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アスレピーカの面々と

「………はぁ」

「…………」


 空気が重い

 いつも騒がしいシャリアルが神妙な顔で黙っているぐらいには空気が重い。

 目の前には深い溜息を吐くルーチェル、そしてその他アクタイオンチームのメンバー。試合が終わった後流石に心配でテントを訪ねてみればこれである、自分は経験したことがないが所謂葬式などに例えられる空気とはこういうものなのだろう。

 いやしかし仕方がない。それ程までにルブヘルツの一年首席フリギルトは強かった。


「……」


 しかし1人だけ様子が違った。

 チームのリーダーであるアクタイオンである。彼は1人なにか考え込んでいた。周りの様子も気にならないようで、自分たちが入ってきても視線をチラリとも寄越さない。完全に思考の海に沈んでいる。


「………どうか、したのか」


 そうアクタイオンに声をかけたのはジルヴァラだ。そしてその声に初めてアクタイオンがこちらを向く。


「うわっ!! 君たちいつの間に!!」

「少し前からいましたわよ」


 どうやら全く気がついてなかったようである。ルーチェルの言葉にそ、そうかと咳払いを一つし彼は改めてこちらに向き直る。


「いや、情けないところを見せてすまなかった。君たちに自信満々に見に来いと言ったのにあんな大敗を喫してしまうなんてな」

「そ、そんなことないよ! アクタイオン達も凄く強かった!」

「そーだよ! てか全然情けなくなかったし!!」


 苦笑するアクタイオンに慌てて声をかける、それにシャリアルも続いたが、彼女の言葉に全面的に同意だ。実際アクタイオン達の連携や魔法は見事だった。自分たちが対戦相手だったら勝てなかったかもしれないと痛感したくらいには。


「そう言ってくれると慰められるよ、ありがとう」

「…傷心中のところ申し訳ありません。少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 ふと、ずっとだんまりだったリュツィが声を上げる。彼はグランの肩から降りて人型に変化するとアクタイオンの前で膝を着いた。そしてそのままリュツィはアクタイオンの頬を触る。


「ふむ、やはり……。アクタイオン殿、最後に受けた魔法について、貴方が感じたことを教えてください」

「流石高位悪魔、気がついたか」


 アクタイオンが自身のチームメイト達に目配せする。話してもいいか、という事だろう。そしてルーチェル達は構わないと言うように首肯する。


「そうだな、もしかしたら君たちに俺らの敵を討って貰うことになるかもしれないからな。いいだろう教えるよ」


 そして彼は手を広げると、水よと至極簡単な初級魔法を唱えた。

 しかし本来なら水が溢れてくるはずの手の平には水の1滴すら浮かばない。いくらアスレピーカの得意魔法が身体強化だとしても、こんな初級魔法を使えないのは魔法が一切使えない自分くらいのものだ。

 次に彼は近くにあったランタンを手に取る。これは持ったものの魔力に反応して火を灯す魔道具だが、うんともすんとも反応が無い。


「…まさか、魔力が?」

「正解だジルヴァラ、彼女の炎は魔力を焼き尽くす炎だった」


 その言葉にヴァイオテールの3人は息を飲むが、唯一リュツィだけは予想していたようだ。成程先程頬を触っていたのはそれを確かめるためだったのか。


「えっそれ魔法がもう使えないってこと!?」

「いいえ、僅かですが回復はしてきていますわ。あくまで一時的に焼き尽くすものかと」


 先程まで椅子に座り凹んでいたルーチェルがいつの間にかアクタイオンの後ろまで来ていた。その言葉に質問をしたシャリアルが良かったー!! と大袈裟なほど喜ぶ、ジルヴァラもホッとしてるようだ。


「あと1時間もすれば基本的な魔法は使えるようになるでしょう、明日には元に戻っているはずですよ」


 アクタイオンの身体検査をしていたリュツィがニコリと笑って手を離す。リュツィが言うのなら本当に大丈夫なのだろう、本当に良かった。


「あんな魔法は見たことも聞いたこともない、君たちも気をつけろよ」

「その前に準決勝戦ですけれどね」


 そう言ってルーチェルがこちらを見る。


「仮にも(わたくし)を1度下したのですから、負けたら承知しませんわよ!」

「そうだな、君たちとは決勝で戦いたかったがまた今度だ」


 そう言う彼らの表情は晴れやかだった。アスレピーカは自分にも他人にも厳しい寮、しかしだからと言って必要以上には追い詰めない、良くも悪くも自己研鑽を積み前へと進む気質の者たちなのだ。

 勿論悔しさはあるだろう、内心はどう思っているのかは分からない。まだ落ち込んでいるのかもしれない。けれど


「…うん! きっと勝つよ!」

「そこは"絶対勝つ!"でしょ! もーグランってば決まらないんだから」

「ご、ごめん」

「…だが、グランらしい……そうだな、勝つとも」

「ビビるなんてボクららしくないもんね! 仇はとるよ!」

「ああ任せた!」

「応援してますわよ!」


 差し出された手を握る。

 勝てるかなんて、正直自身はない。けれどやるしかない





 そして思いを託し託された彼らを見る2つの影。


「なーんか盛り上がっちゃってるねえ」

「……言わせとけばいい、いくぞ」

「あっ待ってよ!」


 2つの影はグラン達に背を向ける。

 向かうはもう1つの準決勝が行われる会場。


「そう簡単に勝たせるものか」

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