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13.有給申請と新居内見

俺達は元の世界に戻ってきた。


「あー有給申請しないと」

「そうでしたね」

明日の会社の事を考えると憂鬱になった。


「ハルキさん。今週もありがと」

「いいんですよ。でもちょっと帰るのがしんどいですけどね。ハハハ」

「それなら、おじいさまが残してくれた家とかアパートとかがあるけど引っ越す?」

「え?」

リディア様の提案に俺は驚いてしまった。


「ここから5分くらいのところだし、会社にも電車1本で行けるよ」

「それは魅力的ですね…。ちなみに家賃って」

「え?無料で貸すよ?そのかわりルゼと住むならアパートじゃなく一軒家にしてもらうよ?」

「本当ですか?じゃあ借りたいです」


俺がそういうとルゼが声をあげた。

「え!?」

「え?」

ルゼは顔を赤らめていた。



▽ ▽ ▽


家に帰ってきた。

当然タンク達も一緒だ。


「あー疲れた。明日の会社行きたくないなー」

「ハルキ、会社ってなんだ?」

知らない言葉に興味があったのか、タンクが聞いてきた。


「お金をもらうために労働をするところだよ」

「うーん。わからん。そんなに行きたくないのなら行かなければいいじゃないか」

「それが出来ないんだよねー」

「そうなのか」

「わかんなーい」

「僕も―」

タンクは球体の状態でコロコロ床を転がってる。


「そろそろ寝るから電気消すよ」


俺は電気を消してベットに入った。



▽ ▽ ▽



有給申請は通った。


忙しい時期じゃなかったが、少し難色を示されたのでルゼの『魅了』を使ってもらった。

GWも絡ませたので、今週の土曜日から16連休になった。


『魅了』の凄さに少し驚いたが、何でもできるわけではないらしい。

俺が食らった『魅了』はルゼの魅力を倍増して感じてしまう一般的な『魅了』。

今回使ったのは、洗脳や誘導に近い『魅了』らしい。


ルゼが言うには、無茶な要望だとすぐ解けるらしい。

今回のように有給を取れるようにだったり、人事に異動先を変えてもらったりなどは現実的にあり得る範囲だからかけるのも簡単みたいだ。


大金を貰ったり相手の好意を操るなどは無茶な要望だからすぐに解けてしまう。

そんなことが出来たらVtuberなんてやってないとルゼに言われてしまった。



有給取るまではスムーズに行ったが、そのあとが少し大変だった。


火曜日会社に出社すると身に覚えのある球体が目に入ってきた。

タンク達が俺のスーツのポケットに入って会社に来ていたのだった。


俺にばれたと気付いたタンク達は会社が入っているビルの中を逃げ回った。

ルゼの協力もあって全員を捕まえられたが、その日は全く仕事が手に付かなかった。

なんでついて来たかタンクに聞くと、あれだけ行きたがっていなかった会社というのを見てみたかったそうだ。


タンク達が来たことで、俺とルゼはだいぶテンパったが良いこともあった。

ビュラがうちの会社の人間に手当たり次第に回復効果のある弾を撃っていた。

腰痛持ちの上司や偏頭痛の萩原などは快調になり、仕事がものすごく進むようになっていた。

こっちの世界でも回復魔法が使えるのは予想外だったが、『魅了』で有給を取った申し訳なさがだいぶ少なくなった。


戦うすべを身に着けようか考えたが、何の武道も学んだ俺が付け焼刃で武器を持っても意味がないと思いやめた。

危なくなったらタンク達がどうにかしてくれるはずだ。


▽ ▽ ▽


家の件は思ったよりすんなり話が進んだ。

仕事終わりに内見をさせてもらい即決した。


リディア様達の家とは違い、普通の一軒家だった。

間取りは2階建て4LDKの駐車場と庭付きだ。


ルゼが言うには他にも何軒かあるらしいが、駅に一番近いところにした。

さすがにタダで借りるのは申し訳ないので超格安だが家賃は払うことにした。


リディア様が諸々の事務作業をしてくれるおかげで、何の苦労もなく契約が出来た。

異世界から帰ってくるころには入居できるだろう。

まあ元々の家の契約がまだ半年は残っているから、がっつり住むのはだいぶ先になるだろう。


ルゼ様グッズをどうしようか悩む。

もう本人に相談するしかないかもしれない。


ちなみにルゼと同棲だ。

最初にこの話が出た時はルゼもだいぶ驚いていたが、内見時には同棲する気満々になっていた。

ただの同棲だが、自分の年齢を考えるとやらなきゃいけないことがあったがまだやれてない。

いつかはちゃんとしないといけないな。


▽ ▽ ▽


俺達はいつもの客間に居た。


仕事終わりに大量の荷物を家から持ってきていた。

なぜなら今回は野宿の可能性があったので、キャンプセットを用意した。


「みんな、準備は大丈夫かい?」

リディア様が俺達に確認を取った。


「問題ないです」

「大丈夫だよ」

「問題ない」

「「大丈夫―!」」

リディア様は一息つくと、口を開いた。

「ワールドトリップ!」


すると周りが真っ暗な空間になった。

足元が光り、大きな扉が現れた。

リディア様が脚で扉を開け、俺達は落ちるように扉に入っていった。



到着したのは蟻人族に借りている家だった。

『ワールドトリップ』は前回使ったところに飛ばされるのは確定だ。


「僕はティーマに挨拶してくるよ」

「うん。ありがとうお姉ちゃん」

リディア様は出て行った。


「俺達はどうしようか?」

「ダムザムへ行くスケジュールを確認しましょう」

「そうだね」

俺とルゼは先週決めたスケジュールの確認を始めた。


「まずダムザムまではキャリーホッパーに乗っていきます」

「ホッパー?バッタ?」

「そうですね。バッタのようなモンスターです。たぶん想像しているより大きいですよ」

「え?」

「遊園地のパンダの乗り物を想像してもらえると」

「それはデカいね」

「はい。それに乗って森を通って向かいます。馬よりは早いですので3日程で到着です」

「ってことは野宿が2回?」

「はい。そのつもりです」

「テントで寝るの初めてだ」

「私もです。キャンプ道具はあとで借りる予定のマジックバッグに入れましょう」

俺はマジックバッグと聞いて少しワクワクした。


「本当にあるんだ」

「はい。容量が少ない物は意外と普及しているみたいです」

「そうなんだー。食料も腐らないって聞いたから多めに持ってきたよ」

「問題ないです。準備いろいろありがとうございます」

「こっちじゃお荷物だからね。まあ元の世界でもルゼに頼りっきりだけど」

「そんなことないですよ」


気を抜くとすぐいちゃいちゃモードになりかけてしまう。

ルゼは『魅了』を使っていると思えるくらいかわいかった。


俺は舌を噛み、話を戻した。

「ダムザムに付いたらタンク達にまず偵察してもらうんだよね?」

「はい。警備の状況や街の中の状況を確認してもらいます。それを聞いた後はハルキさんに作戦を考えてもらおうと思います」

「え?それって変更しなかったの?」

「はい。ハルキさんなら何かいい案を思い付きそうなので。私も一緒に考えますから安心してください」

「それならいいけど」

ルゼはなぜかニヤニヤしている。


「とりあえずそんなもんか」

「はい。タンク達がいるので戦闘も回復もできます。あとはどう潜入するかだけですね」

「『変化』の使いどころだね」

「そうですね。私の『変化』は5年間ほぼ毎日使ってるので見破られないですが、人に掛けることが少ないのでそこは不安です」

「ちょっと練習しておく?」

「はい。やりましょう」


俺はルゼの練習に付き合った。



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