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4. リディア・マールモンド

俺達はチェックアウトがギリギリになり、急いで帰る準備をしている。

何でこんなことになってるかというと俺達はやらかしてしまっていた。


「ルゼ、ごめん!」

「たぶん魔力が私に吸われてしまい、魅了が効くようになっちゃったんだと思います。すみません。魅了を解除してなかったのは私の責任です」

「いや本当にごめん」


30のおっさんが何してるんだ。


俺達は何とかチェックアウトを済ませて、駅に向かった。


ルゼは人間の姿になっていた。

「その姿はどうやってるの?」

「これは『変化』ってスキルです。15歳になった時に徐々に元の身体に戻っていったので、このスキルを使って人間になっています」

「スキル?」

「そういうのも今日家で説明しますね」

「わかった」

俺達は地下鉄の入り口に入っていく。


人間の姿のリゼを見てふと思った。

「その状態の時はなんて呼べばいい?」

「うーん。瑠依?ルゼ?呼びたい方でいいですよ」

「会社では宝仙さんだしな。まあ少しずつ慣らしていくよ」

「はい」

ルゼはニコニコしていた。


「家はどこらへんなの?」

「東京の郊外で、おじい様と住んでた家です」

「そうなんだ。でも電車一本だね」

「ハルキさんの家を通るルートです」

そういえばリサーチされていたんだった。


「そうか。家ばれてるんだったな」

「はい、すみません。ストーカーみたいなことをして」

「いいよ。あの家もルゼ様の配信をすぐ見に帰れるように借りただけだし」

「え?そうなんですか?」

ルゼは驚いていた。

「家賃が安いのもルゼ様に貢ぐためだし。まさかルゼ様と付き合うことになるとはなー。今までの俺からしたら考えられないよ。まあそれ以上の考えられないこともたくさん起きたけど」

「そうですよね。ハルキさんからしたら大変な1日でしたね」


俺達は改札を抜けて電車に乗った。



最寄駅に近づいた。


「もう家もばれてるし来る?」

「いいんですか?」

「ルゼは推しだけど、彼女だしね。いやでも部下だ。それに上司か」

「ふふふ。ハルキさんはいろんな目線で私を見てるから大変ですね」

俺達は電車を降りて家に向かった。


「なんか数時間前に付き合ったのに、だいぶ前から付き合ってた感覚なのは不思議だな」

「私はハルキさんのストーカーみたいなことしてましたし、ハルキさんは配信毎回見てくれてたからじゃないですか?」

「それかー。てか、うちにルゼのグッズがものすごくあるわ」

「ふふふ。知っています。同人誌もありますしね」

「ルゼ、その話はやめて」

「すみません。でも表紙しか見てないですから」

気まずい話をしていたら、家に到着した。


「どうぞ。狭いですが」

「おじゃまします」

「着替えたらすぐ出るから、ちょっと待ってて」

「はい。待ってます」

ルゼは床に座り、俺はすぐに着替えた。




「じゃあ行きますかって、何してんの?」

ルゼは何かを読んでいたが、俺が声をかけるとその本を隠した。

「い、いやなんでもないです」

「何を見たかは聞かないから、今後は勝手に見ないでね」

「は、はい」

俺はルゼを連れて、駅へ向かった。


▽ ▽ ▽


45分ほど電車とバスに乗り、ルゼの家に着いた。

家はルゼの姿からは想像できない、和風で門がありも大きな庭がある家だった。


「どうぞ」

「お邪魔します。大きい家だね」

「おじい様がお金持ちでしたので。生前は不自由ない生活をさせてもらってました」

「そうなんだ。それなら、お金には困らないんじゃないの?」

「うーん。一応この世界に住んでいますからね。住みづらくならない様に税金とか払うと…」

「あーなるほど。それはだいぶかかりそうだ」

「まあ魔王様がほとんどやってくれてます」

「へー」

ルゼに案内されて、客間に到着した。


「じゃあ魔王様を呼んでくるので、こちらで待っててください」

「うん」

客間は和室の部屋で高級そうな掛け軸や壺が飾ってあった。


少し待つとふすまが空いた。

入ってきたのはルゼとぶかぶかのTシャツを着ていて髪がぼさぼさの背が小さい女の子だった。


「待たせてしまってすまない。リディア・マールモンドだ」

リディア様は配信で何回も見たことがあったが、俺の知ってるリディア様ではなかった。


「え?あーリディア様ですか?」

「そうだ」

「すみません。だいぶ失礼なんですけど、魔王っぽい喋り方と見た目が合っていないのですが」

「な!『変化』を解除してなかった!」


小さな女の子は自分の頬に触れた。

すると女の子の姿が俺の知っている魔王様に変わっていった。


「おーリディア様!」

「頭を上げろ!吾輩がリディア・マールモンドだ!」

「おー!!」

俺は挨拶を生で見れてテンションが上がった。



リディア様とルゼは俺の前に座った。

「及川遥希です。ルゼさんとお付き合いすることになりました。そして魔力をお渡しすることにもなりました」

「おー付き合うことになったのか?よくやったぞルゼ」

「うん。ありがとう。お姉ちゃんに相談してよかった」

「お姉ちゃん?」

ルゼが俺の疑問に答えてくれる。


「私と魔王様は記憶が戻るまでの約10年間、姉妹として育てられたんです。本当は魔王様っていうよりお姉ちゃんって呼ぶ方が今はしっくりきてるんです」

「そうなんだ」

「ルゼは元の世界に居る時も、魔王様と呼ぶよりリディアと呼んでた方が長かったからな」

「そうだね。元の世界では幼馴染だからね」

俺の予想通り2人は本当に仲が良いみたいだ。


「ハルキさんの前では、普通に喋っても構わんか?」

「は、はい」

そういわれて、より魔王感がある喋り方になるのかと少し身構えた。


「いやー僕もこの世界での生活に慣れちゃって、プライベートでは元の世界の喋り方はしていないんだよ。元の世界の喋り方をしてるのは、配信だけかな今は」

「あーそうなんですね」

リディア様はまさかの僕っ子だった。


俺はいろいろわからないことが多すぎたので、詳しく聞くことにした。

「それではいろいろ聞いてもいいですか?」

「いいよ。何から聞きたいの?」

「まずはこの世界に来るまでのことを」

「うーん。僕達についてか」

リディア様は口を開いた。


「僕は魔王なんだけど、ハルキさんが想像しているような魔王ではないんだ」

「どういうことです?」

「大罪の悪魔スキルというものがあってそれを持つものが魔人領を治めることになっているの」

「大罪の悪魔スキル?」

「まあこの国にもあるでしょ?7つの大罪って、強欲だとか色欲とか」

「ありますね」


「元の世界では5歳から10歳の間に、その人に合ったエクストラスキルというものが1つ与えられるんだ。僕は『強欲の悪魔』、ルゼは『暴食の悪魔』、そのほかにも5つの大罪の悪魔スキルがあり、それを取得した人が内政をやることになる」

「なるほど。ということは5歳で大臣みたいなことですか?」

「そうそう。まあ子供の時は役職に付くだけだけどね。成人になるまでは学院に通って勉強などをさせられたんだ」

「面白いシステムですね」

全く知らない世界の話に興味がわいてくる。


「それで魔王にはどうやって?」

「前任の魔王が亡くなったタイミングで、大罪の悪魔スキルをもつ7人で選挙を行って決めるんだよ」

「それでリディア様が選ばれたと?」

「うん。一応僕もルゼも民から人気だったんだよ。ルゼと色欲と怠惰と憤怒は四天王とか言われてアイドルみたいに人気だったよね」

「昔の話です」

ルゼは少し照れくさそうだ。


「ある日、理由は今でもわからないけど傲慢と嫉妬が多くの兵や見たことのない武器を使って謀反を起こしたんだ」

「謀反…」


「僕とルゼは奇襲され、謎のマジックアイテムで魔力をほとんど奪われ、謎の人物からの攻撃でスキルが改変されてしまい、戦うことが出来なくなってしまったんだ」

「スキルの改変?」

「僕は『救恤の悪魔』というスキルになり、ルゼは『節制の悪魔』というスキルに変えられたんだ」

「なるほど」


「スキル以外にもいろいろ改変されたんだ。性格が一番変わってるかな」

「そうなんですか?」

「うん。わかりやすく言うと、今喋ってるのが救恤の悪魔の僕。配信で演じているのが強欲な悪魔な僕」

「なるほど。本質までも改変されたってことなんですね」

「うん」

性格まで変えてしまう敵なんているのか。


「僕を支持してくれる人や、たまたま出会った人に助けてもらいながら、謀反を起こした者達から逃げていたのだけど結局追いつめられてしまったんだ」

「そこで禁忌魔法を?」

「そうだね。禁忌魔法で逃げてきたんだ。魔力が足りなかったせいでいろいろとルゼには迷惑をかけてしまったよ」

「そんなことないよお姉ちゃん」

ルゼはリディア様の手を握った。


「話してくれてありがとうございます。あとこれから俺は何をするのかを聞きたいです」

「これからか。魔力は使わせてもらっていいんだよね?」

「はい!根こそぎ」


「ありがとう。まずはこの世界に来た禁忌魔法の『ワールドトリップ』を使って、元の世界の現状を確認する。もし、民が苦しんでいるのなら何かしら行動を起こそうと思っている」

「魔力はどれほど必要なのですか?」

「確認していいかい?」

「はい」

リディア様は俺に触れると目を閉じた。


「何でこの世界にこんな量の魔力を持ってる人間がいるんだ」

「だよね。私もびっくりしたよ」

「そんなにですか」

「うん。数時間を触れたら、僕の魔力が満タンになるはずだ」

「うん。私とお姉ちゃんの魔力が満タンになって、2人分の魔力を使って禁忌魔法を使えばより安全に元の世界に戻れると思うの」

「そうした方がいいかもね。同じミスは出来ないからね」


俺は1つ疑問に思った。

「あのー」

「なんだい?」

「魔力があれば、2人は戦えるんですか?」

「そうだね。全盛期ほどは戦えないが、それなりには戦えると思うよ」

「禁忌魔法を使って元の世界に戻った時に、すぐに謀反を起こした人に出会ったらどうするんですか?」

「あっ!」

「それに帰りの魔力はどうするんですか?」

2人は少し気まずそうにしていた。完全に抜けていたみたいだ。


「元の世界なら魔力は少しずつ回復するけど、さすがに満タンとなると1週間くらいかかるよね?」

「そうだね。それに戻った瞬間に戦闘になるとさすがにまずい」

2人は悩み始めた。


悩んでる2人に俺は提案をした。

「俺を連れて行ってください!」

「「え?」」

2人は驚いている。


「ルゼとリディア様の魔力を満タンにして俺も一緒に元の世界に行けば、帰りもすぐに満タンに出来るんじゃないですか?」

「なるほど。その案はいいね」

「ハルキさんはそれでいいんですか?」

ルゼは俺を心配そうに見つめる。


「うん。もう付き合ってるし、ルゼに尽くすのは慣れてるしね」

「ありがとう、ハルキさん」

ルゼは頭を下げた。


「まあ危険なことがあったら守ってほしいけどね」

「それは任せてください!」

「うん。頼むよ」


そのあと3人で話し合った。

今後の生活を考えて、仕事に影響がないようにすることになり、異世界転移は金土日にのみとなった。




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