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第一試合開始

「では私は横で見ていますね」

「うん、また後で」


 試験会場として幾つかに分けられたステージの中へと入る。周りは壁に覆われ外から中を見ることは不可能だ。

 その中央、白いタイルが敷き詰められたバトル用のステージに登るグランの肩から、猫へと変化したリュツィが飛び降りた。

 この試験では使い魔の使用も許可されている。だが今回、リュツィの助けは無しでやるとグラン、ジルヴァラ、シャリアルの3人で決めたのだ。

 なにせリュツィはとても強い。本気を見たことは無いが、彼に適う存在が少なくともこの学園の生徒にはいないということぐらいは分かる。彼がいたらこの試験も楽に突破できるだろう、だがそれを良しと出来るほど、彼らのプライドは低くはなかった。

 リュツィも心配しつつもこれを受け入れてくれた。という訳で今回彼は見学なのだ。

 審判を務める教員の横へトコトコと歩いていくリュツィを横目に、グラン達はステージへと上がった。


「待っていたわ」


 そこにいたのは赤と白の制服を見に纏った四人の生徒であった。

 ミア・レリオッタ

 レミー・レンジャー

 ハーウッド・スワッド

 そしてリーダーであるマリア・シルブエラ

 後ろに控える3人より少し前に立つマリアが腰に下げた剣を触りながら口を開く。


「私たちは貴方たちを舐めたりなんかしない。最大のライバルとして、全力で御相手するわ」


 こちらのリーダーであるジルヴァラが、マリアに相対するかのように彼女の前に立つ。


「あぁ、こちらも手を抜いたりなどしない」


 張り詰めた空気が会場を満たす。

 そして


「ルールを説明する。魔法道具の持ち込みは一部の例外を除き原則禁止、勝敗はチーム全員が戦闘不能もしくはリーダーの降参によって決まる。以上、質問は?」


 その言葉に両者首を横に振る。それを確認した審査員は1つ頷き、ではと言葉を続ける。


「只今より第一試合、ルブヘルツ・マリアチーム対ヴァイオテールチームを開始する。両者、構え───始め!!」


 その言葉で弾き出されたようにマリアが剣を抜き、ジルヴァラへと切りかかった。

 それをいつの間にか手にしていた剣で受け止めるジルヴァラ。ギィン、と鉄がぶつかり合う音が高く響く。

 両者の鍔迫り合い、どちらも譲らない。


「いっくよー! "おいで私の可愛い眷属、力を貸して闇の蛇"!!」


 シャリアルの影が伸び、そこから大量のヘビが溢れ出す。彼女の得意とする闇属性の魔法だが、なんの魔法かは自分でもよく分かっていないらしい。ただ呼びかけたら皆力を貸してくれると言っていた。

 それは大丈夫なのかと心配になったけど、リュツィが面白そうな顔をして大丈夫だと太鼓判を押したので、まぁ大丈夫なのだろう。結局何の魔法かは分からなかったが。

 真っ黒なヘビたちが相手チームの視界を潰す。見えなければ連携も何も無い。


「グラン!」

「了解!」


 シャリアルの言葉でヘビたちの中へと飛び込む。

 本来このヘビは触れただけでダメージを受けるが、魔法の効かない身体を持つ自分にはそのデメリットは通用しない。

 ヘビの川に流され、着いたのは援護チームの要、レミー・レンジャーの背後である。


(とった!!)


 彼は襲い来るヘビに気を取られ此方に気がつく気配は無い。そのまま後ろから捕まえ、ヘビの中へと引きずり込めば戦闘不能に……!!


「舐めないでよね!!」


 その声が聞こえたのは、捕まえた筈の目の前の少年からではなく、背後からであった。

 瞬間、腕の中の少年が泥のように崩れ去る。

 魔法で形成された偽物。

 しまったと気がついた時にはもう遅い。振り返った自分の目の前で、いつの間にか集まっていた援護チームの3人の姿が掻き消えた。

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