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隣席の少年


「……」



授業に付いていくべく、頑張っている碧君。

僕はそれを、気付かれない様に盗み見ていた。

授業の方は正直余裕だから大丈夫。


そんな勉強の事よりも……碧君を見ていると、胸の辺りが温かくなる。

心地良い、そして飽きない感覚。



「……?」



たまにこちらを見る碧君。

勿論その時は全く知らない顔をして、前を向く。

そしてその時は、より温かくなって。


「……気のせいか」


彼は再び授業に取り組む。

邪魔はしちゃいけない……そう分かっているけれど、やめられなかった。

僕は一体、どうしてしまったんだろう。



 ☆


《――「えーっと、こちらが優生君になりますでーす!」――》


初めて彼が現れた時は、クラス中が彼の敵だった。親のコネを悪用した入学に異能持ち。聞いている限りじゃ問題児。

そして僕の隣席になった時は本当に嫌だった。

そんな人が近くにいるなんて――そう思っていたけれど。


《――「よろしく」――》


《――「ありがとな」――》


《――「俺と、友達になってくれないか?」――》


我ながら単純だと思う。

人から善意の声を掛けられる事は久しぶりで、嬉しかった。

優しそうな彼の声が好きだった。僕は何も返事出来なかったけれど。


僕の一族が使える『音魔法』。

例えば『サウンドリピート』は一度聞いた音を対象に流す魔法。

それからはソレを使ってクラスメイトにチャイムの音を偽装したり。自分だけに彼の声を再生したり……うん、駄目なコトなんて分かってる。

でも止められなかった。


《――「おい聞いたか? アイツ炎剣倒したらしいぞ」「コネ入学じゃなかったのかよ」「まさか異能で? そんなのある訳……」――》


そして。

気付けば、彼はこのクラスの認識をひっくり返していたのだ。





昼休み。

軽いご飯を素早く食べて、音楽の世界に浸る……今まではそうだった。


「『サウンドリピート』……」



 ――『俺と、友達になってくれないか?』


 ――『俺と、友達になってくれないか?』


 ――『俺と、友達になってくれないか?』


幸せだ。

『音魔法』で碧君の声を聞く。授業中では使えない分、昼休みは思う存分再生出来る。


や……やましい目的でやっているんじゃない。次碧君が話しかけてきた時の、練習としてやっているだけだ。でももしバレたら……恥ずかしくて死んじゃう。



「……」


僕と同じ様に、イヤホンを着けて眠る碧君。

大丈夫……バレてない。

バレるわけも無いんだけどやっぱり少しは不安になる。



 ――『全くの他人だ。隣の席ってだけのな』


 ――『全くの他人だ。隣の席ってだけのな』


 ――『全くの他人だ。隣の席ってだけのな』



また、僕はリピートする。

この『声』は……正直、まだ聞いていて胸が締め付けられる。

でもその真意は知っている。言葉とそれに込められたモノが、全く逆だったそれ。

初めてそれを聞いた時は頭が真っ白になって。


『サウンドノイズ』……狙った対象に不快音を与える音魔法――それも、彼に対して発動してしまった。


後から考えれば僕を守る為に口にした言葉だと分かった……未だにそれを謝れないままなんだけど。


僕は謝らなきゃいけない。

サウンドノイズを碧君に発動してしまった事。僕のせいで決闘を受ける事になってしまった事。

……色々と、聞こえていたはずなのに無視してしまった事を。


でも、僕は逃げ続けて。


 ――『俺と、友達になってくれないか?』


 ――『俺と、友達になってくれないか?』


 ――『俺と、友達になってくれないか?』


やっぱり、この声が好き――



「!?」



リピート中、隣の碧君が突然飛び起きた。

ま、まさかバレてるなんてないよね。

 


キーンコーン……



この日最後の授業のチャイムが鳴る。

しばらくして部活や放課後の話で教室が賑わう、そんな時間。

が、来なかった。



「え、『炎剣』だ」


「どうしてこんな教室に」



学年十位、神楽煉。別名『炎剣』。

彼女がクラスのドアを開けたのだ。

当然ざわつくクラスメイト達。



「見せもんじゃねえぞオラァ!!」



思わず耳を押さえる。

彼女のその声と共に、ざわめきは静寂となった。

まるでクラスメイト全員が、蛇に睨まれた蛙の様に。

いや。一人全く臆していない。



「……入っていきなりうるさい、何だよ煉」

「いやお前、『こんなん』だから学校の事知らなそうだと思って、学校案内でも」


「マジで!? 頼むよ」

「あ、ああ」

「持つべきものは煉ちゃんだね」

「テメェ黙れ!」



静寂の教室の中、繰り広げられる二人の会話。

クラスメイト全員が、有り得ないモノを見る様な目をしている。



「「れ、煉さん俺達も」」

「テメエらは着いてくんな、腰抜け共が!」


「「え、ええ」」



彼女によく着いて行っていたクラスの二人に怒鳴った後、碧君と神楽さんは教室を後にする。

嵐の様な出来事。やっぱりああいうタイプの声は僕は苦手だ。


……でも。

碧君に対する彼女の声は、全く『悪い音』じゃなかった。

むしろ――好意があふれている様な。



「怖かったあ……」

「『炎剣』……本当女と思えねえ迫力だわ」

「転校生も度胸あるよな、あれ一応昨日闘った相手だぞ……」

「でも二人で一緒に帰ったって聞いたよ。仲良さげにおんぶして」

「マジかよ!?」



クラスメイト達は緊張の糸が切れた様に、また話を始める。


僕は一人。

胸の中にもやもやとした何かが出来ていた。

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