表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/44

悪魔皇

「誤解なさらないで、私たちは貴方に危害を加えに来た訳では無いの」

「ただ我が校の生徒がとんでもない悪魔を呼び出したとあっては、それを黙って放置する訳には行かなかったのさ」


 場所を移動しながらリュツィは彼らの話を聞く。子供たちを起こさないようにとの配慮であったのだが、周りを教員に囲まれながらの移動はまるで罪人になったかのような気分である。


「ライドネ達は貴方の仕業だろう?」

「……そうだと言ったら?」


 魔力を永遠に失った彼ら。哀れだとは思うが命は取らなかったのだ、慈悲という奴である。

 そもそも自分は人間が好きだ、だからあの程度で済ませた。それに先にグランに加害行為をしたのはあちらである。

 教員達がそのことを責めに来たのなら、それはライドネ達の蛮行を止めなかった彼らにも問題がある。


「貴方の考えている事は想像がつく。僕達は貴方に責任を問いに来たのではないよ」

「そもそも生徒同士の諍いに不干渉気味だったのは私たち。生徒数が多いとはいえ、彼らを止められなかったのはこちらの責任ですわ」

「ふむ、では何をしにこられたので?」

「言っただろう、貴方はとても強力な悪魔だ。万が一の事があってはいけないからね」

「貴方が人間に好意的だと分かればこのまま帰るわ。だから少しだけお喋りに付き合って欲しいの」

「教育者としての道理ですね。分かりました、お付き合いしましょう」


 彼らの言っていることは至極道理である。今すぐどうこうしようとする気がないのも本当だろう。


「なにを話しましょうか? 召喚理由? 交わした契約の内容? それとも悪魔の魔法について?」

「前者の2つはだいたい調べが付いていますわ。グランくんが貴方を召喚した理由は至極切実なものだし、彼らが魔力を失ったのは自らの行いによるところ。悪魔の魔法にはとても興味をそそられますが……それはまた今度ということで」

「先ずは貴方の位を知りたい。その魔力量……上手く誤魔化してはいるが、"大公"クラス……いやそれを越すレベルだろう?」


 悪魔には順位がある。対の存在である天使と同じく、悪魔は9つの順位でランク付けされている。

 下から"悪魔"、"悪魔騎士"、"悪魔男爵"、"悪魔子爵"、"悪魔伯"、"悪魔侯"、"悪魔公"、"悪魔大公"そして世界でも4体しか確認されていない"悪魔皇"。

 ノアはリュツィを"大公"以上……つまり、最上位である"悪魔皇"ではないかと言ったのだ。

 しかし、世に伝えられている悪魔皇の中に彼に該当する存在はいない。彼らはそれぞれ象徴となる色を持つのだが、その中に赤を象徴とするものはいないのだ。


「僕達は貴方を新たな悪魔皇……若しくは、今まで存在を確認できていなかった悪魔皇では無いかと考えている」

「えぇその通り、私は悪魔皇の位を冠しています」


 ノアの言葉にニコリと笑って肯定する。別に隠すことでもない。知ったところで彼らにはどうすることも出来ないのだから。


「今まで4体だけだと考えていたのも無理はありません。なんせ私、暫く眠っていましたので」

「そんな貴方が、何故人間1人なんかに召喚されたのかしら?」


 確認されている悪魔皇出現の記録では、たった1人に召喚されたという事例はまず無い。大抵は国や大きな組織によって召喚されている。

 召喚過程で1人になってしまったと言うのはあるが、そんな時は大抵他の召喚主は生贄として殺されてしまっているのである。

 そもそも、悪魔は高位になればなる程召喚には応じない。わざわざ召喚されなくとも自身で限界し、人と契約を交わすことが出来るからだ。


「簡単な話、グランが私にとって特別だから。そして人間を愛しているから」


 そしてリュツィは蕩けるような笑みと声で続ける。


「勿論、貴方たちのことも私は愛しています。人間と言うだけで私にとっては慈愛の対象なのです」


 悪魔は嘘をつけない。彼らはそういう生き物だ。

 リュツィの人を惑わす声に、幾人かの教員が魅了状態になる。それはリュツィがわざとそうしたのではなく、彼が常に纏っている力に当てられているだけだ。

 だがノアとアリスはケロリとしている。それはそうだろう、彼らは世界最高峰の魔術学園のトップに立つ者。指向性のない魅了など効くはずもない。


「……分かりました、一先ず貴方を信じましょう」

「教員がやられてしまったので今日は帰ろう。楽しい時間をありがとう」

「こちらこそ、お話出来て良かった」


 ノアが何やら呪文を唱える。すると地面に転移の魔法陣が浮かび、彼らは瞬きの間にどこかへと姿を消した。

 リュツィはそれを見送り、クルリと踵を返した。まだ彼らは眠っているだろうか、起きたら美味しいご飯でも作ろうか。

 そんな事を考えながら、最高峰の悪魔は楽しそうに歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ