リディア様と合流し、諸々を説明した。


「そんなことがあるんだ…」

リディア様も理解が追い付いていないようだ。


「文字化けで見えないけど、たぶんエクストラスキルの力なんだろうね」

「そうなんですかね?」

「うーん。確定とは言えないけど、それ以外説明出来ないかな」

「文字化け治らないかなー」


俺は再度ステータスを見てみたが、文字化けたままだった。



「鬼人族は森か」

「そうですね。デスパペット達の話によると」

「さすがに今日探索に行くのは難しそうですね」

時間は夕方に差し掛かっていた。


「そろそろ暗くなる。次回の探索は来週だね。魔力が溜まるまではこの里に居ることにしよう」

「わかりました」


この里に移動をしている間にルゼとリディア様は何度か魔法を試していた。

なのでそれで減った分の補充が必要だった。


「ルゼ、あとどれくらいかかりそう?」

「30分くらいはかかると思います」

「わかった」

俺達は里の中にある一番形状を保っている家の中で時間をつぶすことにした。


デスパペット達を丁寧に運んで、今後の予定を伝えた。

「俺がここにまた来れるのが来週なんだけど、それまで魔力は足りそう?」

「多分足りると思うが、今日はここに泊まるんじゃないのか?」

「いや…」


俺はデスパペット達に異世界から来ていることを伝えた。


「「「な!」」」

ボロボロの身体を動かしてしまうぐらい驚いたようだ。


「うん。だから憑代が異世界のものになっちゃうけど平気?」

「大丈夫だと思うが」

「なんか要望とかある?」

「うーん。さっき言ったように、憑代の特性が反映されるんだ。剣を持っている憑代なら剣を使えるし、魔法使いのような憑代なら魔法を使うことができる。なのでどういう手伝いが欲しいかを考えて選んでほしい」

「なるほど、わかった。憑代にならない可能性もあるから、何個か用意するね」

「すまない、ありがとう」

「「ありがとー!」」

デスパペット達はボロボロの身体の頭を下げた。


▽ ▽ ▽


ルゼに魔力が満タンになった。

「貯まった?」

「うん。いつでも行けるよお姉ちゃん」

「よし!ワールドトリップ!」


周りが真っ暗な空間になった。

足元が光って大きな扉が現れ、俺達は落ちるように扉に入っていった。



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