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24.怠惰候補

「私は怠惰の悪魔の候補なだけだ」

マズドールの告白は驚愕だった。


「15年前。強欲・暴食・色欲・憤怒はエクストラスキルが改変された。それによって4つのスキルは消滅し、新たな取得者が現れた。だが怠惰のゴフェルはスキルも改変されず死んでもいない」

「ゴフェルは生きてるってこと?」

「『怠惰の悪魔』を取得している者が現れていないからな。たぶん生きているんだろう」

ルゼはそれを聞くと安堵の表情を見せた。


「新しい怠惰が生まれるまで、この諸島を管理する者が数人選ばれた。その1人が私だ」

「でもそれだと怠惰候補にはならないんじゃ」

マズドールはニヤッと笑った。


「それがちゃんと候補なんだよ。魔王軍は他国からスキルを奪うマジックアイテムを手に入れた。強欲・暴食・色欲・憤怒も改変後に新しい取得者が現れたが、そのマジックアイテムでスキルを奪って魔王様の部下に配られたのだよ!だからゴフェルさえ捕まえる事が出来れば『怠惰の悪魔』を奪うことができるんだよ」

「なっ!」

「この諸島には他にもこの街のように反逆者を収容する施設がある。候補者は反逆者達からゴフェルの情報を聞き出すために死にもの狂いになっているよ。私のお気に入りの鬼人族達はどんだけ遊んであげても口を開かなかったがな」

マズドールが調子に乗り始めた。


「ルゼ、まだ聞きたいことはある?」

「はい。最後に1つだけ」

ルゼはマズドールを見た。


「私達を裏切った2人は今どこに?」

「本島か他国にいるよ」

「わかりました。ありがとうございます」

ルゼは俺を見ると頷いた。


俺はマズドールの角を床に落とした。

「おい!喋ったんだから解放しろ」


叫ぶマズドールを無視した。


「タンク頼む」

「わかった」

右肩の砲台から魔力の塊が飛び出し、角は粉々になった。


「あああああああああああ!」


俺とルゼは牢屋を出て、地上へ上がった。

マズドールには鬼人族達が使っていた牢屋で過ごしてもらおう。


▽ ▽ ▽


地上に上がるとルゼが抱きついて来た。


「え?どうしたの」

「私の為に怒ってくれたのが嬉しくて」

「ああ。ごめんね。だいぶ性格悪い感じしたよね」

「最初は驚きましたけど、かっこよかったです」

「そ、そう?」


ルゼはかっこいいと言ってくれたが、俺は自分自身に驚いていた。

マズドールに絶望を与えることに何の抵抗がなかった。

『異世界倫理』ががっつり効いてるように感じた。


「でも、無理だけはしないでください」

「大丈夫だよ」

「でもこの世界は日本とはだいぶ違うので」


ルゼは心配そうに俺を見ていた。

俺はルゼの頭を撫でた。


「大丈夫。ありがとう」

ルゼはニコッと微笑んだ。


▽ ▽ ▽


俺達は蟻人族の街へ帰る準備を始めた。


ルゼはガシャールさん達にこの街の管理について話に行った。

俺は特にすることがなかったのでテントを片付けて待った。


ビーとティーは街中をピョンピョン跳び交っている。

その様子を見たらいいことを思いついたので、みんなを連れて街の外に出た。



俺はみんなを装備した。


「何をするつもりなんだ?」

「「「何するのー?」」」

「走るー?」

ティーは相変わらずだったが、今回は正解だった。


「この状態で走ったら行きよりも移動時間が早くなるかなーって」

「なるほど。ルゼは抱えるのか?」

「うん。そのつもり。だから脚はビーとティー、身体の補助はビュラ、腕の力はタンクとポンプに手伝ってもらいたくて」

「わかった。やってみよう」


俺はさっそく森を走り始めた。



30分ほど走った。

速度はビーやティーに乗るよりもだいぶ早く感じた。

身体のバランスも崩れないから、ルゼを抱えて走っても問題ないだろう。


「大丈夫そうだな。そろそろ街に戻ろうか」


俺は装備を解除しようとすると目の前から2足歩行のトカゲが2匹現れた。


「ヒトダゾ!コロセ!」

「コロセ!」

俺はいきなり攻撃をされるが、ポンプを装備していた左腕で簡単に防げた。


「ねえ。出来れば戦いたくないんだけど」

「コロセ!コロセ!」

トカゲと意思疎通は取れなかった。

戦うしかない。


俺は両手をトカゲに向けた。

「タンク!ポンプ」

「任せろ」

「任せて!」


右手からは大量の銃弾、左手からは火の玉がトカゲを襲った。

一瞬にして、トカゲは倒れた。


『異世界会話』の調整のおかげなのか断末魔などは聞こえなくなっていた。

その調整とルゼからモンスターを放置することで起きる被害を聞いたことによって、モンスターを倒すことへの抵抗は減った。


「よーし。魔石だっけ?それだけ回収して街に戻ろう」

俺は装備を解除すると、タンク達がトカゲの体から魔石を回収した。


▽ ▽ ▽


「本当にこれで行くんですか?私は嬉しいですけど」

俺はルゼをお姫様抱っこしていた。


「うん。さっき練習したし大丈夫なはず。道案内だけよろしくね」

「は、はい!」

俺は地面を蹴り、全速力で走りだした。


ルゼを抱えて走るのは初めてだったが、余裕で走ることが出来た。

抱きてついてくれているので幸福感に包まれていた。

何回かビュラの装備を外したいと思ったが、これを外すと身体のバランスが取れなくないそうなので諦めた。


行きよりだいぶ速く進んだが、さすがに今日中に蟻人族の街に付くのは無理だった。

俺達は野宿が出来るところを探しながら進むことにした。


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