16.タンクとルゼ
俺とビュラとポンプはハルキ達が寝ている間、周囲の警戒をしていた。
俺達はハルキに感謝していた。
ハルキの魔力のおかげで長年の苦しみから解放され、最高の憑代のおかげで身体を自由に動かす事ができる。
それに異世界に行くことが出来た。
ハルキが寝ている間や仕事に行っている間にパソコンというものを使わせてもらい、いろいろ知識を入れることが出来た。
ビュラとポンプにはまだ早かったようだが、俺にとっては最高の環境だった。
ハルキ達には詳しく説明をしていなかったが、俺はデスパペットではない。
エルダーパペットという種族だ。
特に何もしてないが長生きしただけで進化することが出来た。
進化したおかげなのか、ビュラやポンプより少し知能が高いみたいだ。
俺は命を救ってくれたハルキの為にやれることはやってやろうと思っている。
そんなことを考えながら周囲を警戒していると、テント方面から音がした。
向かってみるとルゼがテントから出てきていた。
「どうしたんだ?」
「ちょっとタンクさんにお話が」
「え?俺?」
ルゼはハルトの彼女というもので、番いのようなものらしい。
俺達にも良くしてくれる良い魔人族だ。
「ここだとハルキさんが起きてしまうので移動しましょう」
「わかった」
俺はルゼについて行った。
テントから少し離れた場所に着くとルゼが口を開いた。
「タンクさん。お願いがあるんです」
「なんだ?」
ルゼは真剣な表情で俺を見てきた。
「ハルキさんの今後についてです」
「ああ。なるほど」
俺はなんとなく察した。
「今後私達と一緒にこの世界を旅するとなると、必ず人の死が付いてきます」
「そうだな。ゴブリンを殺しただけであんなになったハルキには耐えられないかもな」
「はい。もし人を殺さないといけなくなった場合は、ハルキさんに気付かれないようにタンクさん達に対応してほしいのですが……」
ルゼは申し訳なさそうにしているが、目は真剣だった。
ハルキの事を考えているのだろう。
ルゼ自身が人を殺すのは簡単だろうが、それを見たハルキのダメージを考えると俺らに頼むのが一番安全だ。
「わかった。任せろ」
「申し訳ありません。ありがとうございます」
「ハルキのためだもんな」
「はい」
俺とルゼはハルキには言えない約束をした。
「殺すか殺さないかの判断は俺に任せてくれるのか?」
「出来れば相談してほしいですが、今回のように偵察となると相談は出来ないと思いますのでお任せします」
「わかった。街から捕虜を救うには血を流さないとたぶん無理だろう」
「私もそう思います」
「兵士が多い場合は数を減らしておく」
「ありがとうございます」
ルゼは俺に頭を下げた。
人がモンスターに頭を下げるのか。
ハルキはいい番いを見つけたな。
ルゼはテントに戻って行った。
▽ ▽ ▽
俺はビュラとポンプを呼んだ。
ルゼと話した内容を噛み砕いて伝えた。
「ハルキのためなんだよね?」
「そうだ」
「ならやる」
「僕も―!」
ビュラとポンプもハルキの事をだいぶ気に入っているようだ。
「明日の戦闘で俺達よりも強い奴がいる可能性もある、だから今日は周囲の警戒を交代制にして野生のモンスターを積極的に狩ろう」
「「うん!」」
俺達は森に入っていった。
▽ ▽ ▽
俺とポンプの目の前にはスケイルラットが5匹いた。
俺らよりも小さいサイズだが、身体についている鱗が邪魔だ。
ポンプは火の球を飛ばすが、鱗のせいであまりダメージが入っていないようだ。
「くそ―」
「ポンプ。背中についてる梯子を腕に付けられるみたいだぞ」
「え?これ?」
ポンプは背中に付いている梯子を外し、腕に装着した。
「これでいけるかも!」
そういうとポンプは梯子の付いた腕をスケイルラットに突き刺す。
「喰らえ!」
梯子は突き出されて、スケイルラットの身体に深く刺さった。
「よーし!」
ポンプは嬉しそうに残りスケイルラットを倒していった。
倒し終わったポンプは俺の元にやってきた。
「タンクは何でこれの使い方知ってたの?」
「ハルキの家のパソコンで憑代の事を調べたんだよ」
「そうなんだー。タンクすげー!」
俺の情報収集は無駄じゃなかったようだ。
▽ ▽ ▽
次は俺とビュラだ。
目の前にはゴブリンが2匹いた。
俺はゴブリンの脚を撃って動けなくした。
「ビュラ、背中についてる赤い奴を腕に付けてみろ」
「うん!」
ビュラはパトライトを腕に装着した。
「多分剣が出てくるはずなんだけどどう?」
「うーん」
ビュラの右腕から光の刃が出てきた。
「出来た!」
「それで攻撃できるみたい」
「うん!」
ビュラは動けなくなったゴブリンを斬り倒した。
「これでビュラも戦えるね」
「うん!ありがとうタンク」
これで憑代の性能を完全に使えるはずだ。
俺だけ付属パーツがなかったのが悔しい。
俺達はハルトが起きるまで、モンスター討伐を続けた。