14.ダムザムへ向かう
昨日の『変化』の練習は、素人目だが完璧だった。
問題はないだろう。
俺達は街の入り口に集まっていた。
「ハルキさん、準備は大丈夫ですか?」
「うん。荷物もここに入れたからね」
俺は腰に付けている巾着袋を叩いた。
「じゃあお姉ちゃん達の準備が終わったら、出発しましょう」
「了解」
ルゼの横には2匹のキャリーホッパーがいた。
「久し振りに遠くに行くね!」
「そうだね。楽しみだね!」
キャリーホッパー達は楽しそうに話していた。
「キャリーホッパー達、数日間よろしくね」
「「え!」」
キャリーホッパー達は驚いていたが、見た目では全然わからなかった。
少し目を見開いている気がする。
「驚かしたね。俺はハルキ、なんかモンスターと話せるんだ」
「え?すごーい」
「よろしくねーハルキ―」
「うん。よろしく」
俺はキャリーホッパー達との挨拶を済ませた。
気付くとルゼとリディア様以外の集まっていた人達が俺を見ていた。
「やっぱり目立ってた?」
「はい。みんなびっくりしてました。それで会話は出来ましたか?」
「うん。2匹とも良い子だと思う」
「それはよかったです」
俺はキャリーホッパーを撫でながら、リディア様達の準備を待った。
リディア様達はここから1日半ほどの湖に向かう。
そこに水黽族と蜻蛉族がいるらしい。
リディア様達のチームはファジャとウィノナだ。
ティーマさんから手紙などを預かったり、街の入り方などを再確認しているようだ。
リディア様がこっちにやってきた。準備が終わったようだ。
「ごめんね。待たせたね」
「問題ないです」
「うん。お姉ちゃん気をつけてね」
「2人も気をつけて」
「はい」
「うん」
俺とルゼはキャリーホッパーに跨った。
タンク達は俺達の周りを浮かんでいる。
「タンク達。周りの警戒よろしく」
「「「任せて」」」
気合が入っているのか、くるくる回っていた。
「キャリーホッパー達もよろしくね。タンク達とあんまり距離が離れないくらいの速さでお願い」
「わかったー!」
「がんばるー!」
触覚がブンブン動いている。テンションが上がっているのだろう。
「じゃあ出発!」
俺がそう言うとキャリーホッパーは上ではなく、前に跳んだ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫マシンに乗ってるくらい怖かった。
ルゼを見てみると笑っていた。
絶叫系は得意なようだ。
▽ ▽ ▽
森の中を進んでいくと、何回かモンスターを発見した。
タンク達はモンスターを容赦なく倒していった。
始めてゴブリンと戦った時のような感情は起きなかった。
『異世界倫理』が効いているんだろ。
でも俺の中でのルールはしっかり決めておかないいけない。
タンク達はモンスターを倒すと宝石のような石を持ってきてくれる。
魔石というものらしい。
モンスターの体内に必ずあるもので、売るとお金になるらしい。
今の魔人領で売れるところがあるのかわからないが。
「ハルキ―速さは平気?」
キャリーホッパーは俺に気を使ってくれている。
「ありがとう。だいぶ楽になったよ」
「よかったー!」
キャリーホッパーの乗り心地はだいぶ良かった。
虫人族が乗り物として利用している理由が何となくわかった。
「ルゼ!方向は問題ない?」
「はい、予定より早く移動出来ています」
「そしたら、野宿する予定のところに付いたら、俺もモンスターと戦いたいんだけどいい?」
「わかりました。一緒に倒してみましょう」
俺自身のレベルを上げておかないと今後なんかあった時に困ってしまう。
最低限自衛できるぐらいにはしとかなくちゃ。
▽ ▽ ▽
夕方前になり、野営地に到着した。
俺は急いでテントを設営した。
「ハルキさん。どうしますか?モンスターを倒しに行きますか?」
「うん。キャリーホッパーをここに残すのは心配だから、タンクだけ連れて行こうかな」
「わかりました。今日は軽食しか食べてませんが、大丈夫ですか?」
「問題ないかなー。夜はいい肉を買っておいたからそれを食べよ」
「はい!」
ルゼは嬉しそうにしていた。
俺達は森の中に入った。
蟻人族から借りた槍を持ち、モンスターを探している。
「ハルキ、居たぞ」
タンクがモンスターを見つけたようだ。
タンクが腕を向ける方向を見ると、木の枝に葉っぱのようなものがぶら下がっていた。
「ルゼ、あれは?」
「リーフバットですね。葉っぱに擬態するコウモリです。羽根と歯で攻撃してきます」
「ちょっと喋りかけてみるね」
「気をつけてくださいね」
俺はリーフバットに近づいた。
「おーい。聞こえる」
リーフバットは俺を見た。
「ハジカオエキセヲスイテリ!」
「え?」
「ホビャイー!」
俺が聞き返すとリーフバットは叫びながら俺に向かって飛び掛かってきた。
俺はリーフバットの攻撃をしゃがんで避けた。
リーフバットと会話はできない。
「ルゼ!言葉が通じない」
「え?それなら倒してしまいましょう」
「わ、わかった」
俺はまた飛び掛かってくるリーフバットに槍を刺した。
「ダフジェキ!」
俺はリーフバットを倒すことが出来た。
「お疲れ様でした。大丈夫でしたか?」
ルゼが心配して駆け寄ってくれた。
「うん。何とか倒せたけど、会話が出来なかった。なんか聞き取れない言葉だった」
「何ででしょう」
俺はいろいろ考えてみた。
今まで言葉が分かったモンスターはタンク達・ゴブリン・ランタンビートル・キャリーホッパーと召喚獣。
会話が出来なかったのはスライムとリーフバット。
「うーん。人型か知能がある程度あるモンスターなら行けるのか?」
俺は悩んだが、答えは出なかった。
すると目の前に小さなウィンドウが出てきた。
[スキル:『異世界会話』を調整しました]
「え?」
「どうしました?」
「ウィンドウが出てきて、『異世界会話』を調整したって書いてある」
「調整した?」
「うん。うわーますます謎が深まる」
俺は自分のステータスの文字化けを悔やんだ。