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15.旅路

翌日、俺はタンク達に頼んでモンスターがいたら教えてもらうことにした。

『異世界会話』の調整が気になったので確認したかったからだ。


結果、ほとんどのモンスターの言葉を理解することが出来なかった。


「何でだと思う?」

「えーっと言葉が理解できたのは何でしたっけ?」

「ゴブリンとコボルトだけ。マッドウルフとリーフバットは会話が出来なかった」

「なるほど。人型とは話せてますね」

「でも昨日と変わらずキャリーホッパー達とは話せてるんだよね」

俺は頭を抱えた。


「もしかしたらですけど人型と知能高いモンスターと人と関わっているモンスターと喋れるんじゃないですか?」

「あー可能性はあるね。一番しっくりくる」

「検証はまだ必要だと思うのでゆっくりやっていきましょう」

「そうだね」


俺達はキャリーホッパーに乗って、目的地に向かった。




▽ ▽ ▽




僕達は目的地の湖に到着した。

湖の半面は崖壁に囲まれていて、崖上から水がゆるやかに流れていて滝のようになっていた。


「リディア様、ここが水黽族と蜻蛉族が住んでいる湖です」

「ウィノナはここには来たことがあるの?」

「いえ。母に聞いていただけで、初めて来ました」

「そうなんだね。ここで待機?」

「はい。あの崖壁が街への入り口なんですが、この湖は純化の湖と呼ばれていて湖の中に生えている水草が不純物を排除してしまうんです」

「人や船も不純物になるのか?」

「はい。自然に守られている街ということです。なので街の中から誰かが出てきたら接触しましょう」

「わかったよ」

僕達は野営の準備を始めた。



僕はマジックバッグからテントを出し、設営を始めた。


「すみません。リディア様に設営をさせてしまって」

「大丈夫だよ。異世界の物だしやり方わかんないもんね」

「申し訳ないです。それにしてもこのテントはすごいですね。快適すぎました」


昨日の野営では3人で川の字で寝た。

下に敷いているマットにクッション性に2人とも感動していた。


「設営が終わったら、2人共少し魔法の練習に付き合ってくれない?」

「「はい!」」


テントを設営を終え、2人と魔法の練習をした。

今までは火魔法だったが改変されたせいで水魔法になっていた。

使える魔法の数は多いのだがLV1になっているので戦闘に使えるかは怪しい。


「ウォーターボール!」

僕は手のひらから水の球を出す。


「うーん。威力が弱いね」

「「そうですね…」」

2人は気まずそうにしていた。


「練習あるのみだね。魔力操作の感覚は無くなってないみたいだから、あとは戦い方の工夫か」

僕は水の球をお手玉のように動かした。


「そうですね。リディア様が慣れるまでは私達が戦いますので」

「任せてください!」

「ありがとう」

ファジャとウィノナは僕を励ましてくれた。


ここまでの移動中に2人の戦闘力は確認した。


ファジャは魔法は苦手なようだが、魔装が使えた。

魔装というのは魔力を自分の身体や武器に纏わせ、威力や耐久力をあげる技だ。

その反動なのか魔法を放出するのは苦手なようだ。

魔装を施した金棒の威力は凄かった。

ファジャは金棒を2本を使う母親に似た戦闘スタイルようだ。


「ランスンと同じ戦い方なんだね」

「はい!戦い方は母に教わりました」

「今までランスンの話を聞かなかったけど、ガジャールと共に行方不明なの?」

「そうです。なのでダムザムにいる可能性があります」

「心配だよね」

「いえ、母に関しては心配してません」

「え?」

「知っての通り、母は父より強いので」

「そうだったな」

当時の事を思い出して懐かしくなった。



ウィノナは蟻人族が作った槍を使っていた。

刃に片方に枝刃が付いている槍だ。

身体能力があまり高くないが、土魔法を組み込んで戦うのが上手かった。


「数年間、戦闘をしていなかったのになかなか強いね」

「私はこっそり自主練をしていました。ファジャが1人でダムザムに行くと言う可能性があったので」

「え?」

ファジャは驚いていた。


「なるほど。ついて行くつもりだったんだな」

「はい。10歳からの付き合いですし、蟻人族の都合でいろいろ我慢をさせちゃっていたので、もしファジャが爆発することがあれば付き合おうと思っていました」

「ウィノナ…」

ファジャは目を潤ませていた。


僕とルゼの関係のようなものなんだろう。

この2人のためにも魔人領を良い方向に変えないといけないな。


▽ ▽ ▽


僕達は魔法の練習をやめ、テントに戻ってきた。

乗ってきたキャリーホッパーは3匹とも寝ていた。


「よし。異世界のお肉でも食べようか」

「「はい!」」


僕はマジックバッグから焚火台を出して、肉を焼く準備を始めた。

ファジャとウィノナは焚火に使う薪を拾いに行ってもらった。

「料理なんてルゼに任せっぱなしだったから不安だったけど、昨日の食事も上手くできたし大丈夫なはず」


ここまで来るまでの軽食はコンビニのサンドイッチを食べたりしていた。

2人は異世界の料理の美味しさに感動していた。


それに昨日の夕食ではハルキさんが用意してくれた高級牛肉を焼いて食べた。

牛肉を初めて食べる2人の手は止まらなかった。

蟻人族の街は野菜と魚を食べることが多く、肉は鬼人族がモンスターを狩った時に食べれるご馳走だったようだ。


僕は今日もハルキさんが用意してくれたお肉を取り出した。

味付けは塩コショウだけ。

火で焼くだけだから僕にでもできる。


ファジャとウィノナは焚火台に薪を入れてくれた。

「元魔王の僕がこっちの世界でこれに頼ることになるとは…」

僕は着火剤とチャッカマンを使い、薪に火をつけた。


「火魔法が使えれば一瞬なんだけどな」

別にいいのだが、なんかちょっとだけ虚しかった。




▽ ▽ ▽




俺達は野営の準備を始めた。


ルゼの予想は当たっているかもしれない。

移動中に出会った野生のキャリーホッパーの言葉が理解できなかった。


ビーとティーに話してもらって、戦わずに済んだ。

ビーとティーとは俺とルゼが乗っているキャリーホッパーの名前だ。

言葉が通じるから名前で呼ばないとと思い、仮だが名前を付けた。

基本的に何でも肯定してくれるルゼなので、俺のネーミングセンスですら肯定してくれた。


俺はテントの設営と食事の準備を始めた。


焚火台で焼く肉は、雰囲気というスパイスのおかげかとても美味かった。

昨夜はビーとティーも美味しそうに肉を貪っていた。

今日は使い捨てのアルミプレートがあるので豚肉を使った焼きそばを作るつもりだ。


「ハルキさん。薪になりそうな木を持ってきましたよ」

「ありがとう」

俺は薪を受取り、チャッカマンで火をつけた。


マジックバッグというものは本当に使い勝手が良い。

これでも容量が少ない方らしいが充分だった。


「ソースでいいよね?」

「はい」

ルゼにかっこいいところを見せたくて料理を請け負ったが、多分ルゼの方が美味しく作れる。

慣れてないところを見せない様に、頑張って焼きそばを作った。


焼きそばは完成した。

少し焦げたが気にならないレベルだ。

ルゼもビーとキーも美味しそうに食べてくれた。


「ルゼ、明日には到着するんだよね?」

「はい。何もなければ昼には到着予定です」

「現魔王軍があんまりいないといいけど」

「そうですね。お姉ちゃんが協力者を増やしてくれるとは思いますが、それにしても敵は少ない方がいいです」

「捕まってる人も心配だ。もう15年も捕まってるってことだもんな」

「…そうですよね」

ルゼの表情が少し暗くなった。


「捕まってる人がいたらビュラに回復をお願いしよう」

「そうしましょう」


俺達は食事を済ませ、テントに入った。




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