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決闘開始


『神楽煉』とやらが到着して数分か。

俺に威勢良くしていた強面二人は、煉の傍にずっと居た。


《――「オイ。言ってた条件と違うじゃねぇか」――》


《――「す、すいません!」――》

《――「あんな野郎がココに居るのが、俺達我慢出来なくて」――》


挑発でもしてくるかと思ったが、あの様子を見る限りあの二人は煉の『舎弟』な奴だろう。

ちなみにさっきその彼女に怒られてた。二人とも顔面蒼白。ざまぁねえな!


――「おっ、アレが噂の」「確か『碧優生』だっけ?どこかで見たことあるような名前……」「一対三だろ? 大丈夫かよ……しかもアレって、あの『炎剣』じゃ」――


決闘場は大きな体育館のような場所で、上には観客席のような場所がある。

そしてそこにワラワラと人が集まってきていた。


ガヤが鬱陶しいが別に良い。

どうせすぐに終わるから。



「えーっと、それじゃ決闘の立会人を行わせて頂きま――」

「さっさと始めな」


「は、はい! はじへ……始めさせて頂きます!」



赤髪の彼女――神楽煉がそう言うと、立会人の眼鏡少女は顔を白くする。

噛んでるし。



「指定の位置に着いて下さい……お互い、準備は良いですか?」

「ああ」

「おう」



俺と煉、加えてお付きの二人が頷く。



「それでは両者――始め!!!」






「地よ、敵へ土塊を! 『アースブラスト』!!」


煉の舎弟であろう強面が、恐らく五回目位の詠唱を完了させる。

無から現れる土の塊が俺の顔面に――



「ぐっ!」



構わず受ける。

めっちゃ痛ぇ!

衝撃で俺の身体は地面を転がり、やがて止まった。



「……何の、つもりだ?」



ボロボロになった俺を見て、そう言う煉。


見たまんまなんだけどな。 

俺は決闘が始まってから――三人に攻撃を全くしていない。

されるがままってやつだ。

あー疲れた。もうこれで十分だろう。あの二人の気も済んだ事だろうし。


異能で反撃? 疲れるから無し。

こんな奴らに使うほど俺の体力は無駄にできません。

時代は省エネ。


「お前らの勝ちだよ、決闘は……これでいいか? 立会人さん、降参だ降参」


「えっ!? は、はい! 勝負あり!! えっと、只今の勝負、『碧優生』の降参により、勝者は――」


立会人の宣言を耳に流しながら、俺は決闘場の出口へと歩き出す。

早く帰りたい。


疲れたし、帰ってダラダラしないといけないしな。

授業のせいで頭がパンクしそうなんだよ。



――――「何だよ、アレ……」「やる気あんの?」「つまんねー」――――



嫌でも耳に入るガヤ。

鬱陶しいが反応する程でもない。


「テメエ、ふざけてんのか? 悔しくねえのか?」

「俺の目的は『決闘を受ける事』だけだ。勝ち負けはどうでもいいんだよ」


煉の声に振り向く。

あの時の約束。

それに『決闘に勝利する』なんて言葉は全く無かった。



「……ッ!」



驚く表情をする彼女。

少しだけ気味が良い。



「じゃあな――約束は守ってくれよ」

「おい、待て――」



返事を待たずに、踵を返す。

さっさと帰ろう。

そういや今日、優奈が遊びに来るとか言ってたし。



――「おい、もう終わりかよ!」「何だアイツ」「転校生がどんなもんかと思ったら……」――



ああはいはい。こっちは被害者ですよ。

鬱陶しいガヤを聞くのも終わりになりそうだ。



「煉さん追わなくて良いですか?」

「……ああ」

「ですよね!! あんなヤロー、関わるだけ無駄っすよ!」



出口間際、そんな会話が聞こえる。

どうやら良い感じにあの舎弟共が進めてくれている様子だ、やるじゃん――







「それにしても――アイツ、本当に『碧優あおいゆう』の息子なのか?」






でも。


扉に手を掛けようとしたその時だ。

観客席からその名前が俺の耳に入った。



――「えっ、それマジなの?」「お前知らねえのかよ、ほら、アイツの苗字は『あおい』だろ」「なのに『無用の長物』持ち!? かわいそ~」――



その言葉は火種となり、燃え移っていく。



――「あの人の息子とは全く思えないよな」「異能持ちらしいよ」「魔法の才能、妹に全部取られたらしい」――


聞こえてんだよ、全部。



――「それでコネ入学? 必死過ぎでしょ」「親が可哀そうだよね」「ってか、そんな息子を『ここ』に入れるなんてさ」――



ドクン、と。

心臓の音が、木霊する。



――「アイツの親、相当頭オカシいんじゃないの?」――



扉に手を掛けた腕を手前に引っ張る。

この鬱陶しい音を消すよう強く。この怒りを少しでも消すために強く。


バタン、と大きな音を立てて扉は閉まった。




「――――おい、聞けよお前ら」




静まり返った観客席。

俺はそこへ声を向ける。

そいつら全員に届くように。



「魔法が使えないとか、『無用の長物』だとかは百も承知で事実だ。だからそんなもんどれだけ言っても構わねーよ。ただ――」



怒りのままに、声を発する。



「――母さんの事を、家族の事情も何も知らねえお前らが――俺の『誇り』を馬鹿にするんじゃねえ!」



もう後先考えられない。

コイツらをどうにかしないと、収まりがつかない。




「降りて来い、達観気取った観客(ギャラリー)共が――っ!」




その先、声を更に大きくして。




「お前ら全員、()()()()()()()()()()!!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんで魔法に詠唱が必要なんだろう? その文言どっから来たんだろう? 異能同様に唐突に身に付いた能力であり、学んだり編み出した訳でも無いのに。 あー、でも主人公も技名らしきモノを発言して…
[良い点] 優くん超かっこいい、超好き、次のお話楽しみにしています、がんばって。 [一言] PKKもみてますよ(^∇^)ノ♪
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