27.蜻蛉族と水黽族
湖に到着して1日半。
虫人族は全く現れない。
日中は2人と稽古をしたり、現れたモンスターを倒したりしたが、暗くなるとすることも無くなった。
異世界の食事だけが唯一の救いだった。
僕はビーフジャーキーをかじりながら焚火を見つめていた。
見張りは交代制。
今は2人が休んでいて、僕が見張りをしている。
「ルゼは大丈夫かな……」
そんなことを思っていると、後ろに気配を感じた。
テントからウィノナが出てきた。
「どうしたの?」
「いえ。目が覚めてしまいました」
「ビーフジャーキー食べる?異世界の乾燥させたお肉だよ」
「いただきます」
ウィノナはビーフジャーキーを受け取った。
「美味しい?」
「はい!異世界の食事はどれもすごいですね」
「美味しいのを持ってきたからね。異世界にも美味しくないものもあるよ。まあ選べるだけの食事があるってことなんだけどね」
僕とウィノナは焚火を囲んで他愛もない会話を楽しんだ。
「ウィノナ、虫人族についてなんでもいいから教えて。僕は知らないことが多い」
「虫人族についてですか?」
ウィノナは少し考えた。
「えー。虫人族は魔力操作が得意です」
「そうなんだー。僕も昔、ルゼと一緒にゴフェルから教わったなー」
「虫人族のご先祖もゴフェル様から教わったようです。それを子供にも教えていくようになったみたいです」
「ゴフェルはそんなこともしてくれていたのか」
いつもサポートをしてくれていたゴフェルが、裏ではもっと動いていたなんて知らなかった。
「一部のご先祖はゴフェル様ではなく、人族に魔力操作を教わったと言われています」
「え?」
「ゴフェル様もその人族に魔力操作を教わったと言い伝えで聞いております」
「人族の協力者か……」
私は逃げるときに手を貸してくれた人達の中に人族がいたのを思い出した。
会話はしなかったが、ゴフェルの友人だと紹介されたのを思い出した。
ゴゴゴゴゴ!
話していると急に地響きが起きた。
ファジャが慌ててテントから出てくる。
「リディア様!あれを!」
ウィノナが指差す方向を見ると、湖に流れていた滝が止まっていた。
そして滝が流れていたはずの岩壁が扉のように開く。
岩壁は洞窟のようになっているみたいだ。
岩壁の中から、人が出てきた。
虫人族、蜻蛉族だ。
虫人族は僕達の姿を見て、洞窟に引き返そうとしていた。
「あ!あの!蟻人族のウィノナと言います!蟻人族の長から、そちらの長へ手紙を預かっています」
ウィノナは湖に向かって叫んだ。
蜻蛉族は少し迷っている様子だったが、羽を伸ばして湖を渡って我々の元にやってきた。
「手紙を預かります」
「お願いします」
ウィノナは手紙を渡す。
「長に話をしてきます。こちらで少しお待ちください」
蜻蛉族はそう言うと、洞窟に戻っていった。
岩壁の扉は閉じ、滝がまた流れ始めた。
▽ ▽ ▽
数分待つと、再び滝が止まって石壁が開いた。
先ほどの蜻蛉族がリリートレントの葉に乗ってこちらにやってきた。
「リディア様、ファジャさん、ウィノナさん。こちらにお乗りください。キャリーホッパーは申し訳ありませんがこちらに待たせてください」
「わかった」
教えてないが僕の名前を知っている。
この蜻蛉族も手紙の内容を聞いたのだろう、
僕達はリリートレントの葉に乗り、岩壁の洞窟へと入った。
洞窟の中は蟻人族の街のように明るく、建物もたくさんあった。
違うところはリリートレントで移動ができるように水路がたくさんあるところ。
リリートレントに乗ったまま待つと、大きな家の前に到着した。
「こちらが蜻蛉族と水黽族をまとめているヤニマ様の家になります。ヤニマ様は2階でお待ちです」
「わかった。案内してくれてありがとう」
「いえ。仕事ですので」
僕達は蜻蛉人族と別れ、ヤニマの家に入った。
▽ ▽ ▽
家に入って2階に上がると筋肉質な蜻蛉族がいた。
僕を見るとすぐに頭を下げた。
「リディア様。蜻蛉族の長のヤニマです」
「僕はリディア。手紙は読んでくれた?」
「はい」
ヤニマは頷いた。
「15年前、ゴフェル様から協力するように言われております。蜻蛉族と水黽族の戦士はリディア様に協力致します」
そう言うとヤニマは跪いた。
「やめてくれる?今の僕には当時の力はない。虫人族達に力を貸してくれとお願いしている立場だ」
僕は跪くヤニマをすぐに立たせた。
「ヤニマがこの街を管理しているの?」
「はい。水黽族の長が老衰のため、水黽族の次期長を育てながら管理をしています」
「そうなんだ。水黽族も手を貸してくれるって認識で大丈夫?」
「問題ありません」
「ありがと」
僕は頭を下げた。
「早速なんだけど、僕達はこの島を取り返すために既に動いている」
「はい」
「ダムザムを偵察するためにルゼと協力者が向かっている。まずはダムザムを制圧するのが目標だ。制圧が上手くいけば、捕えられている者達の協力が得られるかもしれない。だがまだ戦力が足りない。僕に協力してくれそうな者を知ってたりしないか?」
僕が問いかけるとヤニマは机から紙を1枚取り出した。
「リディア様が戻られたら協力するように言われた時に、虫人軍に属していた種族はどこにいるかをゴフェル様に聞きました。それをまとめたのがこの紙です」
「虫人軍?それは?」
ゴフェルは僕が聞いたことない軍を作っていたのか?
「私も父から聞いた話なので正確ではないかもしれないんですが……」
「構わない。聞かせてくれ」
「はい」
ヤニマは話し始めた。
「虫人軍はゴフェル様が虫人族を保護してくださった時代にあったと聞いています。軍と言っても自分達の身を守るための方法を学ぶだけで、実際に戦うことは少なかったようです」
「なるほど」
「様々な虫人族が集まって、魔法や武器の扱いを教わったと聞いています」
ウィノナが言っていた魔力操作も虫人軍で学んだことなのだろう。
「その虫人軍に参加していた全ての種族の15年前の居場所がこれに書かれております。お使いください」
ヤニマから僕は紙を受け取った。
「ありがとう」
僕達はこれからの流れなどをヤニマと話し合った。
ヤニマの好意で蜻蛉族の戦士を5人が連絡役として僕達についてくれることになった。




