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悪魔の魔法

暫くリュツィによるいじめっ子お仕置パートが続きます

「見たかアイツの顔!」

「ずびずび泣いちゃってさぁ〜、あー面白かった!」

「フラフラどっか行ったけどどこいったんだろうな?」

「どっかで自殺でもしてんじゃねぇの?」

「あはは、じゃあ世界のゴミが1つ消えたってことじゃん!」

「俺らゴミ掃除するなんてすっげぇ良い奴じゃね?」

「違いねぇ!」


 3人の少年と1人の少女がそう言って笑う。

 楽しそうに、1つの小さな命を奪ったことなんて忘れ去ったように。


「清々しい程のクズですねぇ。まぁその方がこちらも良心の呵責が無くていいんですが」

「あ、悪魔に良心ってあるの…?」

「ある個体もいるんじゃないですかね?」

「じゃあ君にはないってことじゃん…」


 悪魔が楽しそうに笑う。なにに笑う要素があったの…とボヤきつつ、グランも教室の扉からそっと中を伺った。

 胸元にルインの入った小さな棺をギュッと握る。これはリュツィが造ってくれたものだ。

 部屋に戻った時にはいじめっ子たちはもういなくなっており、ルインの無惨な死体だけが残っていた。

 事実を改めて目の当たりにし崩れ落ちそうになったところをリュツィに支えられ、一瞬目を覆われた次の瞬間には部屋は綺麗に片されていた。

 悪魔というのは本当に万能らしい。


「はてさて、対価だけ頂くつもりでしたがこれは少しお灸を据えなければなりませんねぇ」

「楽しそうだね…」

「この世界に呼ばれるのは久しぶりなので……。恥ずかしながら少しばかり高揚してしまっているようです」

「ほ、程々にしなよ?」


 庇う気はない。大切な友達だからと言うだけでなく、間違いなく1つの罪の無い命を奪っておいて、尚あんな態度を取る人間を庇う道理なんてグランにはない。


「命を奪う以外は自由にして…リュツィの思うままに」

「承りましたマイマスター」


 リュツィが1つ指を鳴らす。

 それに合わせてリュツィの魔力がグランを包み込む。


「認識阻害と消音の魔法です。あの人間達に貴方の姿を認識することは出来ません」

「こ、これ結構複雑な魔法じゃ…」

「では行ってまいります」


 さらっと高等魔法を指ひとつで使った悪魔は、今度は自分に魔法をかけ猫へと変化する。


「さて……私のマスターを傷つけたこと、心から後悔させてさしあげましょう」




「にゃあおん」

「ん?」


 猫の鳴き声がする。

 声のした方を向くと、1匹の綺麗な赤毛の猫が此方へと歩いてきていた。


「は? ここ教室だぞ? どっから入ってきたんだ?」

「野良か? こっちくんなよ汚ぇなぁ」

「えー! 猫可愛いじゃん! ほらこっちおいで〜」

「おいおいどんな病気持ってるか分かったもんじゃねぇぞ?」


 リナがニコニコと笑って猫に駆け寄る。

 逃げるかと思ったが、そのネコは特に気にすることなくリナを見上げていた。


「可愛い〜! どこから来たのぉ? 誰かの飼い猫?」


 触ろうとしたリナの手がさっと避けられる。みっともない姿に笑いが起こった。


「ちょっと! 触らせてくれたっていいじゃん!」

「猫に言葉なんか通じねぇだろ」


 俺たちのリーダー格であるライドネが手をかざす。こいつが得意なのは風の魔法だ。大方、猫を風で捕まえて甚振るつもりなのだろう。

 予想どおり、風が巻き起こり猫が宙に浮く。そのままライドネが手を下に振り下ろせば、猫も同じように床へと叩きつけられた。


「ちょっと可哀想じゃん!」

「あ? お前鳥の時はなんも言わなかったじゃねぇか」

「鳥は可愛くないもん」


 リナの言葉に舌打ちをしてライドネが猫を解放する。こいつはリナの言う事は割と聞くのだ。

 彼女は特別可愛い訳では無いが、ライドネはリナに割と本気で惚れているようだった。趣味が悪い。

 猫はピクリとも動かない。打ちどころが悪かったのだろうか? 可哀想に。まぁどうでもいいけど。

 リナがほらもぉ死んじゃったじゃん! と文句を言っている。煩い女だ、高い声が頭に響く。

 ライドネのお気に入りだからつるんでいるが、そうでなかったら殴って黙らせているところだ。


「なぁん」


 今度は後ろから猫の声がした。

 振り向けば先程の猫と瓜二つの赤毛の猫が座って此方を見ている。

 思わず先程の猫を振り返る。いる。間違いなく。

 兄弟猫、だろうか?それにしても似すぎている気がする。

 なにか、嫌な予感がする。


「なーお」


 上から猫の声がする。

 吊り下がった照明の上には、1匹の、赤毛の猫。


「にゃあ」


 足元から声が

 足の間から、赤毛の猫が


「にー」


 横から


「ぐるる…」


 前から


「にゃーお」


 後ろから


「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「にゃあ」「にぃ?」「なーん」「にゃー」「ぐるるる」「なーお」「にゃお」「にゃーぉ」「なー」「なーお」「にゃん」「にー」「にゃーん」「にゃお」「なーん」「にゃー」「にゃあ」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」「にゃあおん」「なぉーん」「にゃあん」「にーにー」「くるるる」「なー」「にゃあ」「ぐるる」「にゃあ」「にゃーお」「にゃー」「なーお」「ぐるる」「くぁー」「んーん?」「にゃーお」「にゃ」「にゃあん」



 猫が、あちこちに

 どこを向いても猫、猫、猫


「な、なによこれぇ!」


 リナが叫ぶ。そんなの俺が聞きたい。なんだこいつらは


「ひ、ひいぃ!」


 アーウィンが逃げ出した、扉を開けて廊下へ飛び出していく。

 いくつもの金の目がそれを追う。その異常な光景に足が震える。


「なんだよコイツら!」


 ライドネが突風を巻き起こすが猫たちはビクともしない。

 いや、これは猫なのか?

 そう考えてしまったら、一気にこの猫たちが得体の知れないものに見えてきた。

 目が、金の目が此方を向く。

 俺を見つめて、近づいて、そして


「う、うわぁぁあああああ!!」

「おい! 待ちやがれシッド!」


 ライドネの声が聞こえるが何を言っているのか分からない。

 逃げなければ、あの化け物たちから、じゃないと


「おや、どうかされたので?」

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