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第一試合 終了

「元々、グランとジルヴァラ殿の耐久力は郡を抜いている。学生レベルでは彼らを真に止めることは出来ないでしょう」


 そう満足気に頷くリュツィの横で審判は微妙な顔をする。この後方保護者面悪魔、何故私に話しかけてくるのだと。

 隠されていたサポート部隊が霧が晴れたように姿を現していく。レミーは何とか体制を立て直そうとするが、ジルヴァラに首をきゅっと締められ一瞬で昏倒した。


「マリア!!」

「分かっているわ!!」


 ハーウッドの声に答えるように、マリアの瞳が強く輝く。

 ミアが支援魔法をマリアにかけていく。全力の、魔力が尽きる程の捨て身である。グランはそれを阻もうとするが、ハーウッドに邪魔されて近づけない。


「舐めないで!」

「うっそかわした!?」


 シャリアルの攻撃の隙間を抜い、再びマリアがジルヴァラへと接近する。

 あまりにも早いスピードにシャリアルが目を見開く。この蛇の波を抜けるなんて、並の動体視力では不可能だ。


「ジル!!」


 そしてそちらにグランの気が逸れた瞬間、ハーウッドは自分たちを高い炎の渦の中に閉じ込めた。己をも燃やす捨て身の防御、追い詰められたマリア達は短期決戦を選んだのだ。


「カラクリはその瞳か」


 魔眼の譲渡、一体どれ程持つのか分からない。

 だが彼女があの目になってから、間違いなく動きが良くなっている。何よりもその適格な剣捌き、素人目でもわかる。彼女は的確にジルヴァラの急所を付いている。


「んー、あれどっかで見た事あるような…」

「知ってるのシャル?」


 グランの所まで後退したシャルリアルがなにやらうんうんと唸り、そしてあっと声を上げる。


「あれ、判別の魔眼だ」

「! それ聞いたことある」


 確か授業で習った魔眼の1つだ。

 ざっくり言えば、見たものの能力を見透す魔眼。比較的普遍的なものであり、しかしその能力は多岐に渡る。

 その全ての能力を持つものは少なく、大抵は何かしらに特化した魔眼となっている。その特化の種類が多すぎて、魔眼の研究者の間では「判別の魔眼に同じものは無い」と言われているくらいだ。


「私たちが光魔法が苦手っていうのも、多分あの目で分かったんだ」

「判別の魔眼は特化型が多い……彼の魔眼は弱点を見破る、とかでいいのかな」

「多分ね」


 それは恐ろしい。とても強力な魔眼だ。

 彼らがシャリアル達を的確に邪魔できたのにも納得がいく。一瞬混血であるということがバレているのかとも思ったが、どうやらそんな事はないらしい。それに少し安心する。別にバレてどうこうというわけではないが、混血に対しては過剰に毛嫌いする人もいる。今以上に好奇の目で見られるのは、出来れば勘弁願いたいことであったので。


「というわけで、ジルを手伝わないとね! ボク今日いいとこ無しだし頑張るぞー!」

「え、まって何をするつもりなのシャル」

「グランはそこで見てて! というわけで覚悟しろハーウッド!!」


 思い出せてスッキリしたという顔で、シャルが晴れやかに笑う。そのあまりに可愛らしい笑顔に、ジルは「あ、何がするつもりだこいつ」と慌てて距離をとる。巻き込まれたくない。


「"私の言葉は黒い花、私の目線は夜の幕"」


 シャルが歌うように呪文を紡ぐ


「"私の身体は闇の泉、全ての影は私に従う"」


 それは闇魔法の上級魔法。本来学生なら使えないそれを、シャリアルは簡単に発動させる。


「"黒に呑まれて(ナハト・シク)"」


 その言葉が発せられた途端、炎は消え、全ての光が地へと沈んだ。


「なにこれぇ!?」


 ミアが叫び声を上げる。ハーウッドも困惑したように辺りを見渡す。

 今この瞬間、闇の中を見通せるものは術者であるシャリアル、そして夜の眷属であるジルヴァラとリュツィのみであった。


「勝負がつきましたね」


 リュツィがそう呟いたのと同時、マリアの剣が高く弾き飛ばされる。

 それが地に落ちる瞬間、ジルヴァラに峰で打たれたマリアが地に沈んだ。

 それを見届けたシャリアルが術を解除する。


「……そこまで! この試合、ジルヴァラチームの勝ちである!!」


 光が戻った審判がそう高らかに判決を下す。

 第一試合、制したのはグランとその仲間たちであった。

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