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12.怠惰のゴフェル

俺達は話し合いをした翌日。

決定した内容をティーマさんに伝えに行った。


「それで、どうするか決めましたか?」

「うん。僕達はダムザムに居る人達を解放するために協力者集めをすることにしたよ」

「なるほど」

「ルゼとハルキさんはダムザムの偵察。僕とファジャで少し遠いですが魔獣人族がいる島に行こうと思うよ。魔獣人族に会えれば憤怒のサイルバルタンの行方も分かるはず」


するとファジャも口を開いた。

「鬼人族からも戦えるものを4名ほど連れて行く予定です」


ティーマさんはそれを聞き、何か考えている。

「ティーマさん?」

ティーマさんは何かを決心したような表情をした。


「わかりました。リディア様とファジャがそう決めたのであれば止めはしません。ですが変更案を出させてください」

「変更案?」

「他の島へ行くのはいったん止め、この島に居る他の種族に協力をお願いしに行きましょう」

「他の種族?」


ファジャが口を開いた。

「ティーマさん。この島には鬼人族と蟻人族以外は居ないはずでは?」

「いえ。私が知っている限り、あと2種族暮らしています」

「え?」

ファジャさんは驚いている。


ティーマさんは申し訳なさそうに口を開く。

「その種族の話をする前に、私は鬼人族に謝罪をしないといけません」

「え?謝罪ってどういうことですか?」

「実は蟻人族は戦闘が出来ないわけではありません。むしろ虫人族の中では集団戦闘の能力が高いと言われております」

「じゃあなんでいままで…」

「本当にすみません。父をすぐにでも救いに行きたかったですよね」

ティーマさんは頭を下げた。


「でもこの地を与えられたときにゴフェル様と約束したんです」

「え?ゴフェルと?」

「はい」

そういうとティーマさんはゴフェルさんとの話を始めた。


「ゴフェル様は龍人族でこの諸島を長い間管理しておりました」

「そうだね。僕が就任するだいぶ前から龍人の里があるこの諸島の担当だって聞いたよ」

「はい。長い間ゴフェル様は差別を受けている種族や人数が少ない種族をこの諸島で保護してくれていたのです」

「え?ゴフェルが?」

ルディア様は驚いていた。


「私達がこの地にやってきたときゴフェル様と約束をしたのです。他の種族と争わない代わりに戦争などが起きても隠れ続けていいと。その代わり他の種族が大変な時は手を貸してやれと」

「それで私達を?」

「はい。その約束があったので謀反の際は身を潜め、路頭に迷っていた鬼人族を保護したのです」

俺は想像以上に話で頭が追い付かなかった。


「謀反が起きた後ゴフェル様がこの街にやってきました。その時に我々におっしゃったのです」

「なんて?」

「自分は少しの間いなくなるから、少し住みにくくなるかもしれない。でもルディア様が住みやすい魔人領を必ず作ってくれるはずだから少し辛抱してくれ。約束とは違うけど、もしその時が来たら手助けしてくれるとうれしいと」

ルディア様とルゼとファジャは黙っている。


「私は今がその時だと考えております。ゴフェル様は他の種族の元にも訪れているはずなので協力を得ることは出来るかもしれません。そして我々蟻人族の戦士100名も王座奪還のお手伝いをいたします」

ティーマさんは椅子から立ち上がり膝をついた。


リディア様は口を開いた。

「ありがとう。協力よろしく」

「はい」

ティーマさんは立ち上がるとファジャの方を見た。


「ファジャ。騙してすまなかった」

「いえ。私が同じ立場なら、同じ事をしたと思います。それに助けてもらったのは事実ですから」

「ありがとう」


ティーマさんはファジャを抱きしめた。


▽ ▽ ▽


話は進んだ。


ティーマさんの情報で水黽族と蜻蛉族がこの島に居ることが分かった。

その虫人への接触はルディア様とファジャとウィノナが向かうことに。


ダムザムの街への偵察は俺とルゼとタンク達だ。

タンク達を前回紹介し忘れていたので紹介したら驚いていた。


リディア様とティーマさんは今後について話していた。

「私は街で武器や防具や食糧の調達を指揮します」

「よろしくね」

「はい。戦闘が出来るのが我々100名と鬼人族20名いるのでそれなりに時間はかかると思います」

「僕達も次に来るのは5日後だから、出発は次の土の日だね」

「本当に異世界に戻れるんですね」

「うん。ハルキさんがいるおかげでね」

「すごいですね…」


ティーマさんは俺の事をジロジロ見ていた。

「あの魔力量で異世界人なんですね」


俺はなんとなく会釈をしておいた。


▽ ▽ ▽


俺達は街の外に出た。


「あー空気がうまいって言おうと思ったけど街と全然変わらないね」

「そうですね。土の中なのに自然が多かったですし」

「2人共、いちゃついてないでさっさと確認しちゃおう」

ルディア様にいじられるのも慣れてきてしまった。


「何を確認するんですか?」

「『サモン』で召喚獣を出してみようと思うんだ」

「あースキルの?」

「そう。僕もルゼもスキルを改変されたからね。召喚獣にも影響があるかもしれない」

「そうですね。心配です」

「元々はどんな召喚獣だったんですか?」


俺が聞くとリディア様が答えた。

「僕の召喚獣は大きな骨で出来たカラスでルゼのは3つ首のワニだよ」

「うわ。さすが魔王と四天王って感じですね」

「まあね」

リディア様は少し自慢げだった。


少し開けたところまで移動してきた。

「じゃあルゼ、始めようか」

「うん」

「サモン!刈り取れ、リガロ!」

「サモン!食い尽くせ、グラール!」


その場の空気が変わった。

地面には魔法陣のようなものが2つ現れ、その中から2匹のモンスターが現れた。


「あれ?」

「「え?」」


魔法陣の上には普通サイズのカラスとちいさなワニがいた。

「骨でも三つ首でもない!」

「ほんとですね。グラールもこんなにかわいくなっちゃって」

そう言いながらルゼはワニをだっこした。


「ルゼ!ルゼ!」

「こんな小さいなリガロを見たことないから新鮮だよ」

カラスもリディア様の頭の上に乗っている。


「リディアだー!リディアだー!」

グラールとリガロと言っていることは理解できるが、会話は難しそうだった。


2人はグラールとリガロのステータスを確認し始めた。


「能力もだいぶ落ちてますね」

「そうだね」

「リガロは僕みたいに支援型になっているね」

「グラールもです」

「正直、期待していた戦闘力がないけどかわいいね」

「そうですね。この子達は愛でることにしましょう」


2人は召喚獣を抱きしめて、蟻人族の街へ戻って行った。




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