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sideマリア

「マリアちゃん、私たちの最初の対戦相手決まったって」

「そう、誰なの?」


 マリアと呼ばれた銀髪の少女が高く結わえたポニーテールを解く。聞き返したは言いもののその声は酷く平坦で、興味など無いという事がありありと分かる。

 自分達に当てれたテントの中、女子に割り当てられたスペースでマリアと栗色の髪の少女は制服から寝間着へと着替えていた。


「ヴァイオテールだって、あの変わり者の寮だよ」

「ヴァイオテールですって?」


 マリアが聞き返す。

 身体を締め付けるベルトを外し、緩いローブに腕を通しながらマリアは少女の話を聞く。しかし先程までとは違い、彼女の退屈そうな瞳に剣呑な光が宿っていた。

 それに気が付かないまま、栗色の少女は先生に渡された対戦表を眺めて口を開く。


「あんまり知らないけど、魔法の使えない落ちこぼれと滅多に人前に出てこない引きこもり。それにあの問題児って噂の……えっとシャリアルだっけ。この子は少し面倒くさいけど後の2人は大した噂も聞かないし、マリアちゃんの敵じゃないね!」

「グラン・ティタニアスとジルヴァラよ。対戦相手の名前くらいキチンと把握なさい」

「あっ、ご、ごめん…」

「怒ってないわ。けど相手を舐めるのは止めなさいミア」

「舐めてなんか…!!」

「試験順位一覧、渡されていたでしょう?」

「それがどうかしたの?」

「……上位チームくらい見ておきなさい」

「上位チーム……って、えぇ!?」


 ミアと呼ばれた少女が訝しげに、しかし言われた通りに上位チームを確認する。

 自分たちのチームは20番台、まだまだ挽回のチャンスはある。そしてその上を見る、自分たちより上のチームには有名な名前がチラホラ見えるが、マリアも決して負けてはいない。

 1桁に入ると、流石に各寮を代表する名前が沢山並んでいる。全てのチームにエース級が2,3人は入っているのだ。マリアぐらいしか強力な魔法を扱えない自分たちでは勝てるかどうか……。

 そしてその1番上。そこには信じられない名前が乗っていた。


「ヴァイオテールは決して落ちこぼれの寮では無いわ」

「こ、こんなの何かの間違いじゃ…」

「見下すのも止めなさい。貴女の悪癖よ」


 マリアにピシリと言われミアはグッと俯く。その表情にまだ不服の色があるのを見て、マリアは一つ溜息を吐いた。

 彼女たちは自分たちを過大評価する癖がある。まだ15歳なのだ、それは仕方の無いことだろう。

 けれどそれで自分の足を引っ張られては適わない。これは全員に厳し言っておくべきだと、マリアは共有ルームへと足を踏み出した。



 ◇


「ではマスター、イメチェンのお時間です」

「嫌だ!!」


 ところ変わってヴァイオテールのテント内。グランはリュツィに拘束され椅子に縛りつけられていた。

 首には白いタオルが巻かれ、椅子の下には布が引かれている。


「そのもっさい髪型で最終試験に出るおつもりですか?」

「ほっとけよ! それに誰かに見られる訳でもないし…」

「勝ち進めば見学者ありの試合になるのでしょう? なら今のうちに身なりを整えておいて損はありません。それとも、早々に負けるおつもりで?」

「そ、そんなこと言ってないだろ!」

「安心しました、ではやりますよ」

「いやだーーー!!!」


 ハサミと櫛を持ったリュツィがグランの髪を切るのを、ジルヴァラとシャリアルが興味深げに見つめている。2人とも助ける気は一切ない。

 そもそも、2人ともグランの顔をキチンと見たことは無かったのだ。グランは常に猫背で俯きがち、長い前髪で顔の上半分は殆ど隠れてしまっている。

 それで困ったことはないが、もさいと言われれば確かにとしか頷けない。不満だったらちゃんと元の長さに伸ばすとリュツィは言っていたし、グランの素顔にも興味があるのでじゃあいいかと黙って静観していた。


 そして5分後、満足気なリュツィによってグランのイメチェン作戦は完了したのだった。

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