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苦戦

「ごめんジル失敗した!」

「気にするな、想定していた事だ」


 ジルが地面を蹴ってマリアから距離を取る。そこに2人がヘビに乗って合流した。

 シャルの影から大きなオロチがずるりと現れ、3人を守るようにとぐろを巻く。


「気配は? 魔力探知は出来そう?」

「……ダメ、相当高度な隠蔽魔術をかけてる」

「五感にも反応しない、見つけるのはほぼ不可能だな」


 大体の隠蔽に関する魔術を見破る2人でも見つけられない。魔法の使えない自分はそもそも戦力外だ。

 オロチの中から辺りを見渡してもマリアの姿しか見えない、彼女もこのオロチを警戒して距離を取っているようだ。だがこの膠着状態が何時まで続くかは分からない。

 このステージの大きさは縦横共に50m、さほど広い訳では無いが狭い訳でもない。


「足場を崩す?」


 拳を握りながら言う。いっそこのステージを全て壊してしまえば、向こうにも少なからずダメージは与えられるだろうと思っての提案だった。

 だがそれは直ぐに却下される。


「ダメ、地面に複数のトラップの気配がある。刺激したら何が起こるか分かんない」

「ただの攻撃魔法なら何とでもなるが、催眠や認識阻害のものなら厄介だ」

「な、なるほど…」


 自分には全く分からないが2人が言うのならそうなのだろう。踏まないようヘビの居るところだけを通るように言われた、もっと先に言っておくべきでは?と思うが黙っておく。偉そうに言える立場ではないので。


「……何時までそこで篭っているつもりだ、こないならコチラから行くぞ!!」

「"光よ(リュミエ)"!!」


 突然頭上から輝く太陽の光が降り注いだ。

 ジルが思わずと言ったように目を背け、シャルの魔力の流れが崩れる。

 2人にとって陽の光は弱点だ。一瞬朧気になったオロチの隙をついて、マリアが此方へと飛び込んでくる。

 その切っ先の狙いはシャル、だがシャルは突然の太陽の光に虚を突かれて気がついていない。ジルが迎撃しようとするが動きが鈍い、間に合わない。


「させない!」

「!!」


 地面を蹴る、タイルが割れる音がする。

 全力はダメだ、殺してしまう。だから弱く、力を入れるのは足だけ。でも守れるように。

 片手でシャルを引き寄せ、もう片方の腕でマリアの剣を跳ね除ける。抜き身の刀身が腕に鋭く当たるが、生憎とその程度で傷つくような柔な体では無い。

 マリアの手から剣が離れる。回復したジルが飛び出し追撃を加えようとするが、その前で再び光の魔法が炸裂した。


「ぐぅっ…!!」

「ジル!!」


 ダンピールであるジルは陽の光で死ぬ事は無い。だがそれでも完全に克服できている訳では無いのだ。それを正面から食らって無事でいられる筈は無い。

 だけどどうして、先程から光の魔法ばかりが連発されている。2人の血筋のことは知らない筈なのに、まるでコチラの弱点を知っているかのように。

 その隙にマリアが再び距離を取る。だが今度は大人しく様子見をする気は無いらしい。


「力を貸して、ハーウッド」

「了解マリア」


 マリアが瞳を閉じる。そして再び開くと、その瞳は先程までの紫ではなく、深い青の瞳に変わっていた。

 その瞳は先程見たばかりだ。相手チームの内の1人、金髪に青の瞳をしていたハーウッド・スワッドと瓜二つの色。


「魔眼か!」


 ジルの言葉に思わずリュツィを見る。彼が集めてくれた資料にこの情報は無かった。

 リュツィも驚いた顔をしていた、彼の情報網にもこの力は引っかからなかった。という事は


「貴方たちには優秀な情報屋がいるそうね」


 マリアがチラリとリュツィを見る。


「言ったでしょう? 私たちは貴方たちを最大のライバルとして、全力で御相手すると」


 マリアが手を伸ばす。その先に何処からか新しい剣が現れ、マリアの手の中へと収まった。


「これはまだ誰にも見せた事が無い秘策。貴方たちに見破れるかしら?」

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