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10.蟻人族の街

ウィノナについて行き、階段を下りていく。


「ウワー!アカルク!アカルクスルヨー」

「コッチハマカセテ‐」

階段の壁には全長15cmほどの光る虫がいた。


「ウィノナ、この虫型モンスターは?」

リディア様も気になったのか、ウィノナに質問をした。


「これはランタンビートルといって、蟻人族が代々テイムしてきたモンスターです。土の中での生活なんで、蟻人族の街はランタンビートルの明かりで生活しています」

「なるほど」

リディア様は納得したようだ。


階段を下り終わると、物凄く広い空間に出た。

蟻人族の街は、穴の中にあるとは思えないほど自然豊かな街だった。


「ここが蟻人族の街です。人口は300人程度、蟻人族が約250人で鬼人族が50人程度です」

「そんなにいるんだね。なんで魔王時代に気付かなかったんだろう」

「それは…」

ウィノナが気まずそうにしている。


「理由は分かるんだけどね。僕が就任している間にそういうのを撤廃しきれなかったしね」

「すみません。魔人族と虫人族の関係は人間と獣人やエルフなどと同じで根深いものがありますので」

「うん。大丈夫、分かってるから」

リディア様の顔は少し険しくなった。


「まずリディア様達にはこの街の長である母に会っていただきます」

「わかったよ」

「そこで鬼人族がなぜここに住んでいるのかなども話させてもらいます」

「うん」

俺達はウィノナに案内され、街の奥へと向かって行く。



街はとても賑わっていた。

明かりは階段にいたランタンビートルがそこらじゅうに居て、街を照らしていた。


家は土の山を繊細にくりぬいて作ったような家だった。

「この空間はどうやって作ったの?」

リディア様がウィノナに質問をした。


「入り口などはマジックアイテムを使っていると聞いてます。空間の拡張は蟻人族がやっています」

「ここまで広くか?」

「蟻人族は採掘能力が高いんです。それに土魔法が使えるものが多いのと、土を掘ることに特化したエクストラスキルを持っている人が多いんです」

「なるほど」


ルゼも気になったことがあったようで、質問を始めた。

「ウィノナさん。商店のようなところには魚や果物などが置かれていましたが」

「ここより下の階層で育てているんです。種類は少ないですがそれなりの量を取ることができます」

「もっと下があるんですか?」

「はい。ここの階層は商店や仕事関係の建物が多い階層です。1個下の階層は居住区。そしてその下では池や林を作り、食料を作っています」

「すごいですね」

「ありがとうございます」


話ながら歩いていると、一際大きい建物の前に到着した。


「こちらが母が居る建物です。どうぞお入りください」

俺達は建物の中に入っていった。


▽ ▽ ▽


案内された部屋に現れたのは、ウィノナより少し背の高い女性だった。

ウィノナと同じように触覚が付いていて腕が4本あった。


「蟻人族の長をしているティーマと申します」

ティーマさんは頭を下げた。


「私はリディア、そして部下のルゼと協力者のハルキです」

俺とルゼも頭を下げた。


「鬼人族の行方を追っていたらここにたどり着いたんだ」

「そうなんですね。鬼人族が15年前から待ち続けていたという魔王が貴女なのですか?」

「そうなるかな。こっちでも15年経っているんだね」

「こっちでも?」


リディア様は15年前から今日まで何が起きたかをティーマさん・ウィノナ・ファジャに話した。


3人はリディア様の話に驚くと同時に、俺の事をジロジロと見てくる。

「10年も記憶を無くしていたのですね」

「そのような事があったんですね」

「それでこの男が異世界の人族」


「そういうことでようやくこの世界に帰って来れたんだ。それでティーマ、ファジャ。私達が転移した後の話を聞かせてくれない?」


ファジャはティーマさんを1度見て、口を開いた。


「私達鬼人族は私の父の指揮の元、力が弱まったリディア様とルゼ様、そして色欲と憤怒の2人の安全を確保するために怠惰の悪魔のゴフェル様と他種族の協力者と共に謀反を起こした反乱軍と戦っておりました」

「うん。そうだね」

「撤退中に怪我を負った色欲と憤怒の2人をゴフェル様が、リディア様とルゼ様には私の父が付いて二手に分かれました」

「うん」

「リディア様とルゼ様が『ワールドトリップ』を使ったのを確認し、父達は追っ手を殲滅しました。ゴフェル様と色欲と憤怒の3人はあれ以降行方不明です。協力してくれた他種族の中にも数名が行方不明です」

「そうか…」

リディア様とルゼは落ち込んだようだった。


「私も父から聞いた話なので、少し違う部分もあるかもしれないですが」

「いや、話してくれてありがとう。そういえばガジャールは居ないのか?」

「父は現魔王軍に捕まっていると思います」

「え!?」

2人は驚いていた。


「父達は追っ手を殲滅後、里に帰ってきました。ですが数か月後、現魔王軍が現れました」

「え!?」

「戦えない私達は逃げ、父達は戦いました。父達はそれ以降帰ってきませんでした。私達は逃げている最中に蟻人族に出会い、保護をしてもらったのです」


リディア様はファジャに問いかけた。

「それでガジャール達はどこに?」

「蟻人族にいろいろ調べてもらったんですが、ダムザムの街に居る可能性が高いです」

「ダムザムといったら、この島唯一の街だよね?」

「はい。街は増築され、現魔王軍に刃向ったものをそこで捕えていると思われます」

「まさかそんなものが?」

「父がそこに居るかはわかりませんが、可能性はあります」

ファジャの目はリディア様とルゼに何かを訴えかけていた。


その様子を見ていたティーマさんは口を開いた。

「リディア様。もし鬼人族のために何か行動をするようでしたら、蟻人族は全面的に協力をいたします」

「…ティーマさん」

ファジャは嬉しそうにティーマさんを見る。


「この15年、戦闘が出来るものがほとんどいない我々の為に鬼人族はモンスターとの戦闘などを代わりにやってくれました。この街が発展できたのも鬼人族のおかげです」


リディア様はティーマさんの目を見て口を開いた。

「わかった。その気持ち受け取りました」

「全盛期ほど戦闘力がないことも聞いております。すぐには決断できない話ですので、数日この街で生活をして考えをまとめるのはいかがですか?街に家を用意しますので」

「助かるよ、ありがとう」


俺達はウィノナに案内され、用意してもらった家に向かった。




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